映画感想・レビュー 165/2521ページ

刑事マディガン:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

不敵な面構えがニヒルな魅力を生むリチャード・ウィドマークが演じる、ニューヨーク23分署の刑事マディガンは、ある男を不審尋問している最中に、拳銃を盗まれてしまう。
周囲の風当たりは強く、新聞も盛んに彼の不祥事を書き立てた。
必死で拳銃の行方を追うマディガン。
遂に、彼の拳銃で犠牲者が出てしまう。
犯人の居所を突き止めたマディガンは、その部屋に踏み込むのだった--------。

ドン・シーゲル監督の「刑事マディガン」は、刑事もののハードボイルドの傑作だ。
拳銃を奪われた刑事マディガンは、72時間以内に犯人を逮捕しなければならない。
その時間の制約が、この映画に緊張感を与えている。
マディガンを悩ますのは、犯人の逮捕ばかりではない。
仕事一途の彼に、妻は欲求不満なのだ。
警視総監との間もうまくいっていない。

人間ドラマと犯人追跡のサスペンスが、相乗効果をあげて実に見事だ。
死を覚悟で犯人におとしまえをつけるマディガンの行動美学が、実に渋い。

地獄で眠れ:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2023-11-09

J・リー・トンプソン監督、チャールズ・ブロンソン主演のコンビによる、この映画「地獄で眠れ」は、中米のとある独裁政権国家を舞台に、旧友を惨殺された殺人プロフェッショナルが、政府の暗黒組織に敢然と立ち向かうさまを描いた、バイオレンス・シーン満載のアクション映画だ。

J・リー・トンプソン監督としては、お得意のアクション・サスペンスなので、手慣れたもの。

おまけに、今回はチャールズ・ブロンソンの愛妻のジル・アイアランドが共演していないので、比較的すらすらと運んでいる。

そして、鉱山で対決するクライマックスでは、働いていた亡者みたいな男たちが、医師のメーアーを襲うところが、怪奇劇的な味わいになっていると思う。

老人と海(1958):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

この映画「老人と海」は、老いた漁師が海に出て、巨大な魚を仕留める物語だ。

ヘミングウェイの小説は、確かに面白いが、果たしてこれが映画になるのか----誰もが抱く疑問だ。
だが、その心配は杞憂に終わり、ジョン・スタージェス監督によって、見事に映画になった。

この成功の要因のひとつは、主人公の老人を演じた、スペンサー・トレイシーという優れた役者がいたからだと思う。

潮風と荒波に鍛えられた老漁師をスペンサー・トレイシーは、申し分なく演じて、観る者を釘付けにする。

メキシコ湾の海の美しさ、ディミトリー・ティオムキンの快い音楽も決まって、豪快にして、そこはかとない悲しさも漂う男のドラマだ。

テオレマ:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

ミラノの大企業家パオロの家に、謎の青年がやって来る。
青年は、パオロやその家族と性的な接触を持ち、彼らの欲望を解放して、やがて立ち去る。
残された人々は、彼ら自身の真実に向き合うのだった。

彼に感化されたメイドは、屋敷を出て、聖女になり、パオロは、自分の工場を労働者に渡して、荒野をさまようのだった-------。

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督は、最初このテーマを、詩による舞台劇として考えていたそうだ。
そのため、この映画は知的な構成が明らかすぎるほど明らかだ。
すみずみまで、よく計算されており、登場人物の役割も、わかりやすい。

だが、主人公が、神か悪魔かといった謎が、不条理演劇のように、簡単には割り切れないのだ。
それは、主人公のテレンス・スタンプの顔のクローズ・アップが、極めて映画的な効果をもたらしているからだ。

この映画は、映画史に残る、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の傑作のひとつだと思う。

追悼のメロディ:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2023-11-09

さすがはフィルムノワールの大ベテランと言うべきか、アンリ・ヴェルヌイユ監督の語り口は、極めて常套的な一匹狼の復讐譚を、凝りに凝った時制の管理によって、誠に切れ味良く見せていく一転において、実に見事だと思う。

映画の冒頭でまず、7年の刑務所暮らしの後に、北フランスの生まれ故郷に、主人公が帰って来る現在を起点に、少年時代の大過去へ、甘やかな愛を育む中過去へ、そして廃墟の工事現場から、かつて失意のうちに支配人を務めた、ナイトクラブの小過去へと変奏されていく一方、主人公を殺人罪にデッチ上げた影の黒幕は誰かという、真相追及の過程が、現在進行形で時にスリリングに、時にセンチメンタルに描かれていくのだ。

「赤と黒」風な物語のヴァリエーションにベルモンド流の活劇感覚で味付けし、マリー=フランシス・ピジェの情感で仕上げた作品だと思う。

オデッサ・ファイル:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

「ジャッカルの日」のフレデリック・フォーサイス原作の小説の映画化「オデッサ・ファイル」。

1963年の西ドイツのハンブルク。ネタ探しに余念のないルポライターのミラーは、ある胸騒ぎを覚え、救急車を車で追いかけてみた。

辿り着いた先は、ある老人の自殺現場だった。そして、ミラーはその老人の日記を入手する。そこには、ナチスの収容所の所長だったロシュマンの残虐行為が書かれていた。

ミラーは、ロシュマンが戦後まだ生きていると考え、調査を始めるのだった。そして、このロシュマンをどこまでも執念で追跡するミラーの行動には、ある理由が隠されていたのだった。

そんなミラーに、元ナチスドイツSS隊員の支援組織”オデッサ”の魔の手が伸びてくるのだった-------。危うし、ミラー。果たして、その結末は? -------。

シェーン:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-11-09

「シェーン、カムバック!」------谷間にこだまする少年の声が、いつまでも私の耳に残ります。

ふらりと現われた流れ者のシェーンが、善良な開拓者たちを苦しめる悪漢どもをやっつけて、またいずこへともなく去ってゆく------という典型的な西部劇です。

だが、この作品は、西部劇というジャンルを超えた感動を私に与えてくれるのです。その謎をとく鍵は少年ジョーイ。

少年の目を通して描いたことにより、シェーンという男は、シンボリックなヒーローとなり、西部劇という枠を超えさせたのだと思います。加えて、ワイオミングの美しい自然が豊かな抒情性となって、私の心を潤してゆくのです。

少年の視線で物語を追っている中で、シェーンと少年の母との秘められた慕情が、そこはかとなく描かれていて、その切ない淡さも、実にいいんですね。

この不朽の名作「シェーン」は、時代を超えて生き残る、まさに感動の一篇だと思います。

禁じられた遊び(1952):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-11-09

第二次世界大戦は、さまざまな映画となって描かれてきましたが、この「禁じられた遊び」ほど、戦闘そのものをほとんど扱わないで、”戦争の悲劇”を描き切った映画を他に知りません。

ルネ・クレマン監督は「鉄路の戦い」や「海の牙」など、戦争の実態を透徹したリアリズムで描いてきましたが、この作品ではフランスの農村の人々の生活の中に”戦争の悲劇”を浮かび上がらせていると思います。

機銃掃射で両親を失い、避難民の群からもはぐれた少女ポーレットが、農家の少年ミシェルに助けられ、この二人の目を通して大人たちの世界、戦争の時代が描かれます。

ナルシソ・イエペスの哀愁を帯びたギターの旋律とともに、ポーレットが「ミシェル、ミシェル」とつぶやく言葉が、いつまでも私の脳裏から離れません。

怒りの山河:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2023-11-09

この映画「怒りの山河」は、アメリカン・ニューシネマのヒーロー、ピーター・フォンダによる壮絶な復讐バイオレンスの傑作だ。

故郷に帰った男が、地元開発者の不埒な悪行三昧に、怒りを爆発させて殴り込む。

B級映画の帝王にして、名プロデューサーのロジャー・コーマンが1973年の「ウォーキング・トール」のヒットに便乗して、当時、新進気鋭の才気あふれるジョナサン・デミを起用して作った作品だ。

クエンティン・タランティーノ監督もリスペクトする低予算映画ながら、痛快なグラインドハウス映画になっていると思う。

ロミオとジュリエット(1968):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

モンタギュー家とキャピュレット家、両家の大人が対立しているために、悲恋に終わってしまう若者たち。

ラブストーリーの古典中の古典であり、何度も映画化されているし、シェークスピアを換骨奪胎して作り上げた、ミュージカルの「ウエスト・サイド物語」などもある。

だが、シェークスピアをそのまま映画にしたものから一つを選ぶとすれば、フランコ・ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」ということになるだろう。

フランコ・ゼフィレッリ監督は、演劇界の重鎮演出家でもあるから、さすがに悲劇として大団円に向けて盛り上げていく、緊迫感の醸成は絶妙だ。

だが、彼は古典を現代に蘇らせる仕掛けも施した。
16世紀のコスチュームを身にまといながらも、中身は現代の若者の男女の気持ちを、ストレートに押し出した。

動きは早く、軽い身のこなし、だからベッドシーンも節度を保ちながら、大胆に繰り広げられる。

とりわけ、ジュリエットを演じたオリビア・ハッセーは、この映画で一躍、世界的なアイドル・スターとして躍り出たのも頷ける。

ダラスの熱い日:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

ケネディ大統領の暗殺の計画は、1963年6月5日に立てられた。
立案者は、ダラスの石油王や元CIAの長官たちで、彼らの目には、ケネディさえも進歩的に見え、従って邪魔者になってきたのだ。

ロバート・ライアンが、元CIAの長官。
バート・ランカスターが、元CIAの要員と言う役どころで、この計画の実行の指揮者として、それぞれ存在感があったと思う。

これは劇映画なのだ。だが、ケネディが暗殺されて10年目の1973年に、このアメリカ映画が、暗殺事件の真犯人たちを描いたのだから、なんという勇気だろう。

プロの狙撃者たちが何人もいて、様々な状況に合わせて、標的を撃ち抜くための猛訓練をする。

替え玉も用意し、暗殺実行のその日まで、じわじわとサスペンスを盛り上げていく。

事件の再現シーンも、巧みな構成であったと思う。

海外特派員:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-11-09

イギリス時代にスリラーで名をなしたアルフレッド・ヒッチコック監督が、渡米後、「レベッカ」に続いて発表した作品が、この映画「海外特派員」だ。

舞台は、第二次世界大戦直前のヨーロッパ。
オランダの大物政治家の暗殺を目撃したために、政治的陰謀に巻き込まれてしまう、アメリカの特派員の冒険を、スリリングなタッチで描いている。

風向きと反対に動く風車、暗殺シーン、雨傘の波を縫って犯人が逃げるシーン、コクピットにカメラを据えっぱなしで捉えた、飛行機が墜落するシーンなど、まさに必見の見せ場がこれでもかというように連発される。

二転三転のドンデン返しに満ちた物語の展開で、観る者を飽きさせないヒッチコック監督の手腕は、見事の一語につきる。

主演の話を蹴ったゲイリー・クーパーが、完成した映画を観て、地団駄を踏んだ話は有名だ。

デリンジャー:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

卑屈で、派手好き、気分屋で無鉄砲、世間の評判を気にするデリンジャーのキャラクター描写が面白い。

彼は、庶民がイメージするデリンジャーらしい行動にこだわり、伝説の人物になろうとするが、その伝説作りの共犯者として、パービスを位置づけているのも興味深い。

この「デリンジャー」が、監督デビュー作となるジョン・ミリアスは、すでに頂点を過ぎて、滅びに向かいつつある、この伝説のスターを、柔らかい西陽の光の中に捉え、詩情をかきたててくれる。

ギリシャに消えた嘘:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

「ドライヴ」で素晴らしい脚本を披露した、ホセイン・アミニが初めて監督する「ギリシャに消えた嘘」は、「殺意の迷宮」を原作としている。

アテネでガイドとして働き、若い女性をカモにする青年オスカー・アイザックは、パルテノン宮殿で見かけた富豪の妻キルスティン・ダンストに恋心を抱く。

しかし、夫のヴィゴ・モーテンセンは、ニューヨークではたらいた投資詐欺で逃亡中の身だった。

ヒロインをめぐっての三角関係と、先の読めない逃避行の物語が展開していくが、そこかしこに、ルネ・クレマン監督の名作「太陽がいっぱい」へのオマージュを見て取れる。

1960年代のファッションが醸しだす、時代の空気も濃厚で、クレタ島やイスタンブールといったロケ地のエキゾチズムともあいまって独特の雰囲気を盛り上げている。

イラン出身のこの監督、入国審査の場面のじりじりするような緊張感や、迷路のような街中での追跡劇なども見事で、久々に登場したヒッチコックの後継者として有望株と言えそうだ。

ラン・オールナイト:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

大胆なカメラ視点の移動と場面の転換が新鮮な「ラン・オールナイト」は、リーアム・ニーソンが酔いどれの殺し屋を演じている。

主人公は、暗黒街を牛耳るエド・ハリスと幼い頃からの友情で結ばれてきたが、正当防衛とはいえ、一人息子のジョエル・キナマンが、エドの愛息を射殺してしまったことにより、三十年来の関係にひびが入る。

息子を差し出せとの要求に対し、主人公は命に代えても我が子を守り通そうと決意する。

やがて、手下と買収した警官を総動員し、エド・ハリスの大掛かりな人狩りが始まる。

監督は、「アンノウン」、「フライト・ゲーム」でミステリ映画好きを唸らせたスペインのジャウム・コレット=セラ。

意外性よりもサスペンスに軸足を降ろしたこの作品では、タイムリミットに向け、緊張感を巧みに盛り上げていく。

二人の父親を通して、二重に映し出していく、我が子への愛情のあり方もドラマの構図としても悪くない。

手錠のままの脱獄:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-11-09

黒人のシドニー・ポアチエと白人のトニー・カーチスをひとつの鎖で繋いで、異心同体にしたのは、1958年という時代背景から考えれば、刺激的な設定だ。

1955年末から黒人解放運動が爆発し、1964年に公民権法が成立したものの、根本的に解決されたわけではなく、現在は新たに民族問題が起こっている。

アメリカが抱える深刻な社会構造をえぐる野心作だと思う。

主演のシドニー・ポワチエは、ベルリン映画祭で最優秀男優賞を受賞し、アカデミー賞では、脚本賞、撮影賞を受賞している。

ブルースが聞こえる:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2023-11-09

戦争といったら、ヴェトナム戦争で、第二次世界大戦は完全にノスタルジーになってしまった。

マイク・ニコルズ監督の「ブルースが聞こえる」の原作者も監督も、ノスタルジー以上のものを描こうとは思わなかったようだ。

スタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」という傑作を見た今となっては、この映画の訓練所も上官も、随分とのどかに見えてしまう。

ノスタルジーとしては成功しているが、上官との心理的な緊張関係の描き方が浅くて、青春成長物語としては物足りない。

その男、凶暴につき:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

「その男、凶暴につき」は、欠点の多い、滅茶苦茶で、見終わっても、まるっきりスッキリしない映画だが、私は好きですね。

日を追うに従って、傑作だったと思う。見た後で、どんどんきいてくる映画だ。

「ダーティ・ハリー」と違って、主人公の刑事の暴力の背後には、正義も何もない。
根拠のない、やみくもな暴力なのが面白いし、怖い。

この映画の迫力は、撮りたいものをちゃんと持ってる人の撮った映画だなと思う。

静かなる男:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

このジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「静かなる男」は、郷土愛をあふれさせた、人間喜劇の傑作だ。

ジョン・ウェインは、恩師でもあるジョン・フォード監督の作品では、虎みたいにコチコチしている場合が多いが、耐える男という役柄上での制約はあるものの、かなり大根っぽい。

ところが、終盤の殴り合いの場面になると、水を得た魚の如く、生き生きとした猛者ぶりを見せてくれる。

登場人物を的確に描き分けるジョン・フォード監督は、ユーモアとアクションを加味した、独特な作品世界を構築していると思う。

チャンピオン(1949):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2023-11-09

自らのエゴの完遂のため、あらゆるものを踏み台にし、利用していく青年の姿が、リアリズム映像で描かれていく。

ストーリー展開にメロドラマ的な脆弱さがあるが、それをマーク・ロブスン監督は、視覚的な豊かさと、凄まじいまでのアクションでカバーし、迫力ある作品にしていると思う。

アメリカン・ドリームに賭けた、一人の男の生き様が、深く胸を打つ1篇であり、アメリカにおけるボクシング映画の原型がここにある。

最終更新日:2024-11-05 11:00:02

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