- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「地中海殺人事件」は、アガサ・クリスティ原作の「白昼の悪魔」の映画化ですが、「オリエント急行殺人事件」ほどの超豪華キャストとシドニー・ルメット監督による演出のうまさもなく、「ナイル殺人事件」のような風俗的な華やかさと壮大な景観の魅力も、あまり感じられない作品だったと思います。
燦さんたる陽光降りそそぐ、地中海に浮かぶ美しい孤島のリゾート・ホテルで、謎の殺人事件が起こる。
殺されたのは美貌の持ち主だが、傲慢なミュージカル・スター。そして、この孤島を訪れていた、お馴染みの名探偵エルキュール・ポワロの推理が始まるのです。
ここに滞在している様々な人物は、それぞれみんな意味ありげな過去を持ち、殺しの動機もあるのです。
その一方で、それぞれにアリバイもあるのです。
この孤島は外部と広い海でさえぎられ、まさに一つの密室なのです。
これはもう典型的なクリスティの謎解きの展開なのです。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
一応、舞台が近未来なので、衣装も未来仕様だが、今見るとシルク・ドゥ・ソレイユっぽいサーカス風で、派手過ぎて滑稽なくらいだ。
こういう描写が長いので正直、観ていて疲れるのだが、羊飼いがひょんなことから金属の箱を開ける方法を見つけたあたりから、そういう疲れが吹き飛ぶような展開が待っている。
とりわけ、原発事故が継続中の今の日本では、この展開はあまりにも怖すぎる。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
二人のパイロットは、当局と連絡を取ろうと右往左往。
違うルートで墜落の情報を得た当局の連中は、ホテル業者を装って島に乗り込み、開発という触れ込みで島の一部を買い取り、爆弾と金属の箱探し。
どうにか2基の爆弾は回収出来たが、最もヤバイ金属の箱がどうしても見つからないのだ。
その箱は、貧乏な羊飼いの夫婦がこの箱を発見し、お宝に違いないと思い、こっそりと家に持ち帰り、開けようとしていたのだ。
真っ赤に日焼けし、パンツ一枚の姿でお腹を空かして、うろうろする二人のパイロット。
ド派手なリゾートファッションに身を包み、その状況をエンジョイするホテル業者に化けた兵士たち。
そんな彼らの出現に、島の未来を確信して浮かれまくる村人たち。
新しいリゾート地登場という情報を得て、徒党を組んで詰めかける観光客。
そんな様子が、過剰過ぎるほどデフォルメされたマイケル・カコヤニス監督の演出で描かれる。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「魚が出てきた日」は、「その男ゾルバ」「エレクトラ」等で知られるギリシャ出身のマイケル・カコヤニス監督の問題作だ。
この映画の冒頭、スペインのフラメンコダンサーが登場して「原爆が落ちるのはスペインだけとは限らない」みたいな歌を唄う。
そして、舞台はギリシャの貧しい島に移り、その上空で爆撃機がトラブルを起こし、トム・コートネイとコリン・ブレイクリーのパイロットは、積荷の核爆弾2基、高濃度の放射性物質を閉じ込めた金属製の箱をパラシュートで落下させ、自分たちもその後を追って飛び降りる。
この件は、1966年1月17日、スペインのパロマレスという村の上空で、4基の核爆弾を搭載した米軍のB-52が事故を起こしたが、爆弾はパラシュートで落とした為、事無きを得たという事件が、実際に発生していたのだ。
この1年後に、その事件をいち早く頂戴して、近未来を舞台にSFブラックコメディに仕立てたのがこの「魚が出てきた日」なのだ。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
かつて彼女が出演した「ジョンとメリー」で彼女の相手役をしたダスティン・ホフマンもこういう表情がぴったりだったが、この映画でのトポルは、その点、申し分のない人の好さそうなところを、実に自然に見せてくれる。
トポルが、無言のまま、ゼスチャーでミア・ファローをロンドン中を案内する、お伽噺のような味わいのあるシークエンスが、その意味で、観ていて、実にいい気持ちになるんですね。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
このように、ストーリーそのものは、古風なお茶の間喜劇程度の材料で、特別新鮮味があるとも思えない。
1930年代、1940年代の風俗喜劇じゃないかとさえ思えてきます。
ただ、それが、花嫁にミア・ファローを配すると、ぐっと新鮮になって現代の空気感に満たされてくるし、探偵に「屋根の上のバイオリン弾き」で主役のテビエを演じたトポルを配すると、これがうまいのなんの、古いとか新しいとかいうことを抜きにして、心が和み、実に爽やかな気分にさせられてしまうんですね。
ミア・ファローは、何かあどけない子供のまま大人になったような女優で、バッチリとその大きな瞳を、いつも何かおねだりするような眼差しにしている。
相手役はそこで、きっとイイ子だね、何をあげようか? という顔をすることになるんですね。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「フォロー・ミー」は、「第三の男」や「オリバー!」などの名匠キャロル・リード監督が、ピーター・シェーファーのひと幕ものの舞台劇を映画化した作品で、テーマ曲も大ヒットし、ロンドンの穴場的なスポットを回るロケーションも楽しい、ロマンティックな恋愛劇の佳作です。
映画自体は小粒ですが、さすがにキャロル・リード監督の素晴らしさを堪能できる作品だと思う。
権威主義に凝り固まっているイギリスの上流階級の青年が、野育ちであまり教養もないアメリカ娘をお嫁さんに貰ったのはいいが、花嫁はこの固苦しいばかりで退屈な上流社会の生活が気づまりで、毎日外出してぼんやりとロンドンの街中を歩き回る。
夫はてっきり、妻が浮気をしているのだと思って探偵をつける。
するとこの探偵が尾行しながら、すっかり彼女を愛してしまう。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
ロイ・シャイダー扮するアメリカの科学者たちが、ソ連の宇宙船に同乗し、謎の解明のために木星へと向かう。
前作のあまりにも壮大なスペクタクルと興奮に対決するには、ピーター・ハイアムズ監督としては、この手でいくしか方法がなかったのだろうと思う。
しかし、米ソの関係悪化が、宇宙船の乗組員にまで影響を及ぼし、石板の異変が起きるあたりは、作者のテーマと思想が露出して、我々の前作に対するイメージまで、否定してしまう不満もある。
しかし、「スターウォーズ/帝国の逆襲」や「レイダース」でアカデミー特殊効果賞を受賞したスタッフによる特撮は、実に見事だ。
宇宙船のドッキングや、木星を覆う石板のスペクタクルにも目を見張らされる。
まあ、前作との比較はさておいて、この作品はこの作品なりに、ドラマチックな宇宙サスペンスとして楽しめばいい娯楽作品なのだ。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-13
我々映画ファンを魅了したSF映画の傑作「2001年宇宙の旅」の続篇が、この映画「2010年」だ。
厳密に言えば、続篇というより解決篇だろう。
スタンリー・キューブリック監督による前作は、物語性を極度に排し、素晴らしい映像のシンフォニーで、独自の宇宙哲学を伝えたものだった。
何より、真理の判断を観る者自身のイマジネーションに委ねたところが、我々の興味を嫌が上にもかき立てたのだ。
それに対して、この娯楽職人監督のピーター・ハイアムズが撮ったこの作品は、よりわかりやすく、全ての謎を具体的に解いてみせる。
胎児となって宇宙へ消えた乗組員は?
叛乱を起こしたコンピュータは?
地球や月にあった石板の謎は? ----------。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
観ている者は、いつの間にか、これが現実の再現のように思えてしまうのだ。
だからこそ、引き揚げの瞬間と、ニューヨークの帰りのシーンは、強烈な現実感で感動してしまうのだ。
そして、この映画はこの後、”もう一つの謎の解明”を見せるのだが、夢を追う人間の心理を見事に読み取って、”虚構のスペクタクル”に現実的な感動を与えたジェリー・ジェームソン監督は、なかなかの切れ者だと思う。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
この「レイズ・ザ・タイタニック」と言う作品は、その”夢”に挑戦した映画なのだ。
当時、現実にタイタニック号の引き揚げの計画が話題になり、製作の進行と重なったのは偶然のようだが、アメリカやイギリスの人たちにとっては、いかに大きな”夢”であったのかがよくわかる。
それだけに、この映画のポイントは、タイタニック号浮上の瞬間と、再びニューヨーク港に入るシーンだ。
リシャの客船アテナイ号を改造して使用したのだそうだが、特撮とロケを合わせたその成果は、やはり息をのむスペクタクルだ。
それは、特撮のうまさという以上に、実は映画の作り方自体に巧みなトリックが絡んでいるからだと思う。
映画は北極海のソ連領からワシントンの政治の極点を結ぶドラマ・ラインを、あたかもニュース・ドキュメンタリーのように冷たく抑えて撮っていくのだ。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-13
この映画「レイズ・ザ・タイタニック」は、異色のスペクタクル映画の傑作だ。
人間というものは、常に”夢と冒険”を追い求める存在だと思う。
かつてのタイタニック号引き揚げのニュースなどは、そんな夢を追う人間の挑戦の一つでもあるのだ。
このタイタニック号と言えば、1912年4月14日、処女航海で氷山とぶつかり、北大西洋の底に沈んでしまった超豪華客船で、その存在自体がまことにドラマチックである上に、この船には様々な人々が乗り合わせていて、人の世の定めを思わせるところから、それまでにも数多くの小説や映画の素材になって来たのは、衆知の事実だ。
だが、沈んでいくタイタニック号を描いた映画は多くても、再び浮上する姿を描いた映画はなかったと思う。
人々の夢であるだけに、映像化が難しかったのだろうし、CGの発達していなかった当時としては、巨体が浮き上がる瞬間の撮影が出来なかったからだと思う。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
誰しもが心の中に抱いている、正義と勇気と愛という理想の”夢”は、今のような時代だからこそ、余計に膨らむもの。
現代における、人間性の回復を描きつづけて来た、ジョン・ブアマン監督は、そんな現代の若者の姿をこそ、中世伝説の中で、描こうとしたに違いないのだ。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
美しいドレスを着て、高価な宝石を身に纏っているのではない。
布なのか革なのかわからない、つづれを纏い、自然の中を生き生きと闘い抜いていくのだ。
まるでヒッピーみたいな衣装。荘重、荘厳なムードよりも、テンポの速い、現代の若者たちが飛び跳ねている感じなのだ。
あの「スター・ウォーズ」が、宇宙の世界に現代のヤンチャ坊主どもを放り出して、暴れさせたのと同じ感覚なのだ。
それでいて、画面は実に美しいのだ。決して極彩色ではない。
いつか夢に見たことがある、遠い遠い憧れの見知らぬ国に来ているような気持ち。
あの誰もが経験する、夢の中のような、単色のベールがかかって、それが一種、夢幻の美しさを創り上げている。
夢幻の武者模様の美しさは、黒澤明監督の「影武者」の影響も大きいと思う。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-13
の映画「エクスカリバー」は、ひとくちで言うと、アーサー王と円卓の騎士の物語だ。
英語圏の人々なら、知らぬ人とてない、中世のイギリスの英雄。
それまでも、アメリカ映画が何度も映画化してきた題材だが、この映画ではガラリと様子が違う。
父が岩にはめこんだ、宝剣エクスカリバーを抜いて、見事、王座についたアーサー王。
王妃グエナビアと共に、イギリスに正義の王国を作ろうとするのだが、裏切りと復讐の中で、滅ぼされてしまう。
王をめぐる円卓の騎士たちは、正義の再現の為、隠された聖杯探しに、放浪の旅を続けるのだ。
戦闘、魔術、勇気、愛----------。
あの有名な騎士ランスロットと王妃グエナビアの道ならぬ恋も織り込まれていて、興味が尽きない。
設定は同じでも、それまでのアーサー王伝説の映画化とはっきり違うのは、王妃も騎士も、完全に現代人なのだ。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
「夜の大捜査線」「帰郷」の名カメラマン、ハスケル・ウェクスラーの臨場感溢れる厳しい映像に助けられながらも、デニス・ホッパー監督の演出がもう少し、うまく内容を整理して描いていたなら、もっと上質な作品になっていたのではないかと思います。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
初めは反発しながらも、次第に心を開いていくマクガバン。
その二人の交流が、チンピラたちとの銃撃戦と交差して描かれていきます。
この映画の原題の「Colors カラーズ」というのは、チンピラたちの”組織”の事ですが、彼らの肌の色も指しているのは明らかです。黒人、メキシコ系、白人、みんな、それぞれ社会の中で組織を作っているではないか。
カラーっていったい何なんだ? --------。
若手警官のマクガバンはユダヤ系、ベテラン警官のホッジスはイタリア系。
アメリカ自体が組織分けされた国じゃないか!----と、デニス・ホッパー監督は、そう語っているように感じられます。
そして、この映画のラスト。ベテランの警官が死に、若手の警官が次の新人と組む事になります。
かつて自分が教えられた通りの実体験教育をするあたりの、ありきたりですが、いい幕切れになっているなと思います。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-06-13
”ロサンゼルス市警の警官コンビとストリート・ギャングたちとの攻防を乾いたタッチで描いた 「カラーズ 天使の消えた街」”
この映画「カラーズ 天使の消えた街」は、ロサンゼルス市警のギャング犯罪取り締まりチームの”CRASH”に所属する制服警察官コンビとストリー・ギャングたちとの抗争を徹底して乾いたタッチで描いた、「イージー・ライダー」でアメリカン・ニューシネマの伝説的なカリスマになった、デニス・ホッパー監督が撮ったハード・アクション・ムービーです。
当時、約7万人のストリート・ギャングがいたと言われていた街、ロサンゼルス。
それも大きな組織ではなく、チンピラ・グループで、麻薬を求める金欲しさの犯罪、縄張り争い。
それが善良な一般市民をどんどん恐怖の犯罪に巻き込んでいくのです。
対するロサンゼルス市警察官。この映画で活躍するのは、”CRASH”に所属する制服警察官で、制服の威信を信じ捜査に突っ走る若手警官マクガバン(ショーン・ペン)と、定年を一年後に控えたベテラン警官ホッジス(ロバート・デュヴァル)が、続発するギャング犯罪に向けてコンビを組まされます。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
この「網走番外地」で主人公の橘真一は、しばしば「俺は馬鹿だ」と自嘲的に言いますがしかし、馬鹿と知りつつ、人間には、男には、やらねばならぬ事がある、やらねばならぬ時がある、というのが、高倉健映画の根本的なテーマでもあるのです。
橘真一というキャラクターの造形から表現された”日陰者のパトス”で、多くの大衆を魅了した、この高倉健という稀代の俳優が、後に国民的な大スターになる地位を築いたのは当然の事だと思います。
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-13
当時の日本映画界において、例えば、日活の石原裕次郎が上流階級、小林旭が中流階級といった雰囲気を醸し出していたのに対して、高倉健は最下層のどん底の境遇に育った主人公を演じる事によって、この大ブレイクのきっかけを掴んだのです。
北海道の雪原が大自然の猛威を奮う零下30度の過酷な風景や、新宿の歌舞伎町を足早に急ぐ高倉健を、ゲリラ撮影で追跡した夜の新宿の生々しいビジュアル感----。
そして、甘い声の石原裕次郎、甲高い声の小林旭になくて、高倉健の特徴としてあったもの、それがドスの効いた低い声で、それが、彼の演技においても、映画が最も盛り上がる最後の正念場において、腹の底から押し殺した低い声で発する”極め台詞”が、それまでのストイックで寡黙な主人公の最高の武器になるのだと思います。