我が友・原子力 放射能の世紀 作品情報

わがともげんしりょくほうしゃのうのせいき

ヒバクシャ、被ばく、被爆、被曝、……福島原発以後の日本ほどこの言葉が大量に発語されている国はないだろう。一方でレントゲン撮影やCTスキャンのたびに被ばくしていることにはさほどさほど関心を向けない。被ばくするとはどういうことなのか。恐怖なのか、必要悪なのか、そもそも被ばくするとは誰かの過ちで引き起こされる事象なのだろうか。私たちの想像力は希薄と言わざるをえない。重複するガン、脱毛症、白血球の減少、流産、先天性奇形、……。放射線被ばくの危険性は避けられない。原子の属性であり、その危険を回避するには放射線源から遠ざかることだけである。この1世紀にわたる被ばく者の数、そして否認と虚偽の数々はどれだけあるだろうか。私たちは科学的知見の意図的分散化と大量な情報の断片化の前で、判定する意思を削がれているのではないだろうか。犠牲者は被ばくがもとで病を発症したと信じている。だがその因果関係が医学的に証明されたことはない。状況証拠あるのみである。そこで被ばくの人体影響メカニズムを図解することは基礎情報として欠かせないと考えている。その上で被ばく環境はどのように発生するのか。社会的、時に政治的与件を掘り起こしながら考える。福島第一原発事故でトモダチ作戦に従事した米空母乗組員が証言する「第1章・放射能雲の中の米軍兵士」。1954年の第五福竜丸以外にも多くのマグロ船が被ばくした事実が隠された理由を当時の日米関係に探る「第2章・死の灰の中の日本漁船」。時計の蛍光塗料としてのラジウムの使用によりガンなどの健康被害が多発した女性工場労働者に迫る「第3章・ラジウムガールズ」。被爆後の広島と長崎で生き延びた人々が放射線研究のためモルモットにされ、そして以後の核実験では米軍兵士がモルモットにされた「第4章・被ばくと沈黙」。歴史から抹殺される危機感から立ち上がったビキニ被災者の闘いを映す「第5章・怒りの訴訟」。これら全5章で労働被ばく、広島・長崎の被ばく者、ロナルド・レーガンの兵士、ビキニの漁船員たちの言葉を紡ぎ、被ばくの被害にあった犠牲者の目線でその歴史を辿るとともに、被ばくが起きた事実とその社会的・政治的背景を描き、被ばくを隠蔽するメカニズムの由来を探る。

「我が友・原子力 放射能の世紀」の解説

「国家主義の誘惑」などを手がけたフランス在住の渡辺謙一監督が、戦後平和利用と被ばく被害の狭間で揺れてきた原子力の歴史を、被ばくの犠牲者の目線から描いたドキュメンタリー。記録映像や被ばく者のインタビューなど5章に分けて、核とは何か問いかける。タイトルは、1950年代に原子力の平和利用を唱えた米アイゼンハワー大統領政権期のディズニー映画「Our Friend The Atom(わが友原子力)」に由来している。2020年10月17日高知での上映会を皮切りに巡回上映。2020年12月、東京ドキュメンタリー映画祭2020にて上映。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督渡辺謙一
配給 インプレオ
制作国 フランス=アメリカ=日本(2020)
上映時間 57分
公式サイト https://wagatomo-genshiryoku.com/

(C)ARTE France/KAMI Production

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最終更新日:2022-07-26 11:03:18

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