- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
この映画「カラーパープル」は、黒人女流作家アリス・ウォーカーのピュリッツァー賞を受賞した原作に忠実に、黒人女性セリーの40年にわたる”苛酷な生”を、美しい映像の中に描き出した、スティーヴン・スピルバーグ監督の名作です。
この映画の公開当時のスピルバーグ監督は、「ジョーズ」や「E・T」等の作品でエンターテインメント系作品のヒットメーカーでしたので、意外な感じで受け止められていました。
確かに彼の作品は、映画の楽しさに満ちていますが、現代文明に対する”鋭い風刺”があることを忘れてはいけないと思います。
それは理不尽な暴力や抑圧への嫌悪、戦いであり、この現実とは違った別の世界への夢想であり、人間の救済です。
この映画は、ある黒人姉妹の強い絆と不滅の愛で彩られた40年の歴史を、一大叙事詩として描きながら、人間が自分自身に目覚める、精神的な成長の道程を深く追求した、いつまでも心の奥に残り続ける作品です。
この映画での主人公セリーをみまうのも、理不尽な暴力です。 “父”の子を二人も産み、暴君としかいいようのない男と結婚させられ、召使のごとき人生を送るセリーに苦難をもたらすのは、白人による差別ではなく、横暴な黒人男性です。 苦しみの中から人間として目覚めていくセリー。 そして、セリーを初めとする黒人女性たちは男たちに反逆し、自立を獲得するのです。 この物語を、”白人で男”のスピルバーグ監督が作ったのです。 そこに浮かび上がるのは、人種とか性の違いを超越しうる人間の苦しみに対する、繊細な感受性であり、怒りであり、人間の善意への信頼なのです。 そして、その精神は、原作と映画の両方に通底しているのです。 もちろん、黒人の苦しみの底にある、白人による差別も告発されています。 特に、猛烈な女性ソフィアの、白人の市長をなぐって10年近い監獄暮らしになるというエピソードは鮮烈で、彼女をメイドにする市長夫人の偽善者ぶりも痛烈に批判されています。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
男(船越英二)は、テレビ局の腕利き社員だ。妻(山本富士子)は、小綺麗なレストランを経営している。
男には愛人が九人もいる。新劇女優(岸恵子)や印刷会社の社長(宮城まり子)やCMモデル(中村玉緒)や演出助手(岸田今日子)など、色とりどりの女たち。
優柔不断だが、こまめで愛想のよい男は、彼女たちの間を漂流している。
だが、互いの存在を知った女たちは、共謀してある計画を立てる。
こんなに私たちを苦しめる男など、この世から消えてもらってしまおう、というのがその結論だ。
まるでセバスチャン・ジャプリゾやパトリシア・ハイスミスのミステリ小説に出てきそうな設定だが、それもそのはず、市川崑監督と脚本の和田夏十の夫婦は、こういうプロットを練り上げ、多彩な技巧を駆使する 映画作りを得意としていたのだ。
その才気は、この「 黒い十人の女」でも著しい。
市川崑監督が得意とする、表現主義の光と影を思わせるハイコントラストの白黒 映画。 あるシーンと次のシーンが溶け合うような転換。 だが、私が特に魅了されたのは、この華麗な技巧の数々よりも、どこか異様で不敵なユーモア感覚を湛えた山本富士子の存在だ。 当時、”美人女優”のレッテルを貼られ続けてきたせいか、この女優のユーモア感覚は、意外に過小評価されていたと思う。 だが、彼女の芝居は観ていて、実に楽しいのだ。楽しいだけでなく、器量を忘れて役に入り込む捨て身の気配も感じられる。 この 映画を”才気の浮き上がり”から救ったのは、山本富士子の不敵な存在が放つ、黒い笑いだと思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
この映画が初めて劇場で公開された時、晩年の黒澤明監督の作品に違和感を持つ者として、黒澤明の残した脚本を、黒澤組の助監督が映像化する話には、最初、あまり興味と魅力を感じなかったものだ。
どうせ直球一辺倒で、正座して観なければならないような映画だろうと思ったからです。
しかし、観終わった時、それは予想に反し、心地よい方へと見事に裏切られましたね。
この映画は、「赤ひげ」など黒澤明が好んだ山本周五郎の原作だ。
江戸時代、剣の達人・三沢伊兵衛(寺尾聰)は不器用なために浪人暮らしを余儀なくされていた。
妻たよ(宮崎美子)と旅をする途中、大雨で足止めされた土地で領主(三船史郎)と出会い、仕官の話が持ち上がるが——-。
この映画を観て、夫婦は互いに信頼し合おうとか、他人を押しのけて出世するのはよそうとか、そんな薄っぺらなヒューマニズムを読み取ることも可能だとは思う。
しかしながら、この映画を深読みして観ると、これは何と言ってもウェルメイドのコメディーなんですね。
伊兵衛に試合を挑んだ威張り屋の領主が、転んで垣根の向こうに消えた直後、水しぶきの音が聞こえるという処理の仕方。 物静かなたよが、いつもの丁寧な口調で客人に暴言を吐く間合い。 真面目な演技をすればするほど、おかしみが生じる。特に、力みかえった三船史郎の演技には、素人の演技ながら何度も吹き出させられた。 無論、黒澤の名で足を運ぶ観客への目配せも怠りない。 冒頭の突き刺さるように降る豪雨。安宿で繰り広げられる歌と踊りのセッション。 そして、侍の首から噴き出す血など、ほとんど「椿三十郎」のパロディーかと思うほどのサービスぶりなのだ。 しかし、飄々とした演出で笑わせる小泉堯史監督のセンスは、明らかに黒澤明のものとは異なっていると思う。 大巨匠の縮小再生産の映画ではないかと思い込んでいた偏見を、大いに反省しましたね。 その上で、小泉堯史監督という新しい才能の登場を、心から喜びたい心境になりましたね。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
古臭い、笑えるとつぶやきつつ、つい引っ張られて観てしまう。
村川透監督の「蘇る金狼」はそんな映画だ。
1979年の公開だから、描かれる風俗が古臭いのは仕方がない。
大藪春彦の原作も、劇画的な展開が顕著な一気読み小説だった。
話は典型的なピカレスクロマンだ。主人公の朝倉(松田優作)は、東和油脂の経理部に勤めている。
七三分けの長髪と黒縁の眼鏡。だが、夜の朝倉は狼だ。
ジムでサンドバッグを叩く彼の上半身には、見事な筋肉が盛り上がっている。
朝倉は銀行から輸送中の現金を奪い、金を麻薬に換え、麻薬を使って女を操り、甘い汁を吸いたい放題の会社中枢部へにじり寄って行く。
つまり、この映画は悪党のオンパレードだ。悪には悪を、毒には毒を。
法も正義も介入しない伏魔殿で、社長(佐藤慶)や部長(成田三樹夫)や次長(小池朝雄)や議員(南原宏治)や強請屋(千葉真一)や私立探偵(岸田森)らが果てしない暗闘を繰り広げる。 まるで怪優たちのオールスター・ゲームではないか。 そして、饗宴の中心で強力な磁力を放つのが、松田優作だ。 団塊の世代に属する日本映画の俳優で、運動神経や身体能力に彼ほど自覚的な人はいなかった。 だからこそ、優作の「狂気芝居」は、きわどく成立する。 東京湾第二海堡で撮影されたアクション・シーンの速さは、優作の動きと、カメラマンの仙元誠三の力量に負うところが大きいと思う。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
この映画はデビッド・フィンチャー監督作品で、フィンチャーが連続殺人事件を描いたということから、出世作の「セブン」を思い出した。
だが、この映画「ゾディアック」が「セブン」と大きく異なるのは、ここで描かれているのが実際に起こった事件であり、いまだ未解決という点だ。
それと惨殺死体だけを見せた「セブン」に対して、こちらは犯行そのものを映していく。
しかも、このときのカメラが容赦ないんですね。
次々と有力情報がもたらされるものの、どれも実ることはなく、結局は空振りに終わってしまう。
この描き方がドキュメンタリーとまでは言わないにしても、少し引いた目線で描かれる。
ところが、それがある瞬間、一気に身も凍るスリラーへと変わる。
この話法の転換が実に見事でしたね。
犯人の挑発、自己顕示欲。それにマスコミが乗ったことで、モンスターのようにその像を膨らませていった。 そして、そのことがまた真実を知りたいという男たちの執念をさらに増幅させる。 しかし、もがけばもがくほど一様に深みにハマっていく。まさに底なし沼。 フィンチャーは、そんな事件に魅入られた男たちをひとりに絞ることなく複数描くことで、この事件が生み出した不条理そのものをあぶり出しているようにも見える。 論理では決して割り切れない、人間の不可解な心理と行動。 そういう意味でも、実に見応えのある映画だった。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
キネマ旬報のヴィム・ヴェンダース監督と主演役所広司の対談の中で監督は映画作品を理想の追求モデルとしている。毎朝の目覚め時にザッザッと云う箒で道路を清掃して掃き清めて居る現実の環境音をドキュメンタリー映画見たいに或いは夢心地のように捉える印象的なシーンが作品冒頭に在り
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
ちょっと期待はしてなくて、評価に、期待が高まったが、やはり、期待通り。
松本幸四郎さんに寄り添った役作りが必要でしょう?
まだ、貫禄充分と言うよりも、周りに助けられと言った雰囲気も必要かと、
あと、台詞が、文語調で、少し不自然、口語調風にすればいいところを、敢えて、口上風にして、なんだか、鑑賞者が入り込めない。
まだまだ、スタートラインですから、鬼平も皆様とともに育つ様な展開で、
セットや小道具も新しすぎて、
ハリウッドに習い、時代に考慮した工夫も、
衣食住は、映画の大切なポイント、生活感が、あまり感じられないのも残念。
単なる殺陣映画を作りたいのか?
人間の深いメッセージ性あるドラマを作りたいのか?
仙道敦子さんのたたずまい、柄本明さんは、よかったです。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
素晴らしい「傑作」」に「心」豊かに成りました「成瀬ワールドに「浸ってます」「24回」も観てしまいました「成瀬監督も「天国から「苦笑い」していますね!
「風景「人情」」「情緒」三味一体の「成瀬マジック」が「やるせなさ」を醸し出していますね
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
中学校時代観ました。退屈な作品だと当時は感じたのですが、今なら良作だと思える?かも。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
キネマ旬報新装版にコラムニストの本篇の宣伝方法に就いての一文が在り興味を惹く
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
名古屋の公開初日に観ました。
かづゑさんの口から語られる一言一言が心にずしんと響きました。ハンセン病を背景にしていますが、ハンセン病のことだけでなく、辛くても生きることの意味を訴えかける作品だと思います。
上映後に、監督の熊谷博子さんとナレーションを担当された斉藤とも子さんのお話しを伺いました。とても印象に残るお話しでした。ぜひ、DVDを制作していただきたいです!何度でも観たい映画です。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
NHK朝のラジオの今日は何の日コーナーで,本日は第一回アカデミー賞の日でサイレント映画が受賞したとのこと。調べて見ると無声映画特集で上映された劇映画の第七天国フランク・ボーゼイギ監督作品だね
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
🍵ジェイウェイブのジャスト・リトル・ラビングの朝食を廻る話題で静岡市川園の取材。お茶の製造工程の色々を伺う内に本篇見たいな食文化映画も味わいたく為って🫖
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
一寸ラジオを聴いているとguestに本篇の大沢在昌が登場,小説創作の秘密にも触れた。どう言うキャラが作品化し易いのか等
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-16
今朝のジェイウェイブのジャストリトルラビングのリビング・オンジ・アースは原角の会員制カフェの方のお話,ヴィム・ヴェンダース監督の映画パーフェクト・デイズでの人との偶然の出逢いの大切さを指摘ー。其処でモノクロームの本篇との繋がりも考えて見たい気にも為った次第何だなあ
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-15
「ジャンプ漫画」の様な映画です。さらに「途中から読んだ」結果、「よくわからんけど面白い」。「あの人達って誰?」「あれって何だったの?」→「そんなことどうでもいい」んです(笑)。またある意味で漫☆画太郎の様でも。「うるせー!」どかーん!「ゴジラは人間の味方だ」このシリーズでもすでにそういう立ち位置なんですねえ。皆さんおっしゃる通り昭和ゴジラの様です。「うるせー!」どかーん!前作と違い純粋に楽しめました。もっともワタクシ純粋な映画ファンでもあるので(笑)、評価は大負けに負けて四ツ星です。しっかしこういうものを見せられると、「こいつを倒す為に知恵を絞って命まで賭けた」あの超傑作は何だったんだって思えちゃいますね(笑)。でもきっと、「みんなちがってみんないい」ゴジラ万歳!
- 評価
- ★★☆☆☆
- 投稿日
- 2024-05-15
なんかよくわからんけど、退屈せずに、最後まで観ました。
- 評価
- ★★☆☆☆
- 投稿日
- 2024-05-15
ドロドロした内容と思ったけどコミカルぽく作られてました。音楽がいいですね。今と違った木村多江さんを観れました。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-15
文化放送のくにまる食堂に出演の本篇のラッパー・ダースレイダー,沖縄返還記念日の今日,映画や沖縄への想いを語っている
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-15
💃今朝新聞を見るとNHKBS放送局の番組欄に本篇。昨日調布の国際版画美術館で小野忠重を廻る日本美術史上の版画運動の青春1930~40年代の展示会場の隣のグラフィックデザイナーの版画企画に愉しそうな和田誠作品が並んでいたことが想い浮かぶ