映画感想・レビュー 84/2520ページ

ノスタルジア(1983):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-20

エウジェニアは、ロシアへのノスタルジアにとり憑かれたゴルチャコフの、果てしない思案に耐え切れず、別の恋人のもとへ去ってしまう。

そして、ドメニコは焼身自殺し、残されたゴルチャコフは、ドメニコの遺志を継いで、ひとりで温泉を渡り切った時、力尽きてしまうのだった--------。
タルコフスキーにとって「水」は、地上で最も美しく、謎めいた物質なのだろう。だから、ドメニコは俗世の人間に狂人扱いされながらも、水=温泉を渡ろうとする。

俗世間の人々から、このように狂人扱いされているドメニコは、世紀末の世界を救おうと、ろうそくを灯して水を渡ろうとする。
「水」は、禊に使われるように、ここでもある種の力を持っている。
そして、「水」はあの世とこの世の間の川。ドメニコは、その川の渡し守なのだ。

変な家:P.N.「けろたろう」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2024-05-20

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

変な家の間取りから何故こんな作りにしたのかとユーチューバーと不動産屋とが推理していき次第に想像を越えてくるストーリーになっていく巻き込まれ型のホラーサスペンス映画です。違和感を感じて真実を追っていくと左手のない死体が見つかり失踪した家族を探しに田舎の本家まで乗り込む。呪いを防ぐ為の儀式まで繋げたストーリー自体は無理矢理な感じは否めないしラストの主人公の家も変な間取りだったので怪異がでるというオチだったのは残念かな、、、虫とか出さずに怪音だけで終わったほうがあれこれ想像できて怖かったのでは?

ノスタルジア(1983):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-20

イタリアの中部地方の山間には、不可思議な町、あるいは村が存在する。それはまさに「存在」そのものだ。
アンドレイ・タルコフスキー監督の「ノスタルジー」が描くのは、幻想の「水」を辿る旅であり、タルコフスキー自身の、故郷ロシアへの郷愁が、主人公アンドレイ・ゴルチャコフの心象風景として表われていると思います。

ゴルチャコフは呟く。「この風景は、どこかモスクワに似ている」と。霧の漂う丘陵地帯。白い馬。佇む女たち。
そこには、動くことを止めた時が、うずくまっている。
かと思うと、深い谷底から生えてきた角のような台地に、ひしめきあって建つ、赤っぽい石造りの建物。

周囲を濃い緑の山々に囲まれた一握りの台地は、霧の切れる一瞬、幻想ではなかったかと、私は目を疑ってしまう。
しかし、確かに実在する土地なのだ。「ノスタルジア」の旅は、こうして、幻想の中でスタートする--------。

イタリアで、ロシアの詩人ゴルチャコフは、恋人のエウジェニアとともに温泉地を訪れ、世紀末の世を救おうと、ろうそくを灯して水を渡ることに執着する老人ドメニコと出会う。

異邦人:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-20

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主人公のムルソー(マルチェロ・マストロヤンニ)は、平凡な男だ。
それなのに、彼はいつの間にか、彼をめぐる社会からはみ出した"異邦人"になってしまっていることに気づく。

平凡な男が、いつの間にか平凡でない存在になってしまうのはなぜだろうか?

養老院で母が死んだので、彼は町から60キロほど離れた田舎の養老院へ行く。
汚いバスの中で、彼は暑さにぐったりしている。

暑い時に暑いと感じるのは当たり前だ。
そんな風に、彼の気持ちは、常に当たり前に動いて行く。

母の遺骸の傍らで通夜をしながら、彼は煙草を吸う。そして、コーヒーを飲んだ。
そのことが、後で彼が裁判にかけられた時、不利な状況証拠となってしまう。
母の遺骸に涙も流さず、不謹慎にも煙草を吸い、コーヒーを飲んだと受け取られるのだ。

それでは、ムルソーにとって、母の遺骸の前で泣き、煙草もコーヒーも断つことが、彼の本当の気持ちに忠実だったのかといえば、それはもちろん違う。 そんなことは、悲しみのまやかし的表現であり、嘘である。 ムルソーは、自分の気持ちを偽ることができなかったのだ。 暑い葬式の後で、泳ぎに行き、女友達のマリー(アンナ・カリーナ)に会い、フェルナンデルの喜劇映画を観に行った。 それは、果たして、法廷で非難されたように不謹慎な行為なのだろうか? ムルソーは、ごく当たり前に生活する。 それが、世の中を支配しているまやかしの道徳にそぐわなかったのだ。 ムルソーは、"異邦人"のごとく見られ、断罪される。 だが、真に断罪されなければならないのは、彼を有罪とした社会なのだ。

"太陽のせいで"アラブ人を射殺する有名な事件は、原作者アルベール・カミュの"不条理"の哲学を直截に、しかも余すところなく具現化したものと言えるだろう。 ムルソーの人生は、不条理だ。だが、それでは条理とはなにか? ムルソーの生き方を見ていると、不条理に生きる人生こそが、最も平凡な、というよりは人間として当然の人生ではないかとさえ思われる。 それに比べて、条理の側に立ってムルソーを断罪する人たちの道徳や倫理観の、なんと非人間的なことか。 ムルソーの不条理とは、最も人間的に生きることなのであった。 かくて、最も人間的に生きた人間が断罪される不条理こそが問われなければならなくなってくるのだ。

黒い瞳(1987):P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-20

この映画「黒い瞳」の原作は、チェーホフの「小犬を連れた貴婦人」を基にしている。
チェーホフのこの原作は、今までにも映画化されていますが、この作品の監督ニキータ・ミハルコフは、原作にちょっとしたひねりをつけ、ほろ苦さのあるコメディに仕上げていると思う。

主人公のロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、ブルジョワの娘エリザ(シルヴァーナ・マンガーノ)と結婚してもう25年もたっている。

怠け者のロマーノは、もう何年も働かず怠惰な生活を送っている。
彼は、たまたま出かけた湯治場で、小犬を連れた貴婦人(エレナ・ソフォーノワ)を見かけ心を奪われる。
彼は、貴婦人の黒い瞳が忘れられず、ロシアへ帰った彼女の後を追って、かの地へと赴くのだ。

ストーリの骨組みはこのような内容ですが、この映画の見どころは、名優マルチェロ・マストロヤンニが扮するロマーノの駄目男ぶりだろう。

つまり、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した、マストロヤンニのうまさが見どころになっていて、男のずるさ、いい加減さをたっぷりと、薄気味悪いほど見事に演じている。

一見にやけた二枚目にも見えるマストロヤンニですが、この人は意外と硬派な経歴を持っているんですね。 1923年生まれというから、世代的には戦中派で、実際、第二次世界大戦には出征し、イタリアが降伏した後は、北ドイツの強制収容所に入れられ、しかも、そこを脱走してヴェネチアへ逃げ込んだというから凄い。 この「黒い瞳」は、広大なロシアの風景も見どころにもなっていて、撮影は、イタリアと当時のソ連で行なわれ、ソ連ではレニングラード、ボルガ地方、ラドガ湖近辺で行なわれたそうです。 ロマーノの馬車が、ロシアの草原でジプシーの馬車と出会うシーンは、ことのほか美しく、フランシス・レイの流麗な音楽も、実に効果的だ。 ラストシーン近くでロマーノが、「今死んで、神様に何か聞かれたら、何も答えるものがない。子供の頃、母が歌ってくれた子守唄と、エリザの初夜の表情、そしてロシアの霧だけだ。」と、こんなことを言って目に涙をためる。 マルチェロ・マストロヤンニという俳優は、本当に人間の喜怒哀楽を巧みに演じる、見事な名優だと思いますね。

黒船:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★☆☆☆
投稿日
2024-05-20

明治維新前夜の1856年夏。伊豆の下田港を舞台に、米国との通商条約締結の命を受けた、初代日本総領事ハリスの苦難を描く歴史ドラマ。

公開当時、西部劇と戦争映画にしか出演しないような、御大ジョン・ウェインが、芸者ガールと恋に落ちるという、"キワモノ的な楽しみ"も用意された作品だ。

彼は俳優歴が長いだけに、結構、変な役柄もこなしていて、特に「征服者」でのドジョウ髭の成吉思汗役は、あまりにも有名だ。

「野蛮人と芸者」という原題の通り、ジョン・ウェインが体現する粗野で無骨なアメリカ文化と、芸者によって代表される繊細な日本文化が比較して描かれているのだが------。

実話に基づき、かなり真面目に作ってはいるのだが、未開の地に白人が文明をもたらすという、アメリカ映画お得意のパターンを崩すには至っていない。

監督のジョン・ヒューストンは、そこそこいい映画を撮ってはいるのだが、作品に非常にバラツキの多い監督でもあり、この作品は、そのダメダメな作品の一本だ。

欠点だらけの映画だが、唯一の救いは、ジョン・ウェインに貫禄負けせずに、下田奉行役を堂々と演じた山村聰の存在だ。

龍の忍者:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-20

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この「龍の忍者」は、東映が協力した香港カンフー・アクション映画で、まず東映スタイルの忍者群の活躍場面が紹介されてから、舞台は中国へ。

隠棲する元伊賀流の忍者・田中浩を慕う、若者コナン・リーが、ユーモラスにカンフーの腕前を発揮するが、田中を父の仇と思い、日本から探しに来た真田広之が現われ、若い二人の対決となり、これに真田の恋人・津島要がちらりと絡む。

監督はユアン・ケイという人物だが、展開のテンポの速さや、場面処理の歯切れの良さは、従来の香港映画とはだいぶ違う。

東映側が相当、手伝っているのがうかがわれる。
真田が田中を襲う場面など、とても香港映画とは思えないタッチだ。

だが、お話そのものは散漫で、なんだかはっきりしないところもあるが、やがて、田中は自分が父の仇ではないことを真田にわからせ、リーと仲良くするように言い残して自殺する。

その光景を見て、真田が田中を殺したものと勘違いしたリーは、真田に決闘を挑み、五重塔のてっぺんで丁々発止と渡り合う。

ここは香港映画らしい、延々と続く、いつもの長丁場だが、さんざん闘ったあげく、二人が和解したところへ、邪教を操る男の一味が現われ、インスタントの祭壇を組み立て、二人に挑戦する。 ブルース・リー(李小龍)の凄味のあるアクションから、ジャッキー・チェン(成龍)のユーモラスなアクションへと、この映画の製作当時、カンフー映画の流れは移っていて、この映画もユーモラスな趣向が主体で、中国の妖術が、日本の刀には通じない、というお笑いもある。 この敵の親玉がやたらと強く、さすがの二人もたじたじになるが、いくら強くても、久米の仙人みたいにお色気には弱いと知り、津島要のお色気攻撃で、骨抜きになったところを、KOするというのがオチになっている。 それにしても、若き日の真田広之の、JACで鍛えた、キレキレのカンフー・アクションは、今観ても凄いの一言に尽きる程、素晴らしい。

流されて…:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-20

妙に気になる俳優の中のひとり、ジャンカルロ・ジャンニーニ。
ジャンカルロはルキノ・ヴィスコンティ監督の「イノセント」、エットーレ・スコラ監督の「ジェラシー」などに出演していましたが、特に「イノセンス」での北イタリアの上流社会の男のデカダンスを実に見事に演じていて、もうすっかり彼の魅力の虜になりました。
どこか、マルチェロ・マストロヤンニに似ていなくもないけれど、ジャンカルロは、マルチェロよりも遥かにキザでセクシーなイタリア男だという気がします。
そして、この典型的なイタリア俳優の魅力を何よりも最大限に発揮したのは、リナ・ウェルトミュラー監督の「流されて---」でした。
粗野で下品でセクシーで、それでいてふとした表情に知的なデカダンスをのぞかせるジャンカルロは、ミラノが代表する北イタリアの洗練された知性と、ナポリが代表する南イタリアの陽気さと激情という、イタリアを二分する特性のどちらも持ち合わせた、稀有で貴重なイタリアの俳優だと思います。

そして、リナ・ウェルトミュラー監督とジャンカルロは、「ミミの誘惑」「愛とアナーキー」「セブン・ビューティーズ」などの作品でコンビを組んだ、いわば師弟コンビなのですが、この「流されて---」のジャンカルロは南イタリアの男を体現しています。 八月の地中海に白い帆を張る豪華なヨット、ナポリの実業家夫人ラファエロは、ブルジョワ仲間たちとバカンスを楽しんでいる。 ところが、モーターボートで沖へ出た夫人は、モーターの故障から召使いの男ジェナリーノとたった二人、無人島に漂着した。 自給自足の原始的な生活の中で、夫人と召使いの立場は逆転していくのだった----- 。

この映画は、アメリカでは一種の"フェミニズム"映画として大ヒットしたそうですが、女性監督の視点から描いた男と女の愛の力学が、ブルジョワと労働者階級、支配者と被支配者、文明と原始といった見事すぎるくらいの図式にピタリと当てはまったせいなのかもしれません。 しかし、思うにウェルトミュラー監督のフェミニズム意識と恋愛観は、もっとしたたかで複雑ではないだろうか。 この映画の原点は、やはりヨーロッパの成熟が生んだ"官能の世界"なのだと思えてなりません。

湖の女たち:P.N.「ige」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2024-05-20

人間の様々な欲望を得ようとする行為が詰まった感じの作品。
本年度ベスト級。

介護施設の殺人事件の犯人を探す福士蒼汰さん演じる刑事の圭介。その上司の浅野忠信さん演じる伊佐美。

過去に50人以上の犠牲者を出した薬害事件の真相を追う週刊誌記者の福地桃子さん演じる池田。

この2つのストーリーに加え、刑事の圭介と介護施設で働く松本まりかサン演じる佳代のSMチックなHなストーリーが同時進行(笑)

介護施設で犯人を探す圭介と伊佐美。
かなり強引な進め方で怪しい人物を犯人に仕立て上げる感じが胸糞悪い(笑)

この行為は過去の薬害事件が国のある機関の圧力で捜査が出来なくなり迷宮入りしてしまった刑事の伊佐美の無念の想いがそうさせてしまった感じ。

福士蒼汰&松本まりかサンのエロいシーンが凄い(笑)
このシーンが本作でどのような効果をもたらしているのか謎(笑)
本作が表現したかった「慾望」の象徴だと自分的に解釈。

本作で唯一まともな人物は福地桃子さん演じる記者の池田だけだったかもしれません( ´∀`)

ハピネス(2024):P.N.「ige」さんからの投稿

評価
★★☆☆☆
投稿日
2024-05-20

謎が多くて本作の表現したい事が解らなかった作品。
本年度ベスト級。

由茉役の蒔田彩珠さん目当てで鑑賞するものの残念な作品だった。

余命7日の由茉と彼氏の雪夫の物語。

「君」と言うセリフが多め。
それに重要な意味があると思いきや、そうでは無かった謎。

ベッドシーンや入浴シーンも登場。
かなり中途半端な感じ。
それに意味があるのか謎。
でもホテルの清掃員向けに由茉が書いたメッセージは良かった!
封筒に入れたアレは不要だろっ!

ラストで予想も出来ない展開があると期待するものの何も起こらず謎の展開。

笑いも感動も涙も何も無い、全く謎の作品だった(笑)

ロリータファッションにも全くハマらず。
この世界観は自分には全く刺さらず。

由茉の彼氏の演技も微妙で残念😞

蒔田彩珠さんの次回作には激しく期待しています( ´∀`)

ミッシング(2024):P.N.「ige」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-20

石原さとみサンの迫力ある演技に圧倒された作品。
本年度ベスト!!

失踪した娘の美羽の情報を得ようと奮闘する沙織里と旦那。
失踪直前まで美羽と一緒にいた沙織里の弟の圭吾。
地元テレビ局で失踪した美羽の取材を唯一続けている記者の砂田。
これらの登場人物に加え警察が絡んで行く感じの作品。

とにかく沙織里を演じた石原さとみさんの演技に圧倒される。
泣くシーンや叫ぶシーン。
ドアを蹴飛ばすシーンや砂田が乗った車に窓越しに哀願するシーン等、終始切羽詰まった感じの演技の迫力が凄い!

そんな中、中村倫也さん演じるテレビ局の砂田が沙織里が唯一頼れる人なんだけど、視聴率を上げたい局との間に挟まれた砂川の葛藤するシーンも引き込まれる。
高視聴率を上げた番組スタッフがキー局に引き抜かれた時の砂川の心境に考えさせられる。

沙織里と弟の圭吾との関係も良かった。
ある過去を背負った圭吾がダメダメな感じなんだけど、後半に姉を想う行動に泣ける。

実話ベースと思える程の引き込まれた作品!
その一角を担った石原さとみサンに主演女優賞を差し上げたいです( ´∀`)

ありふれた教室:P.N.「bogi」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-19

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ドイツ映画は随分と観てなかった。どの国も教師は易しくない。
本作の教訓。
1.世の中は私的な動画に溢れ自由に公開するのが当たり前になったが、職場での録画は周知しておかないと内容以前に非難を浴びてしまう。
2.組織内の犯人探しは慎重にしないと被害者でも窮地に陥る。

トム・ジョーンズの華麗な冒険:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-19

この映画「トム・ジョーンズの華麗な冒険」は、1963年度のアカデミー賞、ゴールデングローブ賞で最優秀作品賞を受賞した、英国の鬼才トニー・リチャードソン監督の作品。

この映画の前年の「長距離ランナーの孤独」で注目された、英国の俊英トニー・リチャードソン監督が、18世紀の通俗的な長編小説を原作に、快調なテンポと才気煥発な演出で仕上げた、冒険コメディの傑作だと思います。

大地主に育てられた捨て子が、女好きの調子の良い青年に育ち、女難濡れ衣やらの冒険を重ねて、危機一髪のところでハッピーエンド。

いかにもお気楽な風俗劇だが、"怒れる若者"の代表格と目された、社会派のトニー・リチャードソン監督が、一転、娯楽的な題材を才気いっぱいに撮った作品だけに、オスカー、ゴールデングローブのダブル受賞となったのだ。

私がこの映画で、特に注目したのは、精力旺盛、女好きで義侠心に富む、ユニークな放蕩児のトム・ジョーンズというヒーローを、生き生きと明るく演じたアルバート・フィニーだ。 彼は英国王立演劇学校出身のシェイクスピア役者という、まさに英国男優のエリート・コースの出身で、若い頃、ローレンス・オリヴィエの再来と注目され、同期にピーター・オトゥール、アラン・ベイツという役者がいましたね。 彼は、デヴィッド・リーン監督の「アラビアのロレンス」の主役のロレンス役のオファーを受けながら断り、ピーター・オトゥールに変更になったという逸話が残っていますね。 彼はその後も「いつも二人で」「クリスマス・キャロル」「オリエント急行殺人事件」「火山のもとで」「ドレッサー」等の数々の作品で、演技派俳優として活躍しましたね。

あの愛をふたたび:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-19

クロード・ルルーシュ監督の「あの愛をふたたび」は、前作の「愛と死」で、かなり無理をしたルルーシュが「男と女」や「パリのめぐり逢い」の系列へ戻った作品だ。

アメリカへロケに来たフランスの女優アニー・ジラルドと作曲家のジャン=ポール・ベルモンドが結ばれ、西部各地で愛の観光旅行を楽しむが、それぞれ夫や妻や子供がいるので、絶えず隙間風が吹き込む。

フランスへ帰ったアニーは、夫と別れる決心をして、ベルモンドに会いに、約束の空港へ行くが、彼は現れない、というお話を、ルルーシュは技巧たっぷりに切なくも楽しく描いてみせる。

現実の場面かと思えば、撮影中の場面だったなどという、トリッキーな演出を数多く取り入れ、色彩の画調は快く、ラスベガスからトゥーソンで、ガン・ファイト・ショーを見物。

ジョン・フォード監督の西部劇でお馴染みの、モニュメント・ヴァレーでは、インディアンの大群に追われる愉快な空想をまじえて、例の雄大な岩山の風景の中を白い車が颯爽と走るのが美しい。

こんな風にテクニックを駆使して、巧く作った映画は私の大好物で、だんぜん嬉しくなりましたね。 とにかく、アメリカ・ロケを最も賢明に生かした作品になっていると思う。 また、恋愛映画の観点から観ても、見どころ十分で、恋愛旅行を続けているのに、二人とも絶えず夫と妻に長距離電話を取り続けるんですね。 大人の感覚の浮気と言ってしまえば、それまでだが、その浮気でなくなったアニーが、万が一を期待して空港へ行き、ベルモンドが乗ってくる筈の旅客機が着くまで、ソワソワと落ち着かず、彼がとうとう降りてこないのを見て、自嘲的な苦笑を浮かべ、その苦笑が涙寸前の表情に変わるまでのクローズアップでFINというラストなど、ペーソス豊かに女心を描いていて、そこにルルーシュの盟友である、フランシス・レイの心の琴線を震わすリリカルな音楽が流れてきて、実に抒情溢れるシーンになっていたと思う。

沈黙の激突:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★☆☆☆
投稿日
2024-05-19

この作品は確かスティーヴン・セガールの沈黙シリーズで、セガール男祭りと題して、日本で3本上映されたうちの一本だった。

アメリカでは、あまりのクオリティの低さで、ハリウッド映画界からも見放され、オリジナルビデオとして販売されているらしい。

とにかく、往年のパワーが全く見られないのは事実で、ファンとしては悲しくなってしまう。

彼の作品にストーリー性を求めるのは酷なもので、ジャッキー映画と同じで、毎回同じようなストーリーと演出なんですね。
主要人物が負けるのは、あっさりしていて、最後まで見応えはなかったですね。

ヒロインを演じた女優は美人でしたが、演技があまりにも下手だったので、なんだかしらけたし、何が悲しいってセガールが動けないのが致命的だ。

後半に入るまで彼のアクションはなし、後半に入っても動き回らない。 あの体型からして、すでにアクションをこなすことは所詮、無理な話。 アクション俳優で居続けるのなら、もっと日頃から体を鍛えていて欲しかった。 カーチェイスなし、走るシーンもなし、アクションシーンは単調。 これでは見ている方がつらくなるよ、セガール親爺!!!

アンタッチャブル:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-19

悪法で名高い「禁酒法」ですが、正しくは「酒類製造・販売・運搬等を禁止するという法律」という名称です。
つまり、お酒を造ること、売ること、運ぶことだけが禁止された法律であって、お酒を飲むこと自体は、禁止されていなかったということがわかります。
また、施行されるまでに1年の猶予があったため、人々はお酒の買いだめに走りました。
施行後、家でお酒が見つかっても「買いだめしておいた分です」と言えば、罪に問われなかったというのですから、ザル法もいいところです。
お酒の密輸入と密造で大儲けしたのは、ギャングたちだけだったのです。
この天下の悪法の施工時代に、世にもデカイ顏をしてシカゴの街でのさばっていたのが、暗黒街の帝王、アル・カポネです。
彼がネタになっているギャング映画は、それこそ星の数ほどあるのではないかと思われるくらい、凄い人気です。

このパラマウント映画創立75周年記念映画として製作された、ハリウッド大作「アンタッチャブル」では、ロバート・デ・ニーロがアル・カポネを演じています。 役作りのために、逆ダイエットをして太ったというエピソードはあまりにも有名です。 そして、首を傾けてしゃべる、独特の姿も強烈なインパクトがあります。 映像の魔術師・ブライアン・デ・パルマが監督をしているので、事実なんてどこへやら、徹底した娯楽アクション・ギャング映画に仕上がっています。 こういうのはあざとくて嫌いだという人もいるかも知れません。だが、それはハリウッドメジャー大作映画の宿命ともいえるものですが、私は大好きですね。 有名な駅の階段のベビーカーのシーンは、ハラハラ、ドキドキの連続で、ブライアン・デ・パルマ監督の楽しそうに撮っている顏が想像できますね。

そして、何と言っても魅力的なのは、当時、とても輝いていた主演のケヴィン・コスナーです。 絵に描いたような正義の味方。あまりにも嘘っぽくてため息が出そうですが、これぞまさに娯楽映画なんですね。 事実に基づいているとは言っても、彼の演じるエリオット・ネスは、映画のヒーローであり、架空の人物だくらいに思わないと駄目ですね。 史実と違うからおかしいじゃないかと決めつけるのは、ちょっと筋違いだと思いますね。 とにかく、カッコいいんですね。 もちろん、ショー・コネリー扮するジム・マローンも最高ですね。その年のアカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞しただけのことはありますね。 このジム・マローンは、FBIのリーダー的存在で、エリオットのみならず、観ている我々もグイグイ引っ張ってくれます。 ジェームズ・ボンド役を卒業した後の、ショーン・コネリーの演技に対する取り組みと研鑽が、一気に花開いたという感じですね。

今回、あらためて観直してみて、この作品はギャング映画の最高峰のひとつだと思いましたね。 エンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしくて、この人の書くスコアは、映画の雰囲気にほんとにぴったりで、哀愁のあるメロディーを聞いているだけで感動してしまいます。

祝日:P.N.「bogi」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2024-05-19

佳作だが、心揺さぶられることはなかった。『黄昏流星群』に時折出てくる天使の感じ。
岩井堂聖子は片瀬那奈が改名したのかと思った。よく似てる=とても綺麗。

最終更新日:2024-10-30 16:00:02

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