映画感想・レビュー 7/2487ページ

アウェイ・フロム・ハー君を想う:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

サラ・ポーリー監督は『死ぬまでにしたい10のこと』などに出演した若い女優だが、この作品では、カナダのベテラン先輩陣のバックアップもあって、非常に繊細な人間ドラマに仕上げていると思う。

誰もが迎える老後の変化。避けられない現実だが、人間の知性は、どうしたら感情や記憶をコントロールできるのか。

この作品の凄さは、人間への最後の原罪として、その人生の過去の償いを清算しようと迫るところだ。

介護しようとした夫の愛を拒む妻。ストイックだが、ベルイマン映画のような厳しさを感じましたね。

アウェイ・フロム・ハー君を想う:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-21

この映画「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」は、アルツハイマー病に冒された妻を、老後介護施設におくる夫の心境を描いた作品。

カナダ、オンタリオ地方の雪の世界。
そこに、老後の生活をおくる夫婦にも静かに試練が訪れる。
美しい雪も春の暖かさで、少しずつ消えて行く。
フライパンを冷蔵庫に入れてしまう妻。

ジュリー・クリスティは、この老妻の演技で、アカデミー主演女優賞にノミネートされました。

ごく自然に淡々とした生活だが、確実に彼女の記憶も雪のように消え出した。
黄色い花を見ても色彩がわからない--------。

三度目の殺人:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2024-07-21

市川実日子演じる若手検事と、満島真之介の弁護士助手役に見え隠れする、真っすぐな正義感が、この作品のテーマを別角度からも鮮明にしてみせる。

市川実日子の上司役の岩谷健司の、ほとんど無言の演技が、形骸化した司法制度を象徴するかのように、心の澱となって、私の心にいつまでも残り続けるのだ。

三度目の殺人:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2024-07-21

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アメリカの古い犯罪映画や、黒澤明監督の「天国と地獄」を念頭に置いて、カメラを回したという、是枝裕和監督の「三度目の殺人」。

この作品で、福山雅治が切れ者の弁護士を演じる。
同期生だった吉田鋼太郎の頼みで、彼が引き継いだのは、食品加工会社の社長が殺害された事件だった。

被告の役所広司には、三十年前に、やはり殺人の前科があり、裁判官だった主人公の父親が、事件を裁いた因縁もあった。

しかし、再調査を始めた主人公に相談もなく、被告は被害者の妻である、斉藤由貴から殺人の依頼があったと週刊誌に告白し、世間を騒がせることになる。

社長殺しをめぐる謎が、二転三転する面白さは、法廷ものとして期待を裏切らない。
しかし、その一点のみに目を奪われると、この作品のテーマを見逃すことにもなりかねない。

真実は、トリックスター然とした役所広司の頭の中にしかなく、拘置所の接見室で、彼の話に耳を傾ける福山雅治は、繰り人形でしかないからだ。
そういう意味で、この作品は、司法の限界を描いた社会派のドラマであるとも言えるだろう。

家族の庭:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

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普通はあらかじめ出来上がった脚本に沿って、俳優に演技をつけていくものだが、マイク・リー監督は、まず俳優に即興で自由に演じさせてから脚本を書いていくという。

そこでは当然、俳優の裁量に任されるわけだから、自然といずれ劣らぬ演技派の勢揃いとなる。
夫のジム・ブロードベント、妻のルース・シーン、そしてほとんど主役ともいえる、妻の職場の同僚メアリーを演じるレスリー・マンヴィル。

最初の結婚に破れ、不倫の恋に傷つけられた独身の中年女性の悲哀を表現して、実に見事だ。

この映画のテーマは、ズバリ家族だ。
夫婦や親子関係を通して、家族とは何かという根源的な問いを投げかけるのだ。

さらに、撮影当時68歳という、マイク・リー監督の年齢を反映してか、そこに「老いと孤独」も加わり、現代人の「老い」の生き方を問うのだ。

それにしても、テンポの早い会話のやり取りや、そこで交わされるウィットと皮肉を込めたセリフの面白さは、他の追随を許さない。
そこに、イギリスだけでなく日本にも当てはまる、現代の"家族の肖像"を見る思いがする。

家族の庭:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-21

"家族とは何かという根源的な問いかけに、老いと孤独を絡ませた、マイク・リー監督の秀作「家族の庭」"

監督が「秘密と嘘」や「ヴェラ・ドレイク」のマイク・リーなら観ないわけにはいかない、いや、何が何でも観るべきだと半ば強迫観念にかられて、劇場に足を運んだ作品が「家族の庭」だ。

案の定、それまでのマイク・リー監督の作品同様、画面の隅々にまで神経が行き届いた演出と、俳優陣の熟練の演技を堪能しました。
久々に映画が終わるのが惜しいと思えるほど、充実した時間を味わえましたね。

特に秀逸なのは、導入部。冒頭で「ヴェラ・ドレイク」の主演女優のイメルダ・スタウントンが、初老の患者役で登場するから、てっきりこの女性が物語を引っ張っていくのかと思いきや、場面は病院内の女性カウンセラーに移り、さらに彼女の同僚の中年女性を映し出す。

短いカットを重ね合わせるように、人間関係を明らかにしていく巧みな語り口。
やがて、この映画の主人公は、カウンセラーと地質学者の初老の夫婦であり、その一家に集う様々な人物の人間模様であることがわかってくる。

ビッグ・ウェンズデー:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

入隊検査を逃れるために、ありとあらゆる手を使って入隊拒否をするシーンには笑ってしまうが、しかし、戦争に行くことの義務感と、死の恐怖のジレンマ、そして戦争に対する悲劇が強烈に描かれているのだ。

この映画の脚本・監督のジョン・ミリアスは、自分の青春時代の体験をもとにこの作品を描いていて、真実であるからこそ、劇中、戦争に行った仲間が戻って来た時の喜びや涙が、感動へと変わっていくのだ。

そして、愛する恋人との再会、昔の思い出を取り戻すために、やっと待ち望んだ幻の波"ビッグ・ウェンズデー"に挑戦することで、サーフィンて結ばれた男の友情が復活するのだ。そして、私はそんな彼らの姿に、言いようもないほどの爽やかな感動を覚えるのです。

ビッグ・ウェンズデー:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

サーフィンのシーンになると、普通の映画だったらスタント・マンが俳優の代わりを演じるのだが、この映画では、俳優自らがサーフボードに乗って、彼らのテクニックを見せてくれるのだから、凄いのひと言に尽きる。

波の間を進むサーフィンに乗ったジャン・マイケル・ヴィンセントが、ボードの上を歩いてしまうので、サーフィンを初めて見た人だったら、本当にびっくりしてしまうだろう。

この作品のおかげで、公開当時の1970年代末頃、一部の人だけのスポーツだったサーフィンが、一気に若者向けのものとなって大流行してしまったそうだから、それだけこの映画の中のサーフィン・シーンが、強烈だったのだろうと思う。

もちろん、この映画は甘っちょろくて、カッコいいことばかりを描いているわけではない。
この映画の時代となっている1960年代を描いている背景には、もちろんアメリカ人にとって汚点となったヴェトナム戦争の影もあるのだ。

ビッグ・ウェンズデー:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-07-21

この映画「ビッグ・ウェンズデー」は、ジョン・ミリアス監督の青春時代の思い出をもとに作られた青春映画の傑作だ。

カリフォルニアの海岸の小さな町に住む3人の青年は、サーフィンによって友情が結ばれていた。
彼らは、伝説的な幻の波である"ビッグ・ウェンズデー"を待ち続けているが、やがてヴェトナム戦争によって青年たちは、バラバラの人生を歩む事になってしまうが------。

誰にでも青春時代というものはあるはずだ。
でも、それが素敵な青春であったかどうかはわからない。
それを代弁するかのように、また疑似体験をさせてくれるのが映画なのだが、こんな青春時代を過ごせれば最高だと思わせてくれたのが、この「ビッグ・ウェンズデー」なのだ。

夏の青い空に青春を賭け、サーフィンで激しい波に挑み、そしてそこから生まれる友情と恋、まるで絵に描いたようなストーリーだ。

とにかく、主人公を演じているジャン・マイケル・ヴィンセント、ウィリアム・カット、ゲイリー・ビジーがとてもカッコいい。

暗殺の森:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

幼児の悪夢から逃れられず、熱狂的なファシストになる青年にフランスを代表する超個性派俳優のジャン=ルイ・トランティニャンが扮し、退廃的な翳りと虚無をたたえた演技を披露し、その妻に扮したステファニア・サンドレッリの、どこか崩れたような美しさも印象的だったと思う。

暗殺の森:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

また、この映画は、映画ファン気質にあふれる映画作家が作った映画であるというのも、忘れられない点だ。
教授が森で暗殺されるクレーン・ショットの見事さ。
まるで5メートルの巨人の目が捉えているようなカメラ・アングルなのだ。

このシーンを観ながら、ベルトルッチ監が敬愛してやまない溝口健二やオーソン・ウェルズ、マックス・オフェルスなどの監督の映画に思いをめぐらしながら、改めて彼らの映画を観直すのもいいかも知れない。

とにかく、この映画は全編に渡って、華麗にして官能的な映像にあふれていて、特にダンスホールのシーンや雪に覆われた森での暗殺シーンには陶酔してしまった。

映画は、いくら監督に才能があってもいい映画が出来るとは限らない。
当然のことながら、何といってもいい俳優がいなければ、成り立たないものです。

その点でも「暗殺の森」は申し分がない映画と言える。

暗殺の森:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

若手監督にとっては予算とスケジュールの制約は、必ず付きまとう問題だが、ベルトルッチ監督はそれから解放され、一シーン、一シーンが胸躍る官能的な魅力に満ちた作品に仕立て上げていると思う。

この映画「暗殺の森」は、ファシズムが台頭した1928年から、崩壊寸前の1943年までのパリとローマを舞台に、反ファシストの教授暗殺の指令を受けたインテリの”体制順応主義者”(映画の原題)の姿を描いた、優れて”政治と人間”に関するドラマなのです。

原作は、現代文学の旗手と言われたアルベルト・モラヴィアの「孤独な青年」で、1970年代のネオ・ファシスト台頭期に作られている点が、この映画をより重層的にしていると思う。

ベルトルッチ監督の作品には、その後も「1900年」ではドナルド・サザーランドが、「ラストエンペラー」では坂本龍一が演じたファシストが登場しているが、もちろんそれらを肯定的な存在として描いているわけではない。
しかし、彼らが、退廃的な魅力をたたえている点が、ベルトルッチ監督の凄さ、映画作家としての懐の深さなのだ。

暗殺の森:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-21

若い哲学講師のマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、13歳の時、彼を犯そうとした同性愛の男をピストルで射殺し、それ以来、罪の意識に悩んでいた。

そして、少年時代の悪夢から逃れるため、彼はファシストとなり、哲学を学び、プチ・ブル娘ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と結婚する。

彼はファシスト党から、反ファシストの教授の暗殺を命じられるが、教授の妻アンナ(ドミニク・サンダ)に心惹かれ、暗殺遂行を躊躇するのだった。

「ラストエンペラー」で世界の映画界に改めてその実力を見せつけたベルナルド・ベルトルッチ監督の、この映画「暗殺の森」は、彼の29歳の時の作品だ。

ベルトルッチ監督は、1962年に若干21歳の若さで処女作「殺し」を発表、その鋭い感性は、イタリア映画界に衝撃を与えたのです。

そして、その後も「革命前夜」「暗殺のオペラ」を発表して実績を重ね、それを武器に「暗殺の森」に十分な予算とスケジュールを得て取り組んだのです。

球形の荒野:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-21

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

サスペンス仕立てになっているが、戦争に弄ばれ、荒野に押しやられて息をつめて生きる男と、安泰を貪る現在の日本とのギャップを通して、戦争の告発に迫った社会派のドラマなのだ。

ラストの父親と娘の対面シーンが、悲しい人間の運命のいたずらを象徴していて、胸に迫るものがある。貞永方久監督の演出は、原作の重みをよく燃焼させていたと思う。

球形の荒野:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-07-21

この映画「球形の荒野」は、松本清張の同名の推理小説を忠実に映画化した、社会派サスペンス・ミステリーだ。

久美子(島田陽子)は、新聞記者の添田(竹脇無我)との婚約を亡き父に報告するため、父がこよなく愛していた大和路を訪れる。

そこの寺で、拝観者の芳名帳に父とそっくりの筆跡を見つけたが、どうしたわけか翌日には何者かによって破り取られていたのだ。

久美子の父親の野上(芦田伸介)は、第二次世界大戦の末期、日本を救うため妻子と祖国を捨てて、連合国軍側と極秘に和平工作を進めた外交官だったのだ。

表向きは任地で死んだことになっていたが、娘に会いたいあまり、17年ぶりで故国の土を踏んだのだった。

野上のこの突然の帰国は、当時の軍関係者に波紋を呼び起こすことになるのだった。野上の元部下が殺され、旧軍人が自殺したりしたのだ。

破り取られた芳名帳---殺人---自殺と続くこの一連の事件に、婚約者の父との繋がりを感じ取った添田の取材活動がやがて始まり、謎のベールが一枚、一枚はがされていくことに------。

パラノーマル・アクティビティ:P.N.「TW」さんからの投稿

評価
★★☆☆☆
投稿日
2024-07-21

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

ホラー映画に愚か者は付き物ですが大抵はそういうキャラとして楽しめるものです。
でも今作はモキュメンタリーとしてやってるので愚かな彼氏役にかなり苛々させられます。
映像投稿でもして金にするのが望みなのかやめてやめてと止める彼女役の言うことをガン無視であの手この手で怪奇を挑発して回る。
なんで彼氏をやれてるのか不思議な映画、そこに焦点が移ってしまう。
怪奇現象は基本的にジャンプスケア、よくあるビックリ系です。

そして終盤とうとう怪奇の正体に迫るのですが、床に撒いた白い粉に足跡が!
それが見事な3本指、まるでフリーザ様!
キリスト教圏ではアレって怖いのだろうか…こちらからすればアニメやゲームに出てくるツノに翼に矢印のような尻尾の付いたデーモン像が脳内に浮かんで苦笑いが出てしまった。

固定カメラで撮ってる体なので視聴者はイヤでも画面に無言で釘付けになる設定作りは上手いな~と感じた。
でも前述の通り怖いより苛々、そしてエェ…となる苦笑い、映画館で観てたらさぞガッカリして帰ったことでしょう。
そんなパラノーマル·アクティビティ。

パコダテ人:P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-20

本篇シナリオの今井雅子・作のラジオドラマがNHKFM局のFMシアターで放送。タイトルはアシカを待つアシタ。人生に行き詰まった人びとが訪れる岸壁を舞台に見守り人とのこころの絆が描かれた感動のドラマ

蜂蜜:P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-20

アンドレイ・タルコフスキー監督の映画ストーカーを論じたSF評論動画サイトで静止風な画像の魅力を語っていたのが有ったけれど本篇の画像の凄さもそんな処にもある

最終更新日:2024-07-26 16:00:01

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