P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-12-06
リビーとセーラの老姉妹は、毎年夏になると、小さな島の別荘に滞在していた。
夏にだけ、その入り江にやってくる鯨を見たいのだ。
少女の頃からずっと、それが夏の楽しみだった。
しかし、今年はまだ鯨が現れない。
代わりに現れたのは、亡命ロシア貴族のマラノフ老人や大工のジョシュアだった。
この物語は、きらめく夏の太陽の日差しの中で、静かに老いていく人々を、温かく見詰めている。
老いてなお、少女の頃から胸に抱きしめている憧れを、八月の鯨に象徴させ、老人たちの細やかな仕草のひとつひとつが、限りなく美しく輝く名作だと思う。