- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
この映画「赤い天使」は、増村保造監督、若尾文子コンビによる第15作目の作品で、敗色濃い中国大陸を舞台に、従軍看護婦とそこで出会った男たちの物語だ。
この映画は「兵隊やくざ」と同じ有馬頼義の原作ですが、あの痛快さや開放感はどこにもなく、暗く重苦しいトーンで貫かれている。
最前線の野戦病院は、傷病兵であふれ、死者も生者も一個のモノと化していく。
負傷した脚をノコギリで切断する音が響く手術の描写をはじめ、実際に従軍経験のある小林節雄の撮影を得た、増村保造監督の過剰なまでのリアリズム演出は、戦争の真実を抉って鬼気迫るほどだ。
両手を失った一等兵(川津祐介)、戦場の狂気の中で正気を保とうとモルヒネを常用する医師(芦田伸介)。
戦争に身体も心も蝕まれた男たちに深い愛を捧げるヒロインを演じた若尾文子が、凄絶なまでに美しい。
増村保造監督の映画のヒロインの多くは、狂気の愛に生きるが、戦場という極限状況に置かれた若尾文子は、おびただしい死と隣り合わせの男たちに愛を与え、一瞬の生を実感させる。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-12
この東映映画「帰って来た 女必殺拳」は、ご存知、志穂美悦子主演の「女必殺拳」シリーズの第三作目の作品だ。
かつての緋牡丹のお竜の現代版とも言うべき、カラテの名手・李紅竜(志穂美悦子)が暴れまわる痛快アクション映画だ。
この映画は、もちろん言うまでもなく、志穂美悦子の華麗なカラテ・アクションが目玉の荒唐無稽な話ではあるが、志穂美悦子の爽快な身のこなし、少年のように澄んだ表情が、活劇シーンの連続するスピーディーな画面作りと溶け合い、”少年熱血冒険活劇”風の魅力を放っていると思う。
また、人間の激しいアクションこそが眼目であり、話の展開はそのためにだけあるという形は、本来のアクション映画の原点を示すものだと思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
この映画「さざなみ」は、第65回ベルリン国際映画祭で、主演男優賞と主演女優賞を受賞した秀作ですね。
長年連れ添った夫婦の関係が、1通の手紙によって揺らいでいく様子を通し、男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いを浮かび上がらせていく人間ドラマでしたね。
この「さざなみ」は、静かな映画ながら、その静謐さの中から、オスカー候補となったシャーロット・ランプリングの怒りと悲しみの表情が、微かな隙間から眼光を光らせているように見え、”さざなみ”のようにざわざわと私の心を恐怖に陥れる凄みがありました。
とにかく、この夫ジェフは、妻の前でそれはないでしょうというくらい脇が甘いですね。
妻ケイトの控えめな仕草と態度が、それだけ彼女の憤怒の深淵さを覗かせているのに、あ~、男って愚かですね。
ジェフは、過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は夫に対する怒りや不信感を募らせていくんですね。
45回目の結婚記念日で、ジェフと踊るケイトのまなざしに、刹那に感じられた、冷たい刃物の閃きが感じられる、そんな怖い映画でしたね。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
銀行強盗のゲッコー兄弟が、元牧師一家を人質に取り、アメリカとメキシコの国境を越える前半部と、国境近くのバーで、”夕暮れから夜明けまで”の間に展開する後半部。
美女のセクシーなダンスの前で、俳優タランティーノが死ぬ時、お得意のバイオレンス・アクションは、血みどろのスプラッターへと切り替わる。
主役は、クールなギャングスターからハイ・テンションなヴァンパイアへと交代し、当時33歳のタランティーノと27歳のロドリゲスという、才気溢れる映画オタクたちは、そのいい加減さと思いつきの力強さを、我々観る者に見せつけるのだ。
すると、それまでおとなしかった、ジュリエット・ルイスは、みるみる色気を炸裂させ、濃い顔のジョージ・クルーニーは、益々、暑苦しく動き回るのだ。
イカしたセリフとヤンチャなストーリー展開。
青臭い楽しさがいっぱい詰まった、この映画は、理屈抜きに面白い作品だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
この映画「アリスのレストラン」は、アメリカのフォーク・シンガーの元祖であるウディ・ガスリーの息子で、現代の吟遊詩人と言われたアーロ・ガスリーが、実名で登場し、自身の同名のヒット曲とともに、自らの青春とその彷徨を演じていくという、ホロ苦いヒューマン・ドラマであり、ニューシネマの傑作だ。
ヴェトナム反戦で揺れる1960年代後半のラブ&ピースなヒッピー・カルチャーを、「俺たちに明日はない」のアーサー・ペン監督が描いた作品。
ヴェトナム反戦のテーマと当時の若者たちのドロップ・アウト的なムードを、1960年代後半の社会風俗的な記録という角度を狙い、抑制の効いたタッチで淡々と描いていると思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
この神代辰巳監督の映画「宵待草」で描かれる時代は大正時代。
アナーキズムにかぶれる青年とテロリストが令嬢を誘拐、そしてこの三人の不思議な逃避行が始まる。
「宵待草」に始まり、古びた流行歌をひたすら呟き声で歌い続け、道中でどんでん返しをし、体を求め合い、ススキ野を旅する彼らの佇まいは、どのカットも、胸がざわつく瑞々しさに溢れている。
高橋洋子、高岡健二、夏八木勲という、本能で神代辰巳監督の演出に応える肉体派の役者たちと、晩秋の刻々と変化する風景を、凄まじい美で切りとる姫田真佐久のカメラ。
気球で空を逃亡する、広々とした爽快感の後、地上に降り立ち、そのまま内ゲバが展開する、躍動的な長いワンカットは、まさに奇跡的な映像だ。
革命に走る若者のやるせない道行きを描く、さすらう映画の最高峰とも言える映画だと思う。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-12
この「ドクター・モローの島」は、ご存知、H・G・ウエルズの古典SF小説の映画化作品だ。
難破した船員ブラドック(マイケル・ヨーク)が、流れ着いた孤島で、野獣の人間化を研究しているモロー博士(バート・ランカスター)に出会う前半は、ほぼ原作通り。
ただ原作では、外科手術を反復し、それによって生ずる二次的変化の累積によって、野獣を人間化していくという、偶然に頼るやり方だが、映画では、染色体の説明に始まり、脳髄から採取した液を蒸溜したものを、繰り返し注射することになっている。
改変は後半で、原作では、博士の死後、獣人たちが次第に元の野獣に戻っていくありさまの描写にウエイトがかかっているが、映画では、島を脱出しようとしたブラドッグが捕らえられ、人間を野獣化する実験台にされるくだりが追加され、そこが面白い。
結局、彼は博士がパナマで買ったという娘マリア(バーバラ・カレラ)と危うくボートで脱出するが、その娘が実は-----という伏線のオチがついている。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
この韓国映画「第7鉱区」は、「グエムル 漢江の怪物」同様、グロテスクな韓流モンスターが出し惜しみせずに大暴れする作品だ。
男勝りのヒロインが、逃げ場のない空間で勇敢に立ち向かう、定番の「エイリアン」スタイルのVFXアクションを繰り広げる。
産油国を夢見て、東シナ海に浮かぶ巨大石油ボーリング船で作業する韓国の作業員たちだが、成果が出ずに撤収命令が下る。
この命令に納得できない女マネージャー(ハ・ジウォン)が、本部から来たキャプテン(アン・ソンギ)に直訴して調査は続けられることになるが、やがて仲間たちが次々と怪死して、突然、巨大な深海生物が出現する。
この深海生物が、とにかく無気味で不死身すぎるクリーチャーで、強烈なインパクトを与える。
監督は、1980年の韓国での民主化運動を巡る悲劇のドラマ「光州5.18」のキム・ジフンで、モンスターの正体を巡る極限状態でのサスペンスもスリリングに、タンクトップ・ヒロインと深海生物が巨大化した怪物との闘いを、ダイナミックに活写して大迫力の興奮が味わえる。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
ジャック・ゴールド監督の「スカイ・エース」は、見応え十分の空戦映画で、飛行機ファンなら、泣いて喜ぶだろう。
第一次世界大戦中のイギリス空軍基地。
出動すれば、誰かが撃墜されるが、パイロットたちは、いつまでも悲しんではいられず、町へ繰り出して、酒と女に溺れ、明日の死に立ち向かう勇気を養っている。
この飛行士たちの群像と、彼らを率いる隊長のマルコム・マクドウェルの苦悩をシビアに描いて、反戦思想を色濃く打ち出している。
空中戦のシーンも堂々たるもので、着任したばかりの若い飛行士のピター・ファースが、初陣の偵察飛行で、敵機に燃料タンクを撃ち抜かれ、辛くも帰還するという一幕等、スリルたっぷりだし、ドイツの気球を爆破しに行くクライマックスも、壮烈なスペクタクルでワクワクしてしまう。
イギリスのSE5、ドイツのフォッカー等、当時の複葉機の機種が、ずらりと登場するのは、飛行機のファンにはたまらないだろう。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
このマルコ・フェレーリ監督の「最後の晩餐」は、数人の男女が、ある邸の中に閉じこもり、朝から晩まで徹底して食べたり、飲み続けたりして、そしてあげくの果てには、排泄物を垂れ流し、皆が皆、食い過ぎのために死んでしまうという、何とも言えぬ凄絶な話だ。
この人間の本能だけをとことんまで押し詰めたような、一種の絶望的な退廃には、まるで妖気のようなものさえ漂い、それがブラック・ユーモア的に発散されている、凄い映画だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
この「OK牧場の決斗」は、1881年10月26日、アメリカで実際にあった有名な決斗を描いた、ダイナミックなアクション西部劇の傑作だ。
同じ素材で、ジョン・フォード監督が「荒野の決闘」を撮っているが、「荒野の決闘」が詩情豊かな”静”の面白さだとすると、この「OK牧場の決斗」は、ガンプレイ・アクションを存分に楽しめる”動”の面白さがあり、実に痛快な娯楽作になっていると思う。
そして、この映画には、懐かしい俳優の顔が、続々登場する。
肺病の賭博師ドク・ホリーデーの愛人のケイト役に、「エデンの東」で母親役を好演したジョー・バン・フリート、映画の冒頭でドク・ホリデーに殺されるガンマンは、後にマカロニ・ウエスタンの大スターになったリー・バン・クリーフ。
また、クラントン一家のビリーは、「イージー・ライダー」の監督・出演で、一躍名を上げた、デニス・ホッパーの若き姿なのだ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
ジャン=ピエール・メルヴィル監督の「影の軍隊」は、正確に言えば、フィルム・ノワールではないと思う。
レジスタンスに身を投じた人間たちの姿を、セミ・ドキュメントタッチで綴った、社会派サスペンスだと思う。
だが、この映画の全篇を覆う、ダークな色調。
指名を果たすためには、愛するもの全てを捨てなければにらない非情な世界で、自己を引き裂かれ葛藤する男たちや女たち。
彼らの胸中をふさぐ悲哀と情念のたぎりは、まさにフィルム・ノワールの世界そのものだ。
とにかく、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の簡潔で、切れ味鋭い演出の技が冴え渡った映画だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
ウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」は、サスペンスに満ちた、男と女のドラマだ。
蝶のコレクションと同じように、女を閉じ込める男の心理が、映画を観ている我々には想像がつくが、女にはそれがわからない。
彼女が逃げようとする時、我々の心理は、男の側に立つのではないだろうか。
閉じ込めることが、彼の最終的な目的なのだから、その維持が映画の緊張になるのだ。
とにかく、この映画は、優れて独創的な作品なのだ。
女の勧めで画集を見たり、小説を読んだ男が、ひどく道徳的なことを言って反論するのが、すこぶる面白いのだ。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-12
この「地球爆破作戦」は、SFファンなら観ておいて損のない映画で、コンピュータが発達して人類を支配するという、いわゆる電子頭脳テーマもので、SFの一大ジャンルをなしている。
この作品はD・F・ジョーンズの原作を「チャイナ・シンドローム」のジェームズ・ブリッジスが脚色し、「サブウェイ・パニック」のジョセフ・サージェントが監督をしている。
東西冷戦時のアメリカで、国防ミサイルシステムの要となる巨大コンピュータ、コロッサスが完成する。
だが、ソ連も同様のガーディアンを開発していて、進化したコロッサスはガーディアンと結託して、リンクを切断して制御しようとする人間たちを、核ミサイルで脅迫する。
科学者が監視カメラの目を盗んで連絡するため、女性科学者と逢引するなど、互いの頭脳戦も、実にスリリングだ。
この映画を観ていると、米ソ冷戦時代の当時よりも、世界がネットで結ばれた現代のほうが、より不気味さを増してくるような気がする。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
昔,絵画研究所の広島出身の学友が藤田嗣治の或る戦争画の大作を観て,こりゃージエノサイドの光景,反戦絵画,戦争告発画じゃないかなと感想を漏らしていた。余りにも悲惨で軍部も思わずたじろいで仕舞ったエピソードも在る藤田,エコール・ド・パリ時代の交遊,世界大戦で垣間見た花の巴里の悲惨さ,ピカソのゲルニカ,オットー・デックスの戦争告発の版画等の流れから考えるならー。機械文明とヒットラー独裁への警鐘の一文は藤田も残していたとか
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
ダーティー・ダンシングの曲の中にもエリック・カルメンの曲がーNHKラジオ深夜便
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
またNHKラジオ深夜便ヴィンテージ・ロックのエリック・カルメン特集では本篇曲も
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-12
🧔NHKラジオ深夜便・話芸百選は神田昌味の中江兆民,講談好きの民主主義の思想家,東洋のルソーの人権政治家の零れ話を痛快至極に語るエピソードはまるで本篇マーク・トウェインの逆転物語の如し何だゼ
- 評価
- ★☆☆☆☆
- 投稿日
- 2024-05-11
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
ひどい。ひどすぎる。開始5分もせずに役者の演技の違和感を痛烈に感じた。セリフがアニメ。映画ではなく、舞台を観てる感覚。
戦後で疲弊しきってるはずの日本人があんなに元気にハキハキと生きてますかね?
映像も、、、そこまで?って感じです。
ゴジラもあっさり出てきて、人類もあっさり受け入れて。
神木隆之介にもまったく感情移入できない。
唯一良かったのは、安藤サクラの演技のみ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-11
映画を映画館で観るということが、とても贅沢なことだと改めて思いださせてくれる。
この中で眠りに包まれてしまうのも致し方ないが、いびきは止めてもらいたい。目の前でやられた女性は「寝るなら来ないでください」と激怒していた。
寝てしまいそうな人にお願いします。前かがみなら寝てしまってもいびきをかくことは少ないので、背もたれから背中を外してください。