- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
ルイス・ブニュエル監督の「小間使の日記」は、最もブニュエル監督らしく、また最も彼の作品と異なっているように思える。
淡々としたストーリーのなかに、彼独特のエロティシズムと死の匂いがある。
フランスのノルマンディー地方の、あるブルジョワ家庭の小間使・セレスティーヌに扮する、フランスを代表する名女優ジャンヌ・モローは、決して好感の持てない女を、怪しげなエロティシズムを漂わせつつ演じている。
一地方のブルジョワ家庭を、小間使の目を通して描いているのだが、そこには様々なアブノーマルな世界が展開していく。
冷感症でセックスを拒んでいる女主人。
彼女は、小間使のセレスティーヌが、香水をつけているだけでも、いらついて注意する。
そういった、普通の小間使ではない、世慣れた女をジャンヌ・モローは好演しているといっていい。
夫人からセックスを拒まれている、ミシェル・ピッコリ扮する夫のモンティユは、精力を持て余し、それを狩りに出る事で癒している。
当然のように、セレスティーヌにも言い寄るのだが、相手にされない。
モンティユの舅のラブールは、靴フェティシストで、セレスティーヌに自分のコレクションの靴を履かせたりして興奮するといった有様だ。 とにかく、変な人がいっぱいなのだが、これがブニュエル監督の手にかかると、実に芸術的でエロティシズムを感じさせるのだ。 この作品で重要なのは、セレスティーヌともう一人の、ジョルジュ・ジェレ扮する下男のジョゼフだろう。 二人ははじめから憎み合っているのだが、それはどこか近親憎悪に近い。 確かに二人とも、ただ従順に主人に仕えていないところは、よく似ている。 この映画で、一つだけ、セレスティーヌが女の意地を見せるシーンがある。 ジョゼフが、村の少女を強姦して殺害した時だ。 彼女は、自分の肉体をジョゼフに与えてまでも、彼から殺人の証拠を摑もうとする。 森の中で殺害された少女の足に、蝸牛が這うシーンには寒気がする。 痛々しく、鮮烈なシーンとして忘れられない。 しかし、そこには一つの、少女へのブニュエル監督のメタファーも感じられた。 どこかで人間を愛せないでいる人たち、セレスティーヌと、ジョゼフはまさにそんな人間だった。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
鈴木則文監督の「少林寺拳法」は、日本少林寺拳法の開祖・宗道臣の伝記映画の体裁をとった、1970年代東映のバッドテイスト溢れる快作だ。
昭和22年。道臣は四国の多度津で、少林寺拳法の道場を開く。
弟子の一人が、当時二十歳の志穂美悦子で初々しく、とても可憐でしたね。
初心者でぎこちなく拳をふるっていたのが、ヤクザとの立ち廻りで、鋭い動きを見せるのには笑ってしまった。
「出来る」のだから、仕方ないですよね。
道臣と腐れ縁の愚連隊のボスが、小池朝雄。多度津のヤクザの組長が、名和宏。
二人が組んで、長屋の人たちを追い出そうとする。
そのイザコザで、道臣とは闇市以来の知己である大滝(佐藤允)が殺され、怒りの道臣が、単身、二人のもとに殴り込みをかける。
完全に、ヤクザ映画のパターンである。
名和宏は、道臣に両腕を、ありえないような形に捻じ曲げられる。 小池朝雄は、顔面に鉄拳を食らって、歯茎も付いた状態で歯を口からポロポロこぼす。 「こんな法なら、俺が破ってやる」とか、「法など俺には関係ねえ」等々、宗道臣は、アナーキーなセリフを繰り返す。 「わしら、美味いもん食うてよ、綺麗な女抱くために生まれてきたんやないの!」という、日本映画史上屈指の名セリフを叫んだ大友勝利(深作欣二監督「仁義なき戦い 広島死闘編」)や、血盟団事件のテロリスト・小沼正(中島貞夫監督「日本暗殺秘録」)等、アナーキズムを体現したキャラクターを演じる時、千葉真一は光り輝く。 ドスもピストルも、全て素手で跳ね返す。 少林寺拳法は、無敵なのだと思わせる、千葉真一のアクションが素晴らしい。 しかも、ただただ、美しい。 無軌道に突っ走る、鈴木則文映画でありながら、主人公・宗道臣には、品格が感じられる。 武道家でもある千葉真一の宗道臣に対する、深い敬愛の念が、演技に滲み出ているからだろう。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
人間の可笑しさや哀しさを描き続ける、異才ジョエル・コーエン&イーサン・コーエンの兄弟監督は、独特の視野から、病める現代のアメリカをいつも浮き彫りにする。
そして、これは、「悪」の映画だ。
原作は、アメリカ現代文学を代表する作家コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」で、この作品に登場する殺し屋を「純粋悪」と呼んでいる。
「悪」は「悪」でも、恨みとか強欲といった理由を伴わない「悪」があって、それをこのように言っているのだ。
この作品の中の人物たちの死は、すべて「純粋悪」による不慮の、誠に不条理な死として描かれる。
殺し屋を演じる、スペインの名優ハビエル・バルデムが一人異彩を放っている。 コインの裏と表で殺しを決め、残虐でいて礼儀正しい振る舞いが、何とも不気味だ。 エアガンのような酸素ボンベを携えて、次から次へと殺人を重ね、無表情に、冷徹に歩く姿にはただならぬ存在感がある。 悪なのか、神なのか。 彼は、これでアカデミー賞の助演男優賞を受賞した。 これはもう、文句なしに納得である。 三者三様の追跡、逃走劇は、人間の無力、愚かさ、不抵抗の運命を残酷に描き出していて、静寂の中に異様なまでの緊迫感を漂わせている。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-14
ヴァンパイア軍団とヴァンパイアハーフのハンターとの壮絶な戦いを描いた、アクション物スナイプスのマーシャルアーツは絶品。
敵のヴァンパイアも切れててよかった。
とにかく、CGを駆使してスピード感あふれるスタイリッシュな映像で、コミックの世界のビジュアル化に成功している。
日本刀やマシンガンを武器に暴れ回る過激なアクションも見ものだ。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-14
こういうデザスター映画は、なんだかんだ言っても、人類に対する警鐘の観点から必要だと思う。
何せ異常気象って、最近とみに起こっているからね。
この映画の映像は、素晴らしい物がある今までのパニック映画の中で、恐らく一番じゃないだろうか。
それにストーリーが、地球規模の危機ではあるけれど、結局父が息子を助ける映画になっている。
現実問題として、実際、自然界が猛威をふるったら、人間はどうしようもなく、ただ逃げることしかできないだろう。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
麻薬取締局が行った極秘作戦“ソードフィッシュ”によって、計画遂行に利用したダミー会社が思わぬ利益をあげ、95億ドルもの巨額に膨れあがっている。
それを強奪するため、元モサドのエリートスパイの計画には、二重三重の“罠”が張り巡らされていた--------。
ジョン・トラボルタが、この映画では「ブロークン・アロー」や「フェイス/オフ」なみの切れた役でしたが、これまた髪型がおかしいというのはご愛敬として、彼の悪役ぶりがよくて映画がしまっていたと思う。
キャスティングも豪華なもので、私の好きなドンチードルにハル・ベリーまで出演しているので、かなり楽しめましたね。
この映画はキャスティングだけではなく、ストーリーがしっかりしていて、映像の見せ方やラストまでの複線の張り方など、かなり練り込まれてます。
ラストになって、あ~こういうことだったのか!!と納得しました。こういうラストもありだと思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
この映画は輪郭がぼやけているような、絵画で言うと、印象派のような美しい色合いの映画とでも言うのでしょうか。
登場人物たちが、タペストリーの糸になっていて、それが絶妙に編み込まれ、練り上げられたような映画。
戦争映画ではないのですが、物語の前半は、戦争に翻弄される人々を追っていて、胸が詰まります。
スターリングラードの行軍シーンも、アウシュビッツの強制収容所も、ドイツ軍がパリに侵攻してくる場面も登場してきます。
そして、後半は前半で登場した人たちの子供たちが、ストーリーを引き継いでいくんですね。
一見、関係ないと思われるロシアとフランスとアメリカの家族が、どうして描かれていったのか、それは最後になってようやくわかるんですね。
ラストのエッフェル塔をバックにして、ラベルの「ボレロ」が踊られるシーンが、この映画の「核」の部分だと思います。
このクライマックスのシーンで、ああ、そういうことだったのかと思いました。
- 評価
- ★★☆☆☆
- 投稿日
- 2024-05-14
建設会社の社長の依頼で、ねずみ男が妖怪仲間を使って、団地の人々を脅して、立ち退かせようとする。
このあたりは定石っぽい。
ねずみ男の大泉洋もかなり頑張っていて、うんうん、ねずみ男ってこんな感じよねぇ、みたいな感じで、結構納得。
猫娘は、見た目が変。あのでっかい頭とリボン。ちょっとカッコワルイ。
砂かけ婆と子泣き爺もそこそこ良い感じ。
目玉おやじはCGだし、声優さんも同じ方なので、全く問題なし。
しかし、一番の問題は一番問題があってはならない「鬼太郎」自身。
ウエンツが悪いわけじゃないけど、ウエンツが演じているせいで軽くて、普通のお兄ちゃんっぽい。
実花のことが好きになってしまい、恋の病で苦しんでみたり。
結局は目玉のおやじが、妖怪モノワスレに頼んで、実花と家族から鬼太郎の記憶を消し去ってしまって、チャンチャンなのだが------。
なんかストイックな鬼太郎のイメージが、崩れてしまう(泣)。
ものすごく豪華なキャストなのに、ツッコミどころ以外は何もない、とってもつまらない映画だった。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
韓国で「タイタニック」を超えるメガヒットを記録したアクション・ドラマ。
連続するアクションは、ハリウッド映画に引けをとらないほどシャープで迫力満点。
南北分断という朝鮮半島の現実を見つめた社会性や、涙を誘う悲恋のエピソードも盛り込まれ、懐の深いエンタメ作品になっている。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
この映画はアクションと言っても格闘ではなく、とにかく逃げる、走るシーンを見る映画だ。
ビルの10階の窓から飛び出し、1つ下の階に降り、そこからまた壁を伝わって上に登り、屋上から隣のビルに飛び移り、次から次へとジャンプして行く。
あの爽快痛快、ドキドキ感を言葉で表現するのはちょっと難しい。
ただただ俳優さんの身体能力の高さに脱帽するだけである。
主演のシリル・ラファエリも頑張っていて、彼の格闘シーンは凄い。
相手の裏をかき、どんどん倒していく。
約85分の短い映画なので、ハッキリ言って、ストーリーなんてあってないようなもの。
シナリオ上のツッコミどころはいっぱいあると思う。
サクサク話を進めるために、色々切り落としてしまったような感じ。
物語を見せるのではなく、アクションの限界に挑んだから、見てちょうだいねという感じ。
だからストーリー性を求める人には、不向きな映画だと思う。
単にスカッとしたいというなら、見ても損はしないと思う。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-14
この映画は、ブライアン・デ・パルマ監督だし、原作がエルロイなので、かなり期待して見たが、見事に予想がはずれ、拍子抜けしてしまった。
ブラック・ダリア殺人事件が軸になっていると思ったのに、ちょっと違っていた。
この映画の軸は、バッキー、リー、ケイの三角関係なのか?
なんかブラック・ダリアの事件は、この映画のストーリーの一部という感じだったな。
スカーレット・ヨハンセンは、この時代の女性の役が似合うと思う。
だが、一番のミスキャストは、ヒラリー・スワンク。
絶対不美人なのに、絶世の美人のような扱われ方(笑)。
「ブラック・ダリアに似た女」と言われているらしいが、似ているのは髪形と服が黒いところだけ。かなり無理があると思うな。
やっぱり彼女は、ボクサーをしているほうが、ずっと似合ってると思うけど-----。
ミア・カーシュナーのほうが、ずっとずっとずーっと綺麗だったな。
スカーレット・ヨハンセンよりも綺麗。
ストーリー的には、とにかく拍子抜け。
リーがブラック・ダリア事件に執着する理由がハッキリしない。
無理矢理こじつけたような、そんな感じがする部分が多かった。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
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この映画は、賛否両論が飛び交う作品だろう。特に主人公の島からの帰還後について。
ロバート・ゼメキス監督とトム・ハンクスのコンビなら、絶対面白いんじゃないかと思って、大きく期待して見ると肩透かしを食らうと思う。
この映画は「サバイバル・アドベンチャー」ではなく、あくまでも人間ドラマであることを、最低限忘れずに見るべきだ。
この映画で何を感じるか、つまらないのか、それとも傑作なのか、人それぞれで感じ方が分かれると思う。
無人島でのサバイバルの生活を4年間過ごし、最後の知恵と力を振り絞って島を脱出し、無事帰還するが、帰還後の人生と終幕の描き方に物足りなさを感じてしまった。
救助されたものの、戻ってみれば、恋人とは遠い人になってしまっている。
本当はまだ愛し合っているのに、その愛は許されない。
主人公のチャックに未来はあるのか?
チャックには生きて帰って来た意味はあるのか?
ちょっと考えてしまうが、ラストでの彼の笑顔が、まだまだ道はあるじゃないかと思わせるものだったので、これでよかったのかな?とも思った。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
この映画の公開当時のキャッチコピーの「ありえねー」をダメ押しで確認したって感じですね。
本当にありえません(笑)。カンフーアニメを実写化したら、こうなりましたっていう映画ですね。
アニメチックですが、CGを多用した特撮がものすごいので、映像もすごいことになってます。
ありえない技が、ありえない映像でリアルに描かれていて、ほんとにあっけにとられます。
もうここまでやってくれると、お見事というほかありません。
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2024-05-14
ローニックは映画の冒頭では、おとり捜査官をしているのだが、仲間を2人犯人に殺されてしまい、お酒と精神安定剤に溺れる日々。
毎週金曜日には警察おかかえ?の精神科医のカウンセリングまで受けている始末。
抜け殻のようなロートニックが、たまたま夜勤でいるところにヴィショップたちがやってくる。
やる気を出したときと、もうダメだとあきらめてしまいそうになる、その格差が面白い。
イーサン・ホークって神経質そうな役が似合うと思うのだけど、どうなんだろう。
ロートニックとヴィショップの間には、警官と犯罪者を超えた友情?信頼?が生まれる。
まあ、何かとありがちな設定ではあるけれど、ヴィショップがロートニックに生きがいを与えたことは確かかな。
でも、ラストはどうなってしまうのかな?
ロートニックは生き残るとして、ヴィショップは死ぬのか、逃げるのか?
一応、うんうん、これなら許せる終わり方かなと思えた。
それにしても、人が死にすぎでしょ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
最高に面白かった!!
初めはポーは、ただのデブのパンダなのだが、自分を変えたいと思い続け、最後には龍の戦士になるというもの。
ストーリーは単純明快なのだけど、ポーがとにかく可愛い。
デブのパンダが、ラストには愛らしいパンダに見えてくるから、とても不思議。
ただ、この映画、時間の流れが分かりにくい。
タイ・ランが収容されていた刑務所は、平和の谷からどのくらい離れていたのか?
タイ・ランが脱獄してから、谷に着くまでの時間は?
ポーの修業は何日間行われたのか?1日?2日?
最後まで見て、タイ・ランが哀れだった。褒めてもらえないマスター・タイガーが可哀想だった。
名前を忘れたけど、カメの師匠がかっこよかった。シーフー老師は「スターウォーズ」のヨーダみたい。
この映画、一応メッセージも含んでいる。
「龍の巻物」にそのメッセージはある。
まあ、ありきたりなメッセージではあるけれど、単純なメッセージほど響くこともあるよね、なんて思ってしまった(笑)。
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
「水戸黄門」「暴れん坊将軍」といった、いわゆるTV時代劇はほとんど見ないが、その中で唯一見ていたのがこの「必殺シリーズ」。
それも、この映画の主要キャストが活躍していたシリーズをよく見ていた。
時代設定は、江戸ながら当時のリアルタイムな世相や事件を織り込んでいたこと、時代劇ながら軽妙なタッチであること、勧善懲悪ものでありながら、主人公たちも実は犯罪者(殺し屋)という、いわゆるクライムものであること、そして、悪者退治も単なるチャンバラではな、各自個性のある殺し方であること、などが魅力の理由だった。
この作品は、TVドラマの映画版ということで、豪華キャストながら、TVでの魅力がやや薄れ、仕事人同士の縄張り争い的な構図になっていたのは残念だが、気楽に観れる時代劇映画になっていると思う。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
ウッディ・アレン監督の作品にはいつも軽妙な笑いがあり、「含み」や「余白」を楽しませる。
だが、今回は生まれ育ったニューヨークとハリウッドの大がかりな対比を持ち込み、2人の女性にそれぞれ情熱と癒やしを投影してコントラストが際立っている力業の作品だ。
カリフォルニアの昼はひたすらまばゆく、ニューヨークの夜は照明も重たい。
両極端を反映するように2人の女性がキャラを立てる。
ハリウッドのプロデューサー助手からニューヨークのナイトクラブ支配人に転職し、その女性たちを渡り歩く主人公は、対照的にふわふわしている。
見た目、脇役のジェシー・アイゼンバーグが実にはまっている。
余白どころかはみ出すくらいに両海岸の要素を詰め込み、パターン化の極みのような人間模様で、逆に笑いを誘おうというのがウッディ・アレン監督の狙いのようだ。
今までのアレン作品とはちょっとズレたところでクスリとさせられる。
シャネル提供の衣装も随所にまばゆい。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
イタリア・ネオレアリズモは、1950年代に全盛期を迎え、「自転車泥棒」や「靴みがき」などの秀作を生み出してきた。
質素な暮らしを営む市井の人々が、過酷な現実に翻弄されるという基本構図。
素人俳優を大胆に起用し、暴力やロマンスといった劇的要素を抑え、ドキュメンタリーの技を積極的に採用する。
この映画作法が最も生きたのが、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「ウンベルトD」だと思う。
ウンベルトに扮したカルロ・バッティスティは、"なけなしの品位"を見事に醸し出しているし、監督のヴィットリオ・デ・シーカも感傷を抑えた細部描写で、"主人公の実情"を観る者に伝達する。
部屋の壁を這いまわる蟻の群れ、親切だが愚かなメイド、金を取って犬を預かる強欲な夫婦。
ウンベルトの情感は、時代と世相を反映した、細部の周囲から鮮明に立ち上がってくる。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
この映画「ハリーの災難」は、ひとつの死体をめぐって、独特のおかしさを醸し出す、アルフレッド・ヒッチコック監督ならではのブラックコメディの傑作だ。
舞台は紅葉が美しい田園風景が広がるバーモントの村。
子供が男の死体を発見する。死体=ハリーの災難の始まり。
誤って猟銃で撃ったと思う、船長と呼ばれる老人、ハリーに襲われた時に、ハイヒールで殴ったためと思う中年の女性など、ハリーの死因は、自分のせいだと思い込み、死体をあちこちに動かす場面が、実に面白い。
この映画は、シャーリー・マクレーンの映画デビュー作としても、興味深い作品だ。
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
この映画「サイコ」は、アルフレッド・ヒッチコック監督のサイコ・サスペンスの傑作だ。
会社の金を横領した美女(ジャネット・リー)が逃げ込んだモーテルは、母と暮らす、物静かな青年(アンソニー・パーキンス)が経営していた。
有名なシャワーのシーンは、わずか45秒に約200カットを詰め込んだ脅威の映像。
この映画の意外性は、今の社会に潜む狂気を予兆させる点で、ヒッチコックの作品の中でも際立っていると思う。