当初より、二幕の舞台を2本で映画化すると報じられ、しかもその間隔約1年と知って個人的にはガッカリで、第二部公開時に続けて(同時公開が担保されているわけではないが)鑑賞するつもりでいた。だが、高評価しばしば目につき、映画通の知人の勧めもあり劇場に足を運んだ。なるほど後半のスピード感、圧倒感は評判通り。とりわけエルファバ役のシンシア・エリヴォの歌唱には胸打たれるものがある。しかし導入部や、魔法大学シーンに遅滞感あって、やや退屈。舞台では納得の世界観が映画としてのリアルに拡大されてしまうことで生じる、よくありがちな所謂「位相」を原作舞台愛好するゆえ感取しての印象なのだろう。かようにして名作舞台の映画化に難しさを感じてしまうのは、原作小説ファンが映画化に違和感をもつことに通じるある種の言いがかりと言われてしまえばそれまでである。加えてグリンダを演じたアリアナ・グランデが、そもそもの本人イメージが強すぎて歌声すべてグランデでしかなく、もうひとつしっくりとしなかった、がこれもただただ全く個人的な思い込み。さらに、これはないものねだりになるのかも知れないが、エルファバの劣情鬱屈とグリンダの華美能天気とをもっと鮮やかに対比させて見せて欲しかった。ふたりの生真面目さとぶりっ子ぶりとの懸隔が明確でないと、エルファバの懇願によりグリンダの魔法使いへの道が開かれる展開に説得力が生まれないし、せっかくの名高いナンバー「Popular」が響かない。ミシェル・ヨー扮するシズ大学の学部長の当初のエコ贔屓も、もっと強調されなければならない。エルファバが妹ネッサローズの不幸を過重に引き受けるあたりの描出も物足りない。そのためか、それらと同期する山羊のディラモンド教授追放に象徴される組織の腐敗や差別との相剋、社会全体への憤懣とが十分に炙り出されない。舞台未見の鑑賞なら、このあたりすんなりと受け入れられるのだろうか。
今季アカデミー賞を競い合った『ブルータリスト』もインターミッションを入れて長尺を飽きさず観せている。二幕一体で、たっぷり内実を深めて映画化されるべきだった。分割公開は賞レースでも不利に働いたのではないだろうか、とこれは老婆心かな。ラストで告知される「to be continued」に期待感は膨らまなかった。