『クレッシェンド 音楽の架け橋』監督インタビュー到着!イスラエル出身の監督が自国の紛争と希望について語る

『クレッシェンド 音楽の架け橋』監督インタビュー到着!イスラエル出身の監督が自国の紛争と希望について語る

「この和平コンサートは SF だ」
映画を観て、その理由を話し合うきっかけに――

世界中の映画祭で観客賞を受賞した感動作、映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』を 1 月 28 日(金)より全国公開。

この度、本作の監督を務めたドロール・ザハヴィからインタビューが到着!1959 年イスラエル・テルアビブ生まれの監督は、テルアビブ南部の貧しい地域で育ち、1982 年に奨学金を受けて旧東ドイツのバーベルスベルクにある大学で演出を学ぶ。ベルリンの壁崩壊直前の1989 年の秋にベルリンに渡り、1991 年から永住。テレビ番組の製作に勤しむ傍ら、イスラエルとパレスチナの政治的対立をテーマとして扱った長編映画“For My Father”(08・英題)を監督し、モスクワ国際映画祭の観客賞、ブルガリアのソフィア国際映画祭のグランプリをはじめ、多くの賞に輝いている。

初めに本作の製作のきっかけについて、監督は次のように語る。「私はイスラエルに生まれ、物心がついた時からイスラエルとパレスチナの対立に大きな関心を持ち続けています。2008 年に製作した映画“For My Father”(英題)で既にこの問題を扱っていますが、本作でその続きを描けると思いました」。さらに音楽が物語の大きな伴となる物語について「長年、心と心を繋ぐ偉大な力がある音楽が重要な役割を果たす映画を作りたいと考えていたので、本作はそれらの願いを叶える理想的な機会でした」と振り返った。
また世界の映画祭で観客賞を受賞した本作。観客の反応を尋ねられると「世界中で観客の反応は素晴らしかったです」と語るも、「個人的にはとても悲しいことですが、残念ながら本作はイスラエルとパレスチナの両国ではまだ上映は叶っていません。本作は希望と平和、そして寛容と尊敬をテーマとしているのにも関わらず上映されていない。その事実が、イスラエルとパレスチナの荒廃した状況を表しており、非常に悲しく思います」とし、舞台であるイスラエルとパレスチナでは上映されていないという厳しい実情が明らかになった。
そんなイスラエルとパレスチナからスタッフとキャストが参加した制作現場だが、次のようなエピソードも。撮影では、対立するそれぞれの民族出身のキャストを探すのにとても苦労したという。「彼らを一つにまとめるには、リハーサルとディスカッションが幾度も必要でした。初めは出演者の間では、あまり政治について深く話し合うことはなく他人行儀でしたが、ロケ地の南チロルとドイツのホテル で長い時間を一緒に過ごすにつれて、絆を深め友情が芽生えました。彼らが今も連絡を取り合っているかは分かりませんが、一緒に過ごした時間を生涯忘れることはないでしょう。彼らはこの経験と共に生きていくのです」と、撮影でもまさに映画さながらの過程を経たことを明かした。
そこで、イスラエルとパレスチナから楽団員を募り、和平コンサートを行うというアイデアはどれほど現実的か尋ねられると、「現状では夢物語と言わざるを得ないでしょう。映画の中でも登場人物の一人が、「これは SF だ」というセリフがあります。しかし重要なのは、なぜこのコンサートが現実ではなく SF なのか、そのことを話し合うきっかけに本作がなるという事です。そしてこの映画は明確なメッセージを伝えています。我々はありのままの現実をただ映しだすのではなく、前進するためには何が出来たのか?そのことを映画を通して問いかけているのです」とその想いを伝えた。

最後に、今後はどのような作品を撮っていきたいかという質問に対して「つい先日、1950 年代のドイツでのアメリカ軍を描いたシリーズを撮り終えました。これはドイツでの差別と、アメリカ軍の有色人種に対する人種差別とアパルトヘイトを扱っています。今は罪と赦しの問題についての新たなシリーズの脚本を書いています」と話し、本作を経て、次回作への期待も高まるコメントを残した。

© CCC Filmkunst GmbH

最終更新日
2022-01-28 11:00:00
提供
映画の時間編集部

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