ジャッカルの日 作品情報
じゃっかるのひ
1962年8月26日ペティ・クラマール郊外で、エリゼ宮殿からパリ近くの空港へ向かうドゴール大統領を乗せた車が、待ち伏せていた軽機銃で武装した1隊の襲撃をうけた。奇跡的に大統領は無事だった。すでに大統領暗殺は6回も計画されており、首謀者ジャン・マリエ・タリー中佐が銃殺刑に処せられた。全てが、アルジェリアからのフランス撤退政策をとったドゴールに反対する秘密組織OASの仕業だったが、63年に入ると政府側のしめつけが激しくなりOASは動きが取れなくなった。国外に逃れたOASの指導者ロダン大佐(エリック・ポーター)は残された最後の手段として、外国人で、しかも当局には顔も名前も知られていない殺し屋を雇う事にした。3カ月後、その条件にぴったりの男を見つけだした。その男の暗号名はジャッカル(エドワード・フォックス)。契約金は50万ドルだった。その金を用意するためにOASはフランス各地で銀行強盗を決行した。しかし、その突然のテロ行為はフランス当局を警戒させるもととなった。やがてロダン大佐の護衛の1人ウォレンスキー(ジャン・マルタン)がフランス側につかまり、拷問にかけられた。彼はしゃべらずに死んだがその断片的な言葉からフランス警察が動きだした。その頃、ジャッカルの準備も着々と進んでいた。身分証明書を偽造し、精巧な狙撃銃を作らせフランス国内に潜入した。ウォレンスキーの断片的な自白は、大統領を守る立場にある大臣(アラン・バデル)を緊張させた。政府首脳陣が召集された会議の結果、警察のルベル警視(ミシェル・ロンスダール)と補佐のキャロン(デレク・ジャコビ)に全権が委任され、捜査が開始された。彼らの必死の活動が続き、ジャッカルに今1歩と迫ったが、殺し屋の動物的なカンのために逮捕には至らなかった。ジャッカルがドゴールの横顔に銃の照準を会わせる前に2人の犠牲者が出た。ジャッカルとホテルで知り合い1晩ベッドを共にしたコレット夫人(デリフィーヌ・セイリグ)と、ジャッカルに肉体的魅力を感じて近づいたホモのベルナール(アントン・ロジャース)だ。その間にもルベルとキャロンの捜査網は次第にせばまったがどうしても彼を捕らえることはできなかった。1963年8月25日、解放記念日。厳重な警備を巧みにすり抜けたジャッカルは、ドゴールが立つはずの広場を見下ろすアパートの最上回の1室で、狙撃銃を組立てていた。一方、この日まで、ジャッカルを捕らえる事のできなかったルベルは、周囲を警備する隊員から、1人の年老いた傷痍軍人がアパートに入った事を聞きだした。やがてドゴールが到着し、式典は予定通り始まった。窓からドゴールの横顔を狙うジャッカル。発砲。だが、ドゴールの頭が1瞬動き、弾は外れた。2発目を込めようとした時、警備員を伴ったルベルが部屋に飛び込んできた。ジャッカルがふり返り軽機銃を持った警備員を射殺した。ジャッカルが次の弾丸を込める間、軽機銃を奪ったルベルが、ジャッカルめがけて引き金を引いた。ジャッカルは壁にたたきつけられ息絶えた。外の広場では何事もなかったかのように式典が続けられていた。
「ジャッカルの日」の解説
ドゴールフランス大統領暗殺を請け負った1匹狼の殺し屋ジャッカルと、これを阻止せよとフランス警察の全権を委任された警視ルベルの戦いを描いたフレデリック・フォーサイスのベストセラー小説「ジャッカルの日」の映画化。製作はジョン・ウルフ、デイヴィッド・ドイチェ、ジュリアン・デロード、監督はフレッド・ジンネマン、脚本はケネス・ロス、撮影はジャン・トゥールニエ、音楽はジョルジュ・ドルリュー、編集はラルフ・ケンプランが各々担当。出演はエドワード・フォックス、エリック・ポーター、デルフィーヌ・セイリグ、ミシェル・ロンスダール、シリル・キューザック、オルガ・ジョルジュ・ピコ、アラン・バデル、デレク・ジャコビ、ミシェル・オールレール、バリー・インガム、ロナルド・ピカップ、デイヴィッド・スイフト、デニス・ケリー、アントン・ロジャース、ジャン・マルタンなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1973年9月15日 |
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配給 | ユニヴァーサル=CIC |
制作国 | アメリカ(1973) |
上映時間 | 143分 |
TV放映 |
2024年10月29日 テレビ東京 午後のロードショー |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、6件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-31
サスペンス映画というのは、一難去ってまた一難で、主人公の運命はどうなるのかということに、観ている者をハラハラ、ドキドキさせる映画、それも単純なアクションものではなく、意表をつくアイディアと、ストーリーのうまさと、映画的なテクニックのあの手この手で、グイグイ引っ張っていく映画、そういうジャンルの娯楽映画として、ずば抜けて面白いのが、名匠フレッド・ジンネマン監督の「ジャッカルの日」だと思います。
何よりもまず、着想が実に凝っています。
サスペンス映画というのは、とかく現実にはあり得ないような話になりやすいものですが、これは、もしかしたら現実に本当にあったかもしれない話であり、世界の政治の動向にも関わりのある事件なのです。
すなわち、アルジェリアの独立をめぐるフランスの植民地の叛乱で、その時代のド・ゴール大統領の暗殺計画が次々に行なわれ、いずれも失敗に終わった時、表面には出なかったが、もう一つこういう事件もあったという形で、えらくまことしやかに物語が繰り広げられるのです。
実際に、ド・ゴール大統領の暗殺未遂事件は、1961年以降、5回も起こっているのです。 フランスがアルジェリア戦争の泥沼にはまって、戦争継続かアルジェリアの独立承認かの決断を迫られた時、戦争の継続を望むフランスの軍部は、軍の長老でフランス解放の英雄であるド・ゴール将軍を強引に大統領に担ぎ出したのです。 ところが、老獪なド・ゴールは、軍部に担がれていると見せかけておきながら、着々と手を打ってアルジェリアの独立を承認してしまったのです。 軍部の極右派は、地下にもぐってテロ活動を続け、繰り返し、彼らを裏切ったド・ゴールの暗殺を計画したのだった。 一方、ド・ゴールは、生粋の軍人として、暗殺なんか怖くないと、高い鼻を益々高くしながら、護衛を付けるのも迷惑がって、公式の式典などでは恐れることなく、堂々と公衆の前に現われたのだった。 だから、護衛役の警察当局も、テンテコ舞いさせられたに違いありません。