- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-14
この映画「エド・ウッド」は、”史上最低の映画監督”と言われたエド・ウッドの若き日を、彼をこよなく愛するティム・バートン監督が映画化した、非常に美しい作品だ。
主演にはティム・バートン監督が「シザー・ハンズ」で組んで以来、もはや彼の盟友ともなったジョニー・デップが好演しているが、それにも増して素晴らしかったのは、ベラ・ルゴシ役のマーティン・ランドーで、アカデミー賞の他、ゴールデン・グローブ賞など数々の賞で、最優秀助演男優賞を受賞しているのも納得の演技だ。
とにかく、この映画は冒頭のクレジット・タイトル場面から、グイグイと惹きずり込まれてしまう。
とある野原の一軒家。”風雲急を告げる”ような音楽。棺の中から起き上がり、もっともらしい予言をする怪人物、墓場。
そして、クネクネと脚をくねらす大ダコ、ツーツーと宙を飛ぶ円盤——。
ティム・バートン監督としては珍しいモノクロ画面に、子供じみたロマンティシズムが横溢している。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-14
犯人を演ずる三國連太郎の凄まじいまでの迫力を持った告白の熱演が展開される。
まさに日本映画史に残る、圧倒的な熱演に唸らされる。
執念の刑事を演ずる伴淳三郎もいぶし銀のような演技で、一世一代の好演だと思う。
そして、恩を忘れなかった哀しき娼婦役の左幸子も、したたかな演技を繰り広げており、芸達者たちの演技合戦も実に見ものだ。
また、伴淳三郎とコンビを組む、若き刑事に高倉健が扮しているが、東映で任侠の男を演じていた頃、健さんは自分の代表作はと問われ、この作品を挙げていたそうだ。
重量感たっぷり、見応えもたっぷりの、日本映画史に残る秀作だと思う。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-14
犯人と思しき男は、京都の舞鶴で事業家として成功している。
だが、名前は違っているし、犯行を実証するものもない。
どうやって、犯人を暴いていくのか——-。
そこがクライマックスとなる。
事件は、犯人が下北半島に上陸して一夜を共にした女の出現で、解決へと向かう。
女はその時、犯人から大金をもらったことに恩義を感じ、その時の礼を言おうとして、犯人に近づき殺される。
女の一途な純な心は、自らを守ろうとする男のエゴで消されていく。
のっぴきならないところに追い詰められていく男と女の関係を、内田吐夢監督はダイナミックに描いていく。
犯人は逮捕される。悪は憎むが、悪人の中にも人間の善なる心の一片を知りたいと、事件を追い続けてきた刑事に、犯人はその心情を吐露する。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-14
この映画「飢餓海峡」は、映像実験もあり、力量観あふれる運命劇で、壮大なスケールの人間ドラマの秀作だ。
水上勉の同名小説を、鈴木尚之がシナリオ化し、内田吐夢監督が映画化したものだが、内田吐夢監督は、その持てる力をフルに発揮し、16ミリフィルムを拡大して、実感を強調するなどの映像的な実験も試みて、力量観あふれる運命劇を作り上げている。
物語は、1946年、台風が青函海峡を通過中、一瞬の晴れ間を台風の通過と間違えたため、青函連絡船が転覆し、500人余りの人が死亡した”洞爺丸事件”から幕を開ける。
台風が吹き荒れる中、函館に近い岩内町では大火が発生し、質屋一家が殺害される。
犯人は、洞爺丸事件のごたごたに紛れて、内地へと逃亡したのではとみられた。
執拗に犯人を追う刑事を通して、物語は推理ドラマ風に展開していく。
そして、事件発生から犯人逮捕までには7年の歳月が流れる。
その間に、人間の在り様は大きく変わっていく。
その変わり様と変わらぬ人間の心を、内田吐夢監督はじっくりと凝視していく。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-14
彼らの学校での勉強の日々を描きながら、悩み多き青春の息吹を画面いっぱいに表現していくんですね。
こうした才能が必要な世界に首を突っ込んだ大部分の人は、結局はプロになれずに終わります。
ましてや、名声を獲得するなんてことは、至難の業なんですね。
ほとんどが落ちこぼれで終わってしまうのです。
そんな青春の一時期の”試行錯誤自体”に意味を見い出そうとしたのが、この映画なのだと思います。
最後の卒業公演のシーンで、この中の誰がフェームを得るのだろうと問うのは、ナンセンスです。
人生で最も大事なのは、何かを成し遂げようとする、その”過程”の中にこそあるのですから。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-14
この名匠アラン・パーカー監督の映画「フェーム」は、ニューヨークにある名門の芸能専門学校で学ぶ若者たちを描いた青春映画で、この学校の入学テストから卒業公演までの四年間を活写して、フェーム(名声)を求める若者たちの熱気がムンムンしている、その情熱が伝わってくる映画なんですね。
この映画は、まず入学試験の風景が楽しいんですね。
やたら上手なのから下手なのまで、人種もいろいろ、その雑多に混み合った特売場みたいな雰囲気の中で、テストが行なわれるんですね。
歌を歌う者、寸劇をやる者、楽器を弾く者、ダンスを踊る者というように、画面いっぱいに展開していくのです。
そして、合格したショービジネス界の卵たちの生活ぶりが、描かれていきます。
補欠で入った内気な女の子。母が有名な俳優だという演劇志望の男の子。
女友達の試験についてきて、見事なディスコダンスで自分の方が合格してしまった黒人青年など。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-14
隊長ジェームズ・メイソンや副官デイヴィッド・ワーナーが点描されるうちに、コバーンは負傷して病院へ送られ、看護婦センタ・バーガーと仲良くなったりするが、再び前線に復帰して、ソ連軍の猛攻に遭い、生き残った部下と孤立し、敵中を突破して友軍と合流しようとする。
このコバーン扮する主人公は、いかにも映画の主人公らしく、人情的で英雄的だ。
シェルの命令を受けて、コバーンや彼の部下たちを殺そうとした中尉を殺す場面は、さすがに暴力映画の巨匠ペキンパー監督らしく迫力がある。
全体を通じて最もペキンパー監督らしい野心が窺えるのは、すごく細かいカットを複雑に丹念に編集して、大激戦の迫力を構成しようとしたところだ。
凄絶な戦闘に男たちの求めるものは何か。
ペキンパー監督は、戦場での男たちの生き様を、スローモーションを効かせたダイナミックな演出で鮮やかに描写していて、ジェリー・ゴールドスミス作曲のエモーショナルなテーマ音楽も胸をえぐる。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-14
ドイツ軍の側だけを扱った戦争映画には、ルイス・マイルストン監督の「西部戦線異状なし」という傑作があるが、この「戦争のはらわた」は、男の理想とする”闘い”と”夢”をひたすら追求してきたサム・ペキンパー監督が、1943年のロシア戦線において、死と対峙する兵士たちの中にそのテーマを求めた力作だ。
敗色濃厚なドイツ軍のある舞台で、第2小隊を率いる人間味あふれるスタイナー伍長のジェームズ・コバーンが、自分たちの命を守ることを信条に闘い続けているところへ、プロシア貴族の誇りに凝り固まり、名誉欲に取り憑かれた将校マクシミリアン・シェルが赴任して来て、男同士の激しい確執のドラマが展開していく。
彼の願いは、名誉ある鉄十字勲章(CROSS OF IRON)を手に入れることだけで、捕虜のソ連の少年兵を殺せというシェルの命令に、コバーンが反対したのが始まりで、二人の対立は激化していく。
そして、シェルは鉄十字勲章の申請書に、コバーンの署名を求めようとごきげんとり作戦を試みるが拒絶される。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
ソーシャル・ネットワークをまた観て、とても感動した。これは何よりも共感できるところがいっぱいあるからだ。私もSNSと関わっている。TikTokとインスタもさせて頂いているが、最近はフォローして頂ける方も増えてきて、両方で1万人に向かって増え続けている。とてもありがたいことだと思っている。けれども先日のニュースにもあったようにSNSはトラブルも多い。北海道の旭川市で17才の女子高生が橋から落とされ、殺害された事件だ。SNSでのトラブルがきっかけだったという。私は以前からSNSは少し距離を置いて、冷静に判断するほうがいいと思っているが、今もその気持ちは変わらない。この映画はその意味で様々なことを考えさせてくれる。ほんとに素晴らしいの一言に尽きると思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
映画らしい映画でした。
ストーリーが読めてしまうところもありましたが、それはそれで期待を裏切ること無く、よかったです。
出演されている俳優陣が、平泉成さんのために一肌って感じがしました。
見て、後悔はさせません。
エンドロールの中のフォト写真のスライドショーも、ホッとする暖かさがありました。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
監督は、初期の「007」シリーズを数多く演出したガイ・ハミルトン。
殺人事件という事で、とかく陰湿になりがちなのを、明るく華麗なムードで見せ切った職人監督としての腕前はなかなかのものです。
なかでも、私が面白かったのは、真犯人が正体を現わした、その途端、ガラリとキャラクター・イメージを変えて見せるその転換の鮮やかさです。
ポワロの謎解き場面に、少々工夫が足りないなという不満を感じながらも、ここに人間の裏側のもう一つの奇怪さまで感じられて、楽しめた映画でしたね。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
被害者のミュージカル・スターを演じるのが「女王陛下の007」のダイアナ・リグ。まさに適役です。
そして、彼女を取り巻いてマギー・スミス、ジェームズ・メイスン、ロディ・マクドウォール、ジェーン・バーキンといった演技派や個性派俳優がずらりと脇を固めています。
この映画は、ベテラン・スターを配する事で、様々な人物が背負っている人生の影が、スター個人のキャリアと重なって、大きな効果を上げていると思います。
ピーター・ユスティノフのポワロ探偵に味があって良いのも、その人生の裏側に深くあたたかい眼差しを向ける人間味が、滲んでいるからだと思うのです。
そして、ホテルの女主人を演じるマギー・スミスが、往年のショウ・ガール時代のライバルだったダイアナ・リグと「ユーアー・ザ・トップ」を張り合って歌う場面なども、実に楽しめるのです。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「地中海殺人事件」は、アガサ・クリスティ原作の「白昼の悪魔」の映画化ですが、「オリエント急行殺人事件」ほどの超豪華キャストとシドニー・ルメット監督による演出のうまさもなく、「ナイル殺人事件」のような風俗的な華やかさと壮大な景観の魅力も、あまり感じられない作品だったと思います。
燦さんたる陽光降りそそぐ、地中海に浮かぶ美しい孤島のリゾート・ホテルで、謎の殺人事件が起こる。
殺されたのは美貌の持ち主だが、傲慢なミュージカル・スター。そして、この孤島を訪れていた、お馴染みの名探偵エルキュール・ポワロの推理が始まるのです。
ここに滞在している様々な人物は、それぞれみんな意味ありげな過去を持ち、殺しの動機もあるのです。
その一方で、それぞれにアリバイもあるのです。
この孤島は外部と広い海でさえぎられ、まさに一つの密室なのです。
これはもう典型的なクリスティの謎解きの展開なのです。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
一応、舞台が近未来なので、衣装も未来仕様だが、今見るとシルク・ドゥ・ソレイユっぽいサーカス風で、派手過ぎて滑稽なくらいだ。
こういう描写が長いので正直、観ていて疲れるのだが、羊飼いがひょんなことから金属の箱を開ける方法を見つけたあたりから、そういう疲れが吹き飛ぶような展開が待っている。
とりわけ、原発事故が継続中の今の日本では、この展開はあまりにも怖すぎる。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
二人のパイロットは、当局と連絡を取ろうと右往左往。
違うルートで墜落の情報を得た当局の連中は、ホテル業者を装って島に乗り込み、開発という触れ込みで島の一部を買い取り、爆弾と金属の箱探し。
どうにか2基の爆弾は回収出来たが、最もヤバイ金属の箱がどうしても見つからないのだ。
その箱は、貧乏な羊飼いの夫婦がこの箱を発見し、お宝に違いないと思い、こっそりと家に持ち帰り、開けようとしていたのだ。
真っ赤に日焼けし、パンツ一枚の姿でお腹を空かして、うろうろする二人のパイロット。
ド派手なリゾートファッションに身を包み、その状況をエンジョイするホテル業者に化けた兵士たち。
そんな彼らの出現に、島の未来を確信して浮かれまくる村人たち。
新しいリゾート地登場という情報を得て、徒党を組んで詰めかける観光客。
そんな様子が、過剰過ぎるほどデフォルメされたマイケル・カコヤニス監督の演出で描かれる。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「魚が出てきた日」は、「その男ゾルバ」「エレクトラ」等で知られるギリシャ出身のマイケル・カコヤニス監督の問題作だ。
この映画の冒頭、スペインのフラメンコダンサーが登場して「原爆が落ちるのはスペインだけとは限らない」みたいな歌を唄う。
そして、舞台はギリシャの貧しい島に移り、その上空で爆撃機がトラブルを起こし、トム・コートネイとコリン・ブレイクリーのパイロットは、積荷の核爆弾2基、高濃度の放射性物質を閉じ込めた金属製の箱をパラシュートで落下させ、自分たちもその後を追って飛び降りる。
この件は、1966年1月17日、スペインのパロマレスという村の上空で、4基の核爆弾を搭載した米軍のB-52が事故を起こしたが、爆弾はパラシュートで落とした為、事無きを得たという事件が、実際に発生していたのだ。
この1年後に、その事件をいち早く頂戴して、近未来を舞台にSFブラックコメディに仕立てたのがこの「魚が出てきた日」なのだ。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
かつて彼女が出演した「ジョンとメリー」で彼女の相手役をしたダスティン・ホフマンもこういう表情がぴったりだったが、この映画でのトポルは、その点、申し分のない人の好さそうなところを、実に自然に見せてくれる。
トポルが、無言のまま、ゼスチャーでミア・ファローをロンドン中を案内する、お伽噺のような味わいのあるシークエンスが、その意味で、観ていて、実にいい気持ちになるんですね。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
このように、ストーリーそのものは、古風なお茶の間喜劇程度の材料で、特別新鮮味があるとも思えない。
1930年代、1940年代の風俗喜劇じゃないかとさえ思えてきます。
ただ、それが、花嫁にミア・ファローを配すると、ぐっと新鮮になって現代の空気感に満たされてくるし、探偵に「屋根の上のバイオリン弾き」で主役のテビエを演じたトポルを配すると、これがうまいのなんの、古いとか新しいとかいうことを抜きにして、心が和み、実に爽やかな気分にさせられてしまうんですね。
ミア・ファローは、何かあどけない子供のまま大人になったような女優で、バッチリとその大きな瞳を、いつも何かおねだりするような眼差しにしている。
相手役はそこで、きっとイイ子だね、何をあげようか? という顔をすることになるんですね。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「フォロー・ミー」は、「第三の男」や「オリバー!」などの名匠キャロル・リード監督が、ピーター・シェーファーのひと幕ものの舞台劇を映画化した作品で、テーマ曲も大ヒットし、ロンドンの穴場的なスポットを回るロケーションも楽しい、ロマンティックな恋愛劇の佳作です。
映画自体は小粒ですが、さすがにキャロル・リード監督の素晴らしさを堪能できる作品だと思う。
権威主義に凝り固まっているイギリスの上流階級の青年が、野育ちであまり教養もないアメリカ娘をお嫁さんに貰ったのはいいが、花嫁はこの固苦しいばかりで退屈な上流社会の生活が気づまりで、毎日外出してぼんやりとロンドンの街中を歩き回る。
夫はてっきり、妻が浮気をしているのだと思って探偵をつける。
するとこの探偵が尾行しながら、すっかり彼女を愛してしまう。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
ロイ・シャイダー扮するアメリカの科学者たちが、ソ連の宇宙船に同乗し、謎の解明のために木星へと向かう。
前作のあまりにも壮大なスペクタクルと興奮に対決するには、ピーター・ハイアムズ監督としては、この手でいくしか方法がなかったのだろうと思う。
しかし、米ソの関係悪化が、宇宙船の乗組員にまで影響を及ぼし、石板の異変が起きるあたりは、作者のテーマと思想が露出して、我々の前作に対するイメージまで、否定してしまう不満もある。
しかし、「スターウォーズ/帝国の逆襲」や「レイダース」でアカデミー特殊効果賞を受賞したスタッフによる特撮は、実に見事だ。
宇宙船のドッキングや、木星を覆う石板のスペクタクルにも目を見張らされる。
まあ、前作との比較はさておいて、この作品はこの作品なりに、ドラマチックな宇宙サスペンスとして楽しめばいい娯楽作品なのだ。