動乱 作品情報

どうらん

第一部「海峡を渡る愛」昭和七年四月、仙台連隊。宮城啓介大尉が隊長をつとめる中隊の初年兵、溝口が脱走した。姉の薫が貧しさから千円で芸者に売られようとしていたからだ。溝口は捜索隊の上司を殺してしまい、宮城は弁護を申し出るが聞き入れられず、溝口は銃殺刑に処せられた。宮城は父に用立ててもらった千円を香典として渡す。当時、日本は厳しい経済恐慌に包まれ、これを改革すべく、一部の海軍将校と陸軍士官候補生らが決起した。五・一五事件である。クーデターは失敗に終り、陸軍内部の皇道派と統制派の対立を激化させた。この影響は仙台にいる宮城にまで及び、部下から脱走兵を出した責任で朝鮮の国境守備隊へ転任を命じられる。そこは、朝鮮ゲリラへ軍需物資の横流しが平然と行なわれる腐敗したところだ。官城は将校をねぎらう宴に招待され、そこで芸者になった薫と再会する。薫を責める宮城。数日後、薫が自殺を図った。宮城は軍の不正を不問にすることで、薬を入手し薫の命を救う。その頃、国内では統制派によって戦争準備が押し進められていた。第二部「雪降り止まず」昭和十年十月、東京。宮城は第一連隊に配属になり、薫と共に居をかまえた。しかし、二人の間にはまだ男と女の関係はなかった。官城の家には多くの青年将校が訪れ、“建設か破壊か”と熱っぽく語り合っていく。憲兵隊の島謙太郎はそんな宮城家の向いに往みこんで、四六時中、見張りを続けていた。ある日、宮城は恩師であり皇道派の長老格でもある神崎中佐を薫と伴に訪れた。神崎の家庭の幸せを見て、薫は「私の体は汚れているから抱けないんですか」と宮城につめよる。数日後、宮城が決行を決意していた軍務局長暗殺を神崎が単身で陸軍省におもむき果してしまった。この事件は青年将校たちに“時、来る”の感を持たせ、昭和維新への機運いっきに高まった。官城たちの行動に、心情的には同調しながらも、憲兵という職務から事を事前にふせごうと島は苦悩する。決行の日が決まり、宮城は実家に帰り父に薫のことを頼むと、はじめて彼女を抱くのだった。決行の日が来た。時に昭和十一年二月二十五日。夜半から降りはじめた雪は、男たちの熱い思いと、女たちの哀しい宿命をつつみこんで、止むことなく降り続いていた……。

「動乱」の解説

昭和史の起点となった五・一五事件から二・二六事件までの風雲急を告げる時を背景に、寡黙な青年将校とその妻の愛を描いたもので第一部「海峡を渡る愛」、第二部「雪降り止まず」の二部構成になっている。脚本は「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」の山田信夫、監督は「聖職の碑」の森谷司郎、撮影は「天使の欲望」の仲沢半次郎がそれぞれ担当。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1980年1月15日
キャスト 監督森谷司郎
出演高倉健 吉永小百合 米倉斉加年 田村高廣 志村喬 永島敏行 久米明 にしきのあきら 桜田淳子 新田昌玄 吉村佳紘 中田博久 柏木隆太 辻萬長 和田周 神有介 滝川潤 岡幸次郎 森田秀 石原昭宏 斉藤真 森祐介 佐藤慶 天津敏 金田龍之介 小堀阿吉雄 戸浦六宏 森下哲夫 小林稔侍 田中邦衛 小池朝雄 橋本成治 青木卓 福田勝洋 安達義也 大蔵晶 町田政則 赤石富和 織田あきら 近藤宏 岸田森 左とん平 遠藤征慈 団巌 宮崎靖男 佐野美智子 三重街恒二 阿藤海 清水照夫 高月忠 沢田浩二 青木茂 山田茂 村添豊徳 大島博樹 名和宏 日色ともゑ 稲葉裕之 亀山達也 中屋敷鉄也 庄司喬 黒部進 安永憲司 宮地謙吾 高野晃大 瀬良明 木村修 野口元夫 山本武 稲川善一 金子正治 田中浩 浜田晃 川津祐介 相馬剛三 佐川二郎 高野高志 佐藤慶
配給 東映
制作国 日本(1980)
上映時間 150分

ユーザーレビュー

総合評価:4点★★★★、4件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-07-13

「動乱」は、暗い時代のストイックな愛を高倉健、吉永小百合の共演で描いた男女の愛の物語ですね。

この東映映画「動乱」は、製作者が岡田裕介、監督が「八甲田山」「聖職の碑」の森谷司郎で、脚本が「華麗なる一族」「不毛地帯」の山田信夫のオリジナル作品となっています。

現代にもつながる昭和動乱の起点となった、昭和7年の五・一五事件から二・二六事件までの暗い時代を背景に、それに巻き込まれていく男と女の禁欲的な情熱を描いています。

宮城大尉(高倉健)は、脱走し銃殺された貧農の初年兵の姉の薫(吉永小百合)が、娼婦に身を落としている状況の中、鮮満国境で再会します。

最終更新日:2024-07-23 16:00:02

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