桜の森の満開の下 作品情報

さくらのもりのまんかいのした

十二世紀とおぼしき頃鈴鹿峠に住む山賊は、山に入って来た旅人を襲い、男は殺し、気に入った女は女房にしていた。山賊は、山頂の自分の家から見える山という山、谷という谷は全て自分のものだと思っているが、しかし、あの桜の森だけはいけない、と思っていた。そこには自分より凄い魔物か何かが住んでいて、特に桜の花が満開の時には、風もないのにゴーゴーと鳴って下を通ると気が狂ってしまうのだ。実際、気が狂ってしまった人を何人も見ているのだ。春、桜の満開の頃、山賊は都からの旅人を襲い、女と出会った。今まで見たことのない、ぞっとするほど美しい女だった。「今日からおめえは、おれの女房だ」と山賊。「女房ならおぶっておくれよ、こんな山道は歩けないよ」と女。女は山賊の家に住んでいた七人の女房を、ビッコの女一人を除いて次次と殺させた。山賊は毎日のように、旅人から美しい着物を奪って来たが、女が都を恋しがるために、山賊は都で暮すようにした。やがて女は“首遊び”を始めた。姫の首、公卿の首、坊主の首。首と首は愛しあい、悲しみ、怒り、泣き、女はそれを楽しんだ。山賊は、女の望むままに、夜毎いろいろな生首を狩って来たが、やがて嫌気がさし山へ帰ると女に言った。女は、大粒の涙を流しながら、自分も一緒に山へ行くと言うのだった。初めて出会った時のように、山賊は女を背負って山を走った。桜の森はまさに満開。今日みたいな嬉しい日だから桜の森なんて恐くはない、と思った山賊は女を背負って桜吹雪の森の中を走った。獣のうめくような声がゴーゴーと聞こえる。恐怖が背中から追って来る。ふり返った山賊の目に、自分の首をしめている老婆の鬼が見えた。山賊は力をふりしぼって鬼をふり落して首をしめあげた……。気がつくと、足もとに桜の花びらに埋まって女が息絶えていた。慟哭する山賊の声は、桜の森をふるわせ、落ちてくる花びらは、二人を包み込んでいった……。誰もいなくなった満開の桜の森は、無気味にざわめき、凄まじい美しさに満ちている……。

「桜の森の満開の下」の解説

坂口安吾の同名の短篇小説の映画化で、都の女に魅せられた粗暴な山賊を怪奇と幻想風に描く。脚本は「卑弥呼」の富岡多恵子、監督は脚本も執筆している同作の篠田正浩、撮影も同作の鈴木達夫がそれぞれ担当。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1975年5月31日
キャスト 監督篠田正浩
原作坂口安吾
出演若山富三郎 岩下志麻 伊佐山ひろ子 滝田裕介 西沢利明 笑福亭仁鶴 丘淑美 観世栄夫 荒木雅子 加藤嘉 関山耕司 浜村純 西村晃 常田富士男 松山照夫 金井大 佐伯赫哉
配給 東宝
制作国 日本(1975)
上映時間 95分

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最終更新日:2022-07-26 11:03:54

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