わが青春のフロレンス 作品情報

わがせいしゅんのふろれんす

一八八〇年、監獄から一人の男が出て来た。灰色の壁に寄り添って一人待っていた女が近づいて来る。女は赤ん坊を抱えていた。「生まれたか……名前は?」「メテロ……」。そしてその夜、生活の疲れと出産の疲れが重なったメテロの母は死んだ。数日後、砂取り作業員で革命家だった父もアルノ河の氾濫で濁流に呑まれて死んでしまう。メテロは田舎に預けられて育ったが、十七歳の時、世の不景気のため移往する一家を離れて両親が住んでいたフロレンスに戻る決心をした。父の古い友人でアナキストのベット(F・ウォルフ)は煉瓦工の仕事を捜してくれた。彼の下宿で世話をうけながら、メテロは熱烈な社会の完全変革をめざす思想を彼から教えられる。しかし、或る日、彼は酔って姿を消した。捜しに出たメテロは監獄に行ってみるが、“ベット”という名を喋っただけでブチ込まれる。牢獄には政治犯もいた。「マルクスを知っているか?社会主義の方が現実的だ、君の親父を知っている、立派な男だったぞ」メテロの体の血は熱くなった。初めて階級を意識したのだ。未成年で無実だったからすぐに釈放されたがもう、かつての少年メテロではなかった--。煉瓦職人に戻った彼は、或る日、仕事場の隣にある家の庭仕事を頼まれ、未亡人ビオラ(L・ボゼー)に誘惑される。彼の恋情は真剣だった。しかし、彼には兵役が待っていた。一〇九五日の兵役は彼の肉体を逞しいものに変えた。だが、階級のために闘う思想も鍛えあげられていった。そしてフロレンスに帰ったメテロは以前の会社に戻り社会主義労働者グループに入った。久し振りに会ったビオラはちっとも変わっていなかったが、結婚していた。子供までいた。貴方の子かも知れないと彼女は言った。しかし、もうビオラは自由の身ではなかった。メテロ達の働く現場で人員整理のゴタゴタが起き、その騒ぎの最中、一人の男が誤って腐った梯子から落ちる。「娘を呼んでくれ。死んだら組合の旗と一緒に弔ってくれ」と言って死んだ。その男の葬式の日メテロはエルシリア(O・ピッコロ)と会った。世話になった父の礼を言う清楚な姿はメテロの心に刻まれる。組合の赤旗で護られた葬列は官憲の不当弾圧で蹴散らされ、抵抗したメテロと同志達は投獄された。翌日、牢獄の外から各々の身内の者が声をかけて来た。その中で「サラニ・メテロ、エルシリアです。感謝しています」彼は鉄格子にしがみついて答えた。「結婚するぞ!エルシリア!手紙をくれ」一年以上の刑が宣告されたが周りは自分の主義のために闘っている同志達ばかりだった。「手紙をくれと言ったので書きました。よく留置所にいた父にも書いたものです」メテロはエルシリアの手紙を貧り読んだ。彼女の父も闘士でありよく投獄され、彼女は造花の内職で生計を助けていた。まだ愛した経験がないから、同情なのか愛情なのか分らないというエルシリアだったが、メテロが出獄すると二人は結婚し、子供も出来た。組合運動が活発化し、メテロは集会のリーダー格となった。最低貸金を要求する運動はフロレンス市中に拡がり、遂にストライキが宣言され二〇世紀初頭の伝説的争議となった。この頃から機械が導入され労働者の危機感が高まったのだ。メテロ達の職場もストに突入した。集会のない日、公園をブラつくメテロはアパートの隣に住む人妻イディナ(T・オーモン)に声をかけられる。典型的な有閑夫人で日頃からメテロに気のあるそぶりを示し、労働者の妻のエルシリアにはない魅惑的な眼差しを持っていた。そして、妻の留守中二人は過ちを犯してしまう。帰宅したエルシリアがその逢瀬を目撃したのには気付かない。煉瓦工のストは四十日以上に渡って続けられ、スト基金は底をつき、職場復帰する者は厚遇するという資本家側の奸策に日和り始める者が出て来る。メテロは屈伏しないと頑張った。一方エルシリアは外で夫と密会を続けるイディナを待伏せ、部屋に連れ込んでいきなり力いっぱい平手打ちを喰わせる。夫に手を出さないで!!遂に対決の時が来た。資本家側にシッポをふった連中が、ストを破って仕事にかかるというのだ。仕事場に駆けつけたメテロ達の前には軍隊の銃口が待ちうけ、資本家と裏切り者がその後にいた。「皆裏切りはやめろ!募金が着く頃だ」「鐘を鳴らせ仕事だ」と近づいて来た社長は言った。「初めて雇ってやった時はまだ子供だったが……」メテロは答えた「私の父の頃は労働者が弱すぎたから搾取は簡単だった。だが今は違う!」乱闘になり、軍隊が発砲した。その時資本家側が労働者の要求に折れスト中止の指令が入った。労働者が初めて自らの血と汗で勝利の第一歩を得たのだ。騒乱罪でやがて逮捕の手がのびる事を知ったメテロは妻の許へ別れを告げにいく。エルシリアは夫の闘いと共に呼吸し、黙して理解する事を知っている労働者の妻だった。メテロはその豊かな女らしさに烈しい愛を確認する。六ヵ月の拘留後、外には息子の手を引き、身重の姿の妻が待っていた。彼が捕っている間、誰かが金を届けてくれたと妻がいった。「女の子が生まれたらビオラと名を付けよう」「……もうこの中へは絶対入らない、誓うよ」「いいわよ、父の誓いと同じだわ」。エルシリアはメテロを見つめ、息子の肩を抱きしめながら呟いた。

「わが青春のフロレンス」の解説

二十世紀初頭、芸術の都から工業都市へ変わりつつあるフロレンス(フィレンツェ)を舞台に労働者として階級意識に目覚め、激動の青春を生きる若者と彼が愛した女達を描く。製作はジャンニ・ヘクト・ルカリ、監督は「堕落」「彼女と彼」のマウロ・ボロニーニ、「家族日誌」等のヴァスコ・プラトリーニの三部作「イタリア史」の第一部にあたる原作をボロニーニとルイジ・バッツォーニ、スーゾ・チェッキ・ダミーコが脚色、撮影は「王女メディア」のエンニオ・グァルニエリ、音楽は「ケマダの戦い」のエンニオ・モリコーネ、音楽指揮は「裸と猟奇の世界」のブルーノ・ニコライ、セットをグイド・ジョシアが各各担当。出演は新人のマッシモ・ラニエリとオッタヴィア・ピッコロ、その他フランク・ウォルフ、「獲物の分け前」のティナ・オーモン、ルチア・ボゼーなど。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1971年4月17日
キャスト 監督マウロ・ボロニーニ
原作ヴァスコ・プラトリーニ
出演マッシモ・ラニエリ オッタヴィア・ピッコロ フランク・ウォルフ ティナ・オーモン ルチア・ボゼー
配給 日本ヘラルド映画
制作国 イタリア(1970)

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2023-12-09

「わが青春のフロレンス」は、19世紀末から20世紀初頭にかけての古都フロレンスを舞台に、一人の青年が恋と労働運動に情熱の炎を燃やす姿を描いた作品だ。

貧しさの中に育った若者が、次第に労働意識に目覚め、やがて階級闘争に身を投じる。

しかし一方では、年上の未亡人と初恋の交渉を持ち、死んだ仲間の女房と恋に落ちて結婚し、また隣家の細君の誘惑に負ける、というような多情多感な愛の遍歴をする。

古都のたたずまいが、静かに沈み切った雰囲気で、枯れた渋い味わいを醸し出している。

それだけに、この主人公の若い情念に燃えたぎった生き方が、田園と対比的に私の心に迫ってくるのだ。

最終更新日:2023-12-19 16:00:01

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