- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-01
生来の無精な性格から、キアヌ・リーブスには無精ひげが似合い、ワイルドなアクション俳優というイメージがある。
個人的には、「スピード」の時のような精悍な感じが好きなのだが。
この「砂上の法廷」では一転して、七三分けにツルンとした、さっぱり顔で法廷劇に臨んでいる。
バイクにまたがって法廷に通うところに、従来のキアヌらしさがあるから、スーツの似合う入廷後の姿に変身ぶりを実感できる。
キアヌ演じる弁護士の資産家の友人が殺害され、17歳の息子が容疑者となる。
有罪を裏付ける証言が相次ぎ、少年は黙秘を続ける。
不利な状況にも、弁護士は辣腕を振るい、証言のほころびを突く。
裁判の行方が混迷する中で、少年が予想外の告白を始めて--------。
テレビの2時間ドラマに収まりそうな題材に、コートニー・ハント監督は、映画らしい厚みを加えている。 自然光の照明は、法廷の人々の心象を陰影で映し出す。 CMを挟んだ予定調和のタイミングではなく、急転、急変で意表を突く。 資産家夫人役のレニー・ゼルウィガーも「謎」をにおわせ、変身キアヌと相まってけむに巻く。 回想シーンに嘘を交えない正攻法でしっかりだまされる。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-01
「四谷怪談」の主演の長谷川一夫は、天下の二枚目だ。
その彼が伊右衛門を演じるというので、厄介な問題が生じてしまった。
四谷怪談の主人公、民谷伊右衛門はおのれの欲望のためなら、人殺しも平気な極悪人だ。
だが、いかに夏の定番とはいえ、天下の二枚目に悪役はさせられない。
そこで、このジレンマを解決するため、ストーリーの大改変が行われたのだ。
すなわち、伊右衛門を上司の娘婿に仕立てて、出世の手蔓としたい周囲の陰謀で、彼は妻が不貞を働いていると信じ込み、死に追いやるが、遂にその真相を知り、悪人達と大立ち回りの末、これを討ち果たす。
もともと鶴屋南北の戯曲自体が長いので、映画化の際、かなりの脚色を行うのが常だったとはいえ、悪玉を善玉に変えてしまったのは、この作品くらいのものだろう。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-01
この映画は、戦闘的宗教作家ベルナノスの聖性と魔性の闘いを描いた同名小説を、モーリス・ピアラ監督が、大胆に映像化した作品だ。
原作の枝葉を削ぎ落し、すっきりとテーマを絞り込んだ脚本と、緻密な映像設計で、この難解な原作を見事に映像化している。
主演のジェラール・ドバルデューも、見事な演技を披露している。
1987年度のカンヌ映画祭でグランプリに輝くが、凄まじい賛否両論を巻き起こしたことでも有名だ。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-01
第二次世界大戦終了直後のポーランド。
病気の母親とつましく暮らす戦争未亡人のエミリア。
戦犯調査団の米兵ノーマンと知り合い、辛い思いをしてきた二人の心が溶け合う。
ノーマンは、結婚を申し込み、アメリカに誘うが、彼女は思いきれなかった。
ラストのモニュメント・ヴァリーのダンス、戦争の影響が残る、若くない二人の愛は哀しい。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-05-31
この映画の面白さの一つに、ルベル警視を演じるミシェル・ロンスダールの配役の妙があると思います。
この人物、およそ風采のあがらない小太りの中年男で、これといった才気も機敏さも、逞しさも風格もないのに、なぜかフランス随一の名刑事なのだというのです。
いつも寝ぼけ眼で、大臣のお呼びだというのでエッチラオッチラ役所に駆けつけ、モソモソと部下の指揮を執り始めるといった具合なのです。
ところが、閣議から誰かが情報を洩らしているだろうと睨むと、容赦なく大臣たちの全部の電話を盗聴して、女スパイのハニートラップに引っかかった大臣をとっちめるのです。
なるほど、たいした切れ者なのです。
一方、ジャッカルは、パリに近づく途中、田舎町のホテルでデルフィーヌ・セイリグ演じる有閑マダムをたらし込んで、警察の捜査をかわすのです。
そして、最後の見せ場は、パリのシャンゼリゼから凱旋門前の広場で行われる、革命記念日の大パレードでの大捕物です。
遂に、ド・ゴール大統領を狙撃できる場所にまで達したジャッカルを、危機一髪でルベル警視が射殺するのですが、革命記念日の大パレードの実写の使い方が実にうまくて、まるでこの映画の撮影のために、何十万人のエキストラを縦横に使ったような、巧みな画面処理のうまさを見せつけてくれます。 こういうところは、さすが名匠フレッド・ジンネマン監督の演出の見事さが光ります。 かつて、フレッド・ジンネマン監督が、ゲーリー・クーパー主演の傑作西部劇「真昼の決闘」のような野心作を撮った時の激しさは、この作品にはありませんが、もっと悠々と愉しんで大向こうを唸らせる大作に仕上げていると思います。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-05-31
一方、ジャッカルにド・ゴール大統領の暗殺を依頼したO・A・Sは、その代金を支払うために地下組織にやたらと銀行強盗をやらせるのですが、警察ではなぜO・A・Sが急にそんなに躍起になっているのか、その理由を調べるために、イタリアに亡命しているO・A・Sの幹部の一人を、イタリアの街角で数人でぶん殴って、食糧輸送車に乗せてパリへ連れて来てしまいます。
これは明らかにイタリアの主権の侵害で、かつての日本における金大中事件と同じです。
金大中事件の場合は、犯人たちがこれ見よがしに金大中を自宅近辺で釈放して、日本政府のことなど眼中にないような態度に出たので国際問題化しましたが、この映画でみると、同じような事件で闇から闇に葬られているようなことも案外色々あるのかも知れないなと思わせられます。
そういうことも、この映画のサスペンスの重要な要素の一つになっているのだと思います。
O・A・S幹部を拷問して、その断片的な告白からフランス警察は、ド・ゴール大統領暗殺計画の一端をつかみます。
フランスというと日本では、非常に自由で文化的な国という印象が持たれていますが、なかなかどうして、相当な警察国家であり、警察はかなり乱暴なことをやってのけるのです。 この映画はそれをド・ゴール大統領の進歩的な政策を守るという、正しい目的のための手段として描いていますから、なんとなく当然のことのように観てしまいますが、こういうところも、ちゃんとフランスの政治体制の怖さを描いたものとして観るべきだと思います。 そうでないと、フランスの学生運動のことなども分からなくなってきます。 計画を察知した政府は閣議を開いて、最も優秀な刑事だというルベル警視に全権を任せて、捜査を始めさせます。 ところがO・A・Sもさるもの、女スパイを大臣級の人物の情婦にして、捜査状況の情報を盗ませるのです。 それで捜査の状況が次々にジャッカルに伝わり、ジャッカルは見破られた変装を次々に別の変装に取り替えながら、パリへと近づいていくのです。 その虚々実々の駆け引きは、映画的な緊張感を伴ったサスペンスに満ち溢れています。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-05-31
原作者のフレデリック・フォーサイスは、その頃、イギリスの新聞記者としてパリにあり、もっぱらド・ゴール大統領関係の取材をしていたというから、当時の警察の動きには詳しい訳です。
そして、この原作の小説と映画の強みは、どこまでが本当で、どこからが嘘か分からないくらい、実在の人物や実際の場所、実際の役所の機構などをうまく使って、一人の殺し屋を追う警察の動きを丹念に描いているところにあると思います。
そして、この警察の動きと、着々と計画を進める殺し屋ジャッカルの動きとが交互に描かれていって、警察と殺し屋の知恵比べがサスペンスを呼ぶという仕掛けになってくるのです。
極右派の地下組織O・A・Sに金で雇われる殺し屋を演じるのは、イギリスの舞台出身のエドワード・フォックス。
小柄だが、筋肉質の、見るからにすばしっこい印象をしています。
端麗な顔なのに、陰惨でニヒルなところがあるのは、この映画のためのメイク・アップや特に工夫した表情のせいなのかも知れません。
このジャッカルの役を、当時、イギリスの人気俳優のマイケル・ケインが熱望したとのことですが、フレッド・ジンネマン監督は、このジャッカルという人間は、既成のイメージが付いた俳優では駄目で、全く色の付いていない俳優にするべきだとの考えから、当時、ほとんど無名のエドワード・フォックスを抜擢したというエピソードが残っています。 この暗号名ジャッカルという殺し屋、依頼を受けると早速ロンドンで、暗殺のためのこまごました準備を始めます。 偽のパスポートを請求するために、全く他人の死んだ子供の名義を使います。 それも、一つの偽名が警察に分かった場合、直ちに別の国籍の、まるで人相も違う人間に成りすませるよう、変装用の髪の染料や色の付いたコンタクトレンズなどと一緒に、幾通りも用意するのです。 更に、パイプだけで組み立てることのできる狙撃銃を専門家に作ってもらうのです。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-31
サスペンス映画というのは、一難去ってまた一難で、主人公の運命はどうなるのかということに、観ている者をハラハラ、ドキドキさせる映画、それも単純なアクションものではなく、意表をつくアイディアと、ストーリーのうまさと、映画的なテクニックのあの手この手で、グイグイ引っ張っていく映画、そういうジャンルの娯楽映画として、ずば抜けて面白いのが、名匠フレッド・ジンネマン監督の「ジャッカルの日」だと思います。
何よりもまず、着想が実に凝っています。
サスペンス映画というのは、とかく現実にはあり得ないような話になりやすいものですが、これは、もしかしたら現実に本当にあったかもしれない話であり、世界の政治の動向にも関わりのある事件なのです。
すなわち、アルジェリアの独立をめぐるフランスの植民地の叛乱で、その時代のド・ゴール大統領の暗殺計画が次々に行なわれ、いずれも失敗に終わった時、表面には出なかったが、もう一つこういう事件もあったという形で、えらくまことしやかに物語が繰り広げられるのです。
実際に、ド・ゴール大統領の暗殺未遂事件は、1961年以降、5回も起こっているのです。 フランスがアルジェリア戦争の泥沼にはまって、戦争継続かアルジェリアの独立承認かの決断を迫られた時、戦争の継続を望むフランスの軍部は、軍の長老でフランス解放の英雄であるド・ゴール将軍を強引に大統領に担ぎ出したのです。 ところが、老獪なド・ゴールは、軍部に担がれていると見せかけておきながら、着々と手を打ってアルジェリアの独立を承認してしまったのです。 軍部の極右派は、地下にもぐってテロ活動を続け、繰り返し、彼らを裏切ったド・ゴールの暗殺を計画したのだった。 一方、ド・ゴールは、生粋の軍人として、暗殺なんか怖くないと、高い鼻を益々高くしながら、護衛を付けるのも迷惑がって、公式の式典などでは恐れることなく、堂々と公衆の前に現われたのだった。 だから、護衛役の警察当局も、テンテコ舞いさせられたに違いありません。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-31
内容よりスタッフとびびる中村義洋監督のギスギス感が面白かった。このシリーズ観た後、後悔するけど、なんか観てしまうんです。次もまた観るんやろうな。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-31
続篇の話題沸騰中の今、第1作を見て見たいなあと感じた次第,剛力彩芽に高畑淳子
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-31
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信仰という形の逃避には、ついて行けない主人公の性格。友人が中毒性の強いメキシカン・ヘロインに手を出した時の怒りにも、その潔癖性がよく現われている気がします。
この主人公の青年を演じているのが、「普通の人々」で鮮烈な演技を示したティモシー・ハットン。
彼は、この映画の製作当時の1980年代半ばにおいて、アメリカ国内で最も純粋なアメリカ青年のイメージが浸透していた俳優で、彼がこの映画に起用された理由も、この理想主義の具現化のためであったように思います。
ジョン・シュレシンジャー監督がかつて撮った名作「真夜中のカーボーイ」も、そのテーマは、"アメリカン・ドリームとその挫折"で、燦さんと輝くフロリダの太陽を見ようと、死へと旅立った青年とそれを哀しげに優しく見守る青年----。
アメリカの建国のテーマは、ピュアな理想主義であったと思います。ところが、今それはもう、どこにもない----。
この青年の心情をわかろうとする者すらいないのではないか? そして、ラストの"This is not America"の唄声が、冷たく胸に残るのです。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-31
この映画「コードネームはファルコン」は、アメリカで現実に起きた実在の事件を、「真夜中のカーボーイ」「マラソンマン」のイギリス出身のジョン・シュレシンジャー監督の目を通して、再現した実録スパイ・サスペンス映画とも言える作品です。
スパイ映画と言っても「007」シリーズのような、スーパーヒーローが活躍する話ではありません。
この映画の主人公は、神学校をやめ、カレッジへ戻ろうと考えた青年で、元FBI局員の父の世話で防衛産業に就職します。
しかし、機密文書が往来する中、CIAの謀略で、とある小国に動乱が起き、リーダーの交代が行なわれているのを知ると、彼は理想主義、道徳観から衝動的に機密事項をソ連に売り渡そうとするのです。
受け渡しの使者となるのは、彼の幼馴染で麻薬の密売をしている親友----。
アメリカ全土を騒がせたこのスパイ事件を、青年たちとソ連との取引という、サスペンスの香りをまぶしながら、ジョン・シュレシンジャー監督は、究極はアメリカ、その理想主義の崩壊として冷静な視点で見つめていきます。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-31
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だが、残念なことにマイケル・リッチー監督の演出ぶりは、アクションの組み合わせがまずいので、強烈な迫力が盛り上がるところまでいかないんですね。
その後、畑へ逃げ込んだマーヴィンとシシーが巨大な麦刈機に追い回される趣向も二番煎じだが、ただその麦刈機の歯が、自動車を噛み砕き、部品を骨みたいに吐き出すユーモラスで凄味のある描写だけは良かったですね。
そして、ラストのマーヴィンが逆襲の殴り込みで、ハックマン一味を倒すクライマックスの描写には、もう少し速いテンポが欲しかったと思う。
さすがのハックマンも、相手がマーヴィンとなると、やはりその個性の強烈さで圧倒されていましたね。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-31
リー・マーヴィンとジーン・ハックマンという強烈な個性とカリスマ性を発揮する、重量級の二大オスカー俳優の激突が見ものの「ブラック・エース」。
カンザスシティのボス、メリー・アン(ジーン・ハックマン)は、敵対するシカゴの組織からやって来た殺し屋たちを、人肉ソーセージにして送り返していたというブラック・ユーモア的な趣向の映画だ。
もう歳で引退を考えていた、一匹狼の殺し屋ニック(リー・マーヴィン)は、シカゴの親分の要請で敵地へと乗り込むことに-------。
ここからは、凄まじい暴力サスペンス場面の連続となっていく。
ハックマンは凄い勢力の顔役で、豚の囲いに入れた裸の女たちの競売会を催したりする。
この異様なムードの会場に現われたマーヴィンは、貫禄にものをいわせて女の一人、シシー・スペイセクをもらいうける。
ハックマンはマーヴィンに一目おいており、味方にしたいと思っていたのだが、とても手なずけられないと悟るや撃滅作戦に転じ、農産物フェアで子分の殺し屋に狙わせる。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-31
かつて、テレビのニュースが伝えた湾岸戦争は、空を飛ぶミサイルを捉えても、そこにいた人々の顔は見えなかった。
この映画「ジャーヘッド」は、あの時、あの場所にいた、アメリカの海兵隊の若者の目線で見た、戦場の現実を描き出す。
原作は、アメリカでベストセラー小説となった「ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白」。
タイトルは、お湯を入れるジャーの形をした、ヘアスタイルから海兵隊員の事を指すということだ。
海兵隊に志願したアンソニー・スオフォード(ジェイク・ギレンホール)が主人公。
厳しい試練や新人いじめを乗り越えたが、配属先のサイクス三等曹長(ジェイミー・フォックス)の訓練も過酷だった。
プレッシャーに耐えかねた、仲間の死亡事故まで起きてしまう。
そして、ようやくスオフォードらの隊は、サウジアラビアへと派遣されることになる。
しかし、狙撃兵として現地入りしたものの、当面の任務は油田の警備。 若い兵士らの士気は上がっているのに、目に見える敵のいない毎日は、待つ事が仕事なのだ。 兵士同士で、恋人から人生についてまで語り合うが、スオフォードの退屈で孤独な気持ちは強くなるばかり。 気持ちははやるが、やることがなく鬱屈していく若者の姿は、戦場特有のものというより、どこか普遍的だ。 手に汗握る銃撃戦のないスオフォードの戦争は、燃え上がる油田の幻想的な光景で最高潮を迎える。 恐怖と退屈、そして絶望的に変わらない日々。 画面の中では誰もが見たことのなかった戦争の風景を、サム・メンデス監督がくっきりと浮かび上がらせている。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-31
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「アウトランド」の舞台は、未来の宇宙、木星の第3惑星イオですが、物語の設定はかの有名なフレッド・ジンネマン監督、ゲイリー・クーパー主演の西部劇の名作「真昼の決闘」と同じです。
また、イオの基地内のセットや小道具などの美術は、これもかの有名なリドリー・スコット監督のSF映画の傑作「エイリアン」にそっくりで、「真昼の決闘+エイリアン÷2」というようなイメージに仕上がっています。
西部劇もSF映画も大好きな私としては、ストーリーや美術云々で文句を言う前に、その映像の魔力にすっかり魅了されてしまいました。
主演も大好きなショーン・コネリーですし、これまた監督も大好きなピーター・ハイアムズですし。
イオのチタニウム鉱山街に、保安官として赴任して来たビル・オニール(ショーン・コネリー)は、赴任して2週間で、妻のキャロルに「もうこんな暮らしはイヤ。息子と地球で暮らしたい」と出て行かれてしまいます。
それでもオニールは、任務を全うしなければとイオに留まることになり、炭鉱夫の事故が続くのを不審に思い、遺骸から血液を採取して、医者に分析してもらいます。 分析結果は、限りなく怪しいもので、オニールは正義のために立ち上がることを決意するのですが------。 「エイリアン」と同じような、金儲け第一主義の会社というのが出てきます。目的のためには手段を選ばないという、非常に悪質な経営者です。 鉱山街の管理人であるシェパード(ピーター・ボイル)は、会社の忠実な部下で、なんでも言いなりであるうえ、オニールが邪魔になって、ある恐るべきことを会社に依頼するのです。 まあ、設定が「真昼の決闘」だということは、ネタバレしているのも同然なんですけどね。孤立無援になるところや、時計が頻繁に出てくるところは、本当に「真昼の決闘」そのままです。
オニールを助けてくれるのは、医者のラザルス先生だけです。かなり年配の女性医師で、口も悪いしそっけない態度なのですが、最後は命懸けでオニールを助けてくれるので、もう拍手喝采するしかありません。 「エイリアン」の真似だとは言え、お金をかけてしっかり作ってあるセットは素晴らしく、ラスト近くの山場でのアクションシーンもなかなかのものです。 「真昼の決闘」と「エイリアン」の好きな人にはお奨めのSFアクション映画ですね。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-31
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このスウェーデン映画「刑事マルティン・ベック」は、原作がマイ・シューヴァルとペール・ヴァールーの夫婦合作のマルティン・ベックシリーズの1作で、日本でも私のような推理小説ファンの間で圧倒的な支持を受けている、この警察小説シリーズ7作目の「唾棄すべき男」であり、「みじかくも美しく燃え」「サッカー小僧」のボー・ヴィデルベルイ監督が映画化した作品ですね。
ストックホルムのある病院で、深夜、入院中のニーマンという警部が銃剣で惨殺される冒頭の場面は、犯人の顔を見せないミステリー・ムード漂う描写が背筋も凍るほどの不気味な効果を上げていて、実に素晴らしい。
被害者のニーマンは、古顔の警部で、法規一点張りの情け容赦のない鬼警官だった。
ボー・ヴィデルベルイは監督だけでなく、編集と衣裳も担当し、脚本も自分で書いているが、原作にほぼ忠実で、映像化も律儀にやっていると思う。
その律儀なところが、部分部分ではいい味を出しているが、サスペンス映画としては、もの足りないものにしている。
マルティン・ベックに扮するのは、カルル・グスタフ・リンドステットという太り気味の初老の俳優で、とにかく渋くて風采のあがらない生活派で、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「モンパルナスの夜」でメグレ警視を演じた名優だ。 そのマルティン・ベックが、中年の刑事ホーカン・セルネル扮するエイナル・ルンと共に、殺されたニーマン警部の夫人を初め、いろいろな人物から聞き込みをして、犯人がニーマン警部に対する恨みを警察全体に広げた奴であることを突き止める経過は、アメリカ映画のポリス・アクションものと違って、非常に地味なタッチで描かれていて、どうも抑揚というか、メリハリがなくなって、少々退屈してしまう。 そして、犯人がビルの屋上に陣どり、高性能のライフルで地上の警官を射殺し始めたので、大騒ぎになるというクライマックスは、ストックホルム市街の俯瞰撮影が美しく、逃げ惑う市民などがパニック状態になっていく段取りも悪くないのだが、しかし、マルティン・ベックたちが犯人のいる屋上へ向かう冒険アクションになると、どうも手際がよくない。
この場面では、マルティン・ベックが屋根に上がるのに失敗するので、スヴェン・ヴォルテル扮する若いコルベリ刑事や、トーマス・ヘルベルク扮するラーソン刑事の活躍になるのだが、もっと派手にやっても良かったと思う。 犯人に撃たれて、ヘリコプターが群衆の中に落ちるシーンなどは、アメリカ映画ならアッと言わせるところだが、どうも今一、盛り上がりに欠けるのだ。 そして、ラストまで犯人の顔を、よく見せない撮り方も、そんな必要があるのかと思わせる。 この撮り方のために、サスペンスがだいぶ薄れていると思う。 天窓のガラスが割れて、屋根裏部屋の老人と顔が合うところなど、犯人の性格を表わす絶好のシーンになるはずなのに、活用していない。 ケレンを嫌って、地味に作ろうとしたのかも知れないが、派手な銃撃戦になるのは原作の設定通りなのだから、ここで技巧の限りを尽くして、前半の退屈を忘れさせてもらいたかった。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-31
荒廃した森の中を、マスクを付けて彷徨う、奇妙な服を着た人々。
そんなシーンで始まるSF映画の撮影が行われている。
ところが途中で、資金とフィルムが途絶えてしまう------。
ヴィム・ヴェンダース監督が、アメリカで「ハメット」を撮った時の、製作者フランシス・フォード・コッポラとの対立を踏まえた、映画製作にまつわる心情告白とも言える映画だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-31
この映画「ビリディアナ」は、数々の世俗的な試練を与えて、若き尼僧ビリディアナを堕落させるわ、最後の晩餐をパロディ化した、乞食の大饗宴に「ハレルヤ」を流すわ、さらには、キリストの磔刑をかたどったナイフも見せるわと、脚本やプリントが検閲されようとも、時のスペイン=フランコ政権や教会を悶絶させた、稀代のスキャンダリスト、ルイス・ブニュエル監督の面目躍如となった作品だ。
それと同時に、その映画的純度のあまりの高さにも脱帽だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-31
「007 ドクター・ノオ」で初登場した英国諜報部員、ジェームズ・ボンドが活躍する、シリーズ2作目の作品にして、シリーズの最高傑作だ。
当初、「007/危機一発」で封切られ、後に原題通りの「007/ロシアより愛をこめて」に改題された。
シリーズのスタイルは、この作品で確立され、静から動へと転じる、たたみかけるような演出スタイルは、あらゆる活劇映画のお手本になっていると思う。
なかでも、オリエント急行内でのショーン・コネリーとロバート・ショーの対決シーンは、映画史上に残る名場面だと思う。
そして、マット・モンローが歌う、甘く切ないテーマ曲も絶品だ。