- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
人体の中で一番奇怪な形状をしているのは耳だと思う。
この「ブルーベルベット」は、耳の迷宮に吸い込まれ、そこから、はい出ていくかのような仕組みになっているところが面白い。
話が強引すぎるとか、デニス・ホッパーのハサミのシャカシャカが少なすぎるとか、音楽がくどすぎるとか、いろいろ不満はあるのだが、それでも私はこの映画が好きだ。
何と言っても、イザベラ・ロッセリーニの醜悪スレスレに崩れた肉体が発散する濃密なデカダンスと、「幸せすぎて、あたし、コワイ」的な冒頭のシーンに酔わされた。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
日本映画でこれほど理詰めに展開される作品も珍しいと思います。
夏樹静子さんの原作による劇中劇の登場人物にしろ、全ての人物やセリフがクロスワード・パズルのヒントのように、見事に配置されていて、映画が終わってパズルが完成されてみると、薬師丸ひろ子の女優開眼という全体図が、クッキリと浮かび上がってくるという寸法なんですね。
実際、この映画を見ていると、ドラマを楽しむことより、薬師丸ひろ子が現実の等身大の彼女から、女優という一オクターブ上がった存在へと変身するさまを見ることのほうが、よりスリリングですね。
そして、薬師丸ひろ子に背伸びをさせ、追い詰め、選択をさせ、ジャンプさせる脚本が、実にうまいと思います。
彼女を泳がせていると見せかけて、巧みに彼女を操っている澤井信一郎監督の演出も、実に見事だと思いますね。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画は、学校の創立記念日にチェーホフの「櫻の園」を上演することになっている、私立の女子高演劇部員たちの群像劇で、その特別な日の早朝から開幕までの2時間がリアルタイムに進行していきますね。
20数名の少女たち全員がオーディションで選ばれ、リハーサルに2カ月かけたそうですが、アンサンブル演技と集団から個への移行が絶妙で、部員の姉が差し入れたアイス・キャンディを全員が思い思いに食べるシーンなど惚れ惚れとしますね。
「櫻の園」の主役を演じる白鳥靖代と中島ひろ子の特別な友情や、つみきみほのひろ子への片思いなど、ドキドキするほど美しく、少女たちの世界をこれほど見事に虚構化した作品は、そんなになかったと思いますね。
本当にスリリングな作品でしたね。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画は一人の少年のいっぷう変わった青春物語でもあり、またアメリカという国そのものの、我が身を切りさいなむように切実な青春物語であると思います。
とにかく、今は亡きリバー・フェニックスが素晴らしい!!
「スタンド・バイ・ミー」「モスキート・コースト」でもそうでしたが、この少年俳優は、清冽な美貌もさることながら、子供のくせして妙に父性的な雰囲気が漂っているんですね。
幼いながら父親代わりをやってしまうような、けなげさと頼もしさがあるんですね。
彼と両親のスキンシップの描写が、実に繊細で豊かな味わいに満ちていますね。
彼は子供らしい心細さで両親の胸に顔をうずめるのですが、それがいつの間にか、彼のほうが両親をかばい、慰めているかのように見えるんですね。
とにかく、涙なしでは見られない作品でしたね。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画105分はあまりにも短いですね。3時間あってもいいくらいです。
どうして、たったの105分にまとめたのか、そのあたりを是非とも監督さんに聞いてみたいです。
これだけ長い物語をたった105分で伝えようとするなんて、どう考えても無理です。
ジュリエット・ビノシュのキャサリンは、私はあまりいいとは思いませんでした。迫力不足という感じです。
逆にレイフ・ファインズのヒースクリフは、とても良かったですね。ハマリ役です。
粗野な感じも、ナイーブな感じも、両方とも実にうまく演じていたと思います。
音楽を担当していたのは、なんと坂本龍一さんだったんですね。
荒涼とした画面にぴったりの音楽で、胸に響きました。
やっぱり映画の音楽は、重要なポイントだなと痛感しました。
こう言ってはなんなのですが、この映画にはすぎた音楽でしたね。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
昔、NHKで「プロジェクトX」という人気番組があったが、その映画版のごとく、ある目的に向って不屈の男たちが、自分たちの夢と使命感で職務を果たそうとする姿は、やはり感動と尊敬の念を呼ぶものである。
この作品では、大自然の猛威にさらされながら危険を克服し、富士山頂に気象レーダーを設置するというものだが、高山病や天候の急変、資材運搬の困難さ、乱気流、大型台風の接近と、工事を疎外する状況が次々と襲ってきて、工事は困難を極める。
しかし、気象庁からは納期厳守を言い渡され、担当者たちは苦境に陥る。
それでもあきらめず事を成そうとする不屈の精神には頭が下がる。
36歳の石原裕次郎をはじめ、勝新太郎、渡哲也、芦田伸介、宇野重吉、山崎努など豪華キャストによる感動の一作だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
中学生のオシャレは、イタリアから帰国した父親に新しい母を紹介され、ショックを受ける。そのショックを吹き飛ばすため、夏休みにオバチャマの羽臼邸に仲間たち6人と行くことにする。
オバチャマもみんなを歓迎してくれ、都会育ちの7人にとっては、オバチャマの家がある田舎の雰囲気は新鮮で大喜びするが、実はオバチャマは数年前に死んでいたのだった---------。
「転校生」「時をかける少女」などの尾道3部作で有名な大林宣彦監督の初監督作品。
ホラー映画だが、ファンタジックさのある映像が、大林監督らしさが滲みでているとも言えるが、人を食べる屋敷と化した妖怪が、少女たちを次々と食べていくという、コミカルながら残酷な内容。
ストーリーや映像はもう何でもアリの世界で、ハチャメチャと言えなくもないが、サービス精神も多分に窺える。
映画としての品位や品質は、必ずしも高いとは言えないが、なぜか印象に残る映画だ。
そこがカルト映画たる所以だろうか。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-02-20
原作は読んでいたので、ストーリーや犯人は知っていたため、どちらかと言うと小説の内容をいかに映像化しているかというのを確認しながら観ました。
金田一耕助役はお馴染みの石坂浩二ではなく、最近バラエティなどで露出度の高い中尾彬。
この金田一といい、作風といい、角川映画の金田一シリーズとは一線を画する映画となっている。
馴染みの金田一作品で強調される、おどろおどろらしさはあまり感じられず、犯人探しを主眼とした怪しげな人物設定も少ない。
金田一自身も今や定着したイメージの石坂・金田一とはかなり違ったイメージを醸し出している。
何もかも他の金田一作品とは違う感のある作品で、面白い反面、事件の動機や謎解き部分の描き方が物足らない感じも残ってしまった。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画「野獣死すべし」は、「蘇える金狼」と並ぶ、松田優作のハードボイルド映画の傑作だ。
主人公は、戦場カメラマンとして幾多の地獄絵図を見てきた経験が、まさに野獣の如く狂気を帯びた男を作り上げているが、そんな男を松田優作が見事に演じていたと思う。
周りを固める役者、特に鹿賀丈史のキレた演技も秀逸で、松田優作に劣らない狂気を醸し出しているし、刑事役の室田日出男も松田優作との対峙シーンで、印象深い演技をしていると思う。
狂気に満ちた内容だけに、部分部分で分かりにくいところはあるが、好奇心と緊張感の持続する映画だ。
それにしても、ハードボイルドとはいえ、あまりにも無抵抗の人を殺しすぎ!?
また前半の緻密な銀行強盗計画に比べ、実践は意外と乱雑だったのが残念だ。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-02-20
歴史上の人物として、あるいはその作品の名前はよく聞くが、生身の人間としての人物像までは詳しく知らない葛飾北斎と滝沢馬琴。
もちろん史実とは違ったフィクションだろうが、生身の人間として身近に感じられる作品になっていると思う。
北斎の生き様には色々意見が出るとは思うが、春画にかける情熱は、強く感じられるような表現になっている。
緒形拳、西田敏行という配役もよく、エンターテインメント作品としても面白く仕上がっていると思う。
もちろん当時話題となった、樋口可南子や田中裕子の脱ぎっぷりの良さも評価したい作品だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画「アメリカを売った男」は、アメリカで実際に起こったロバート・ハンセンによるスパイ事件を基にしている。
謎の多いこの作品だが、そんな謎解きが目的ではない、ハンセンとオニールとのわずか2ヶ月のやり取りが非常に重要で、この映画の出来を良くしていると思う。
ともかく、ハンセンを地味ながら(地味だからこそ20年以上もスパイ活動ができたのかもしれないが-----)、クリス・クーパーが見事なまでに好演していると思う。
そして、そんなすごいスパイが、あんな若造訓練捜査官だけは、なぜか最後まで信用し、結局それが逮捕に繋がってしまうという悲しさ。
オニールも言いようのない複雑な気持ちだったことを、良く演じていたと思う。
派手さはないものの、結構見ごたえのある佳作だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
粋で小気味のよい大人の会話が楽しめる映画だ。
ストーリー自体はゆったりとしているようでも、会話がテンポいいため飽きが来ない。
そして、ウォルター・マッソー演じるジュリアンが、その場をしのごうとしてつく嘘が嘘を呼び、話がややこしくなっていくところや、上手い具合にトニーが誤解していくあたりが、上品なドタバタ・コメディ映画として仕上がっていて実に面白い。
そして、何よりも驚かされたのが、イングリッド・バーグマンの出演。
「カサブランカ」や「ガス燈」で強烈に印象づけられたイメージからは想像できなかったバーでのダンスシーンには驚いてしまった。
とにかく、一見の価値ありの映画だ。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-02-20
やたらとド派手な爆破シーンやアクションシーンが多い映画で、さすが「アルマゲドン」や「トランスフォーマー」のマイケル・ベイ監督だと納得。
ストーリーも単純で分かりやすい。殺人現場を目撃した女性を犯人から保護しながら、ヘロイン強奪犯人との格闘がメインストーリーだが、この映画の見どころは、それ以外に、マーカスとマイクの迷コンビぶり。
ともかく、この二人のやりとりが実に面白い。
ほとんどけんか腰のやりとりだが、特に恐妻家のマーカスの言動は滑稽で笑いを誘う。
ウィル・スミスを有名にした作品だが、若くて、まだちょっと初々しさの残る彼にも要注目だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画「地獄に堕ちた勇者ども」は、ルキノ・ヴィスコンティ監督が、1933年のドイツを舞台に、権力と欲望に取り憑かれた者たちの、残忍非情な陰謀劇を、圧倒的な退廃美で描いた作品だ。
製鉄王エッセンバック男爵の誕生日に、財産を狙う一族が、男爵家に集まった。
男爵の従弟で、ナチス親衛隊の幹部ヘルムートは、財産の全てをナチスのために、没収しようと計画する。
そして、それぞれの欲望を利用して、次々と一族を死に追い込んでいく。
ラスト、邸宅の大広間に飾られる、鉤十字の旗が、その後のナチスの猛威と狂気を見事に暗示していると思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
この映画「恐怖のメロディ」は、クリント・イーストウッドが初監督したスリラーの傑作だ。
後に彼が市長を務めたカリフォルニア州カーメルを舞台に、地元の人気DJデイブが、毎夜、エロール・ガーナーの名曲「ミスティ」を電話でリクエストする女性ファン、エブリンから執拗に迫られる。
恋人のいる彼に嫉妬したエブリンが、自殺を試みた後、一転して殺人に走る展開など、その後の「危険な情事」に連なる、元祖ストーカー映画になっている。
断崖のある海辺の家で、デイブが、恋人を襲うエブリンと闘うクライマックスが、実にスリリングだ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-20
あなたは、今、人生の終盤、おおての段階だろうか、それとも、行き詰まりのチェックメイトだろうか?
様々な、技法を惜しみ無く提供し、展開して行く作品。
スペインは、まるで、マルガリータ・デ・テレサ・エスパーニャの夢を今も見ているようだ。
まるで、無垢な、少女の瞳を夢見、その眼差しに、釘付けになる。
プラドの秘宝、ベラスケスの作品のように、音楽家や芸術家に、様々なインスパイアーを与えるように、その眼差しは、スペインの夢を紡いで行く。
あなたの人生の映画は、終盤、それとも、行き詰まり、チェックメイトのその時だろうか?
少女よ、もう、瞳を閉じて、
もう、スペインは、その眼差しを失いつつある。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-02-20
北海道、東京、大阪と、オムニバス形式で、女性の物語に焦点を当て、展開して行く。
最初は、失礼ながら、前田敦子さんの、今時な女性のストーリーかなと、鑑賞するつもりはなかったのですが、80近いカルーセル麻紀さんの渾身で挑んだ作品と言う記事を読んで、想像がつきにくい点が余計、興味を引きました。
カルーセル麻紀さんは、その存在自体が、役にピタリでしたし、北海道にいながら、まるで舞台劇の様な演出もなかなか、作品上、違和感なくはまっていました。
東京・八丈島は、離島と独特の閉塞感もしっかりと描かれていました。
オムニバス形式なんですが、やはり、主軸は、前田敦子さんの大阪が、ポイントのようです。
彼女のトラウマの様な、白黒の世界、感情を解き放して行くロードムービ風に展開、最後は、心なしか、明るいトーンに感じるかも?
全体を通して、女性讃歌、新たな船出を応援している様な作品です。
大阪の馴染みある場所に感動、カルーセル麻紀さんと言えば、殆ど鬼籍の方々の「ノックは無用」で、皆さんのザ・大阪の追い風が感じられる作品かも?
- 評価
- ★☆☆☆☆
- 投稿日
- 2024-02-19
出演者達がビックリするシーンが多くてシラケました。笑えないホラーコメディです。昔の貞子に戻ってほしい。小芝風花さんが可愛いかっただけでした。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-19
宮崎駿監督のアニメーション君たちはどう生きるか視聴後にWOWOWから提供されたスマホ画像で吹替版を観る。モノクロのスチル映画で構成されたポーランド映画パサジェルカも想い出す。幸福で平和な愛すべき過去,対比される過酷な未来と残酷な現実,核情況下の世界情勢を反映して出来たクリス・マルケル監督の鮮烈な活動写真!
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-02-19
🦤🦜🐸宮崎駿監督作品の映画君たちはどう生きるかとヴィム・ヴェンダース監督作品PERFECT・DAYS から受ける印象は本篇見たいな記憶と夢に拘る映像である事と観賞後に引き摺る映像体験だと云う点なのだ