映画感想・レビュー 45/2520ページ

竹山ひとり旅:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-13

この映画「竹山ひとり旅」は、津軽三味線を一地方のささやかな芸能から、民族的な芸術のひとつにまで押し上げた、高橋竹山の青春時代を描いた作品だ。

竹山の三味線が聞けて、それが素晴らしいことは言うまでもないが、監督・脚本の新藤兼人の演出の腕も冴えわたっていると思う。

若き日の竹山(当時は定蔵)を演じる林隆三、その母の乙羽信子、イタコでもある妻の倍賞美津子など、各俳優たちが小手先の演技ではなく、津軽の雪の重みを感じさせるような素晴らしい演技を体現している。

幼くして視力を失った貧農の子の定蔵は、母が苦労して買った三味線を持って門付けの芸人であるボサマの師匠に弟子入りし、雪の縁側に座って三味線を弾くというような厳しい修行に耐えていく。

イースタン・プロミス:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

かねてより、クローネンバーグ監督は、善悪の彼岸で死の匂いに浸っていたわけですが、そのニヒルでシニカルな筈のクローネンバーグが、モラルと希望を探している。
実に、皮肉なものです。

かつてのクローネンバーグに比べると、甘すぎると思う人もいるだろうが、ドラマの保守性とかすかなモラルがなければ、生きている意味もないではないか。

暗い映画なのに、久しぶりに救われた気持ちになりました。

イースタン・プロミス:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

あるいは、トルコ風呂では、全裸の男たちが、ナイフ一本で斬りつけ、殺し合うのだ。
銃ではなく、ナイフに頼るところが、またとても怖いのだ。

だが、この映画は、実はチャールズ・ディケンズの世界だと思う。
闇に包まれてはいるが、モラルが残されている。
起承転結のついた物語を落としどころに持っていく、古風な話法もディケンズそのもの。

ナオミ・ワッツは、邪悪の詰まった箱を開けてしまったパンドラだけど、箱の底にはちゃんと希望が残されているのだ。
非情な暴力とわずかな希望の二重性を見事に表現した、主役のヴィゴ・モーテンセン、実に素晴らしい名演です。

暴力の絶えない世界の中で、倫理はどこに残されるのか。
コーエン兄弟、ティム・バートン、ポール・トーマス・アンダーソンと、優れた監督は皆、このテーマなのだ。

イースタン・プロミス:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-13

ロンドンの街に広がるロシアン・マフィアの影。
その犠牲となった少女の遺した手記を手にした、助産師ナオミ・ワッツは、産み落とされた遺児の身元を探したために、マフィアに追われる身となってしまう。

全編を通して非常に暗い。ましてや監督は、「ビデオドローム」や「イグジステンズ」など、肉体のグロテスクな変容に取り憑かれてきたデヴィッド・クローネンバーグですから。
何か、とてつもなく悪い予感がしてきます。

ところが、観終わって、後味はそう悪くないのだ。
それどころか、闇に沈むロンドンの片隅に咲いた一輪の花という味わいなのだ。

ただ、そうは言ってもクローネンバーグの映画だから、バイオレンスは、たくさんあって、死体の身元を隠すために、指先を一本一本切り落とす。

神様のくれた赤ん坊:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

まず、この映画はロードムービーの基本である主人公が、旅に出る理由が、うまくできている。
しかも、父親候補は、市長選の立候補者、結婚式真っ最中の青年実業家、元プロ野球選手、ヤクザの組長の4人。

地域も尾道、別府、長崎、北九州と振り分けられている。これはどう転んでも楽しくなるはずだ。

この映画は、「反マジメ精神」を貫いた前田陽一監督のまさに代表作とも言える作品だ。
父親探しの縦糸に、小夜子が母親のルーツを探す話を絡ませたり、前半で小夜子がエキストラで練習するセリフが、ラストで大きな意味を持つなど、伏線の張り方も巧みで、脚本もよく練り上げられている。

一見、異質に見える主役の二人も、渡瀬恒彦が持つ軽みを引き出すことで、似合いのカップルになっていると思う。

これだけ軽やかに"人情喜劇"を作れた監督なので、生前、もっとたくさんの作品を撮って欲しかったと思う。

神様のくれた赤ん坊:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-13

"ロードムービー"とは、主人公が車や列車などで移動する中で、その過程において様々な人々と触れ合うことにより、人間的に成長していくという映画だが、この前田陽一監督の「神様がくれた赤ん坊」は、まさにこの定義にぴったりな、"ロードムービー"のお手本のような作品だ。

主人公は、エキストラのアルバイトで生活費を稼いでいる同棲中の晋作(渡瀬恒彦)と小夜子(桃井かおり)。
ある日、晋作の子供かもしれないという男の子を押しつけられたことから、この物語は展開していく。

子供の母親は晋作の昔の彼女で、男と逃げてしまったらしい。
この蒸発した母親が「父親の可能性がある男」として、晋作を含む5人の名前をメモに残していたのだ。

「身に覚えがない」晋作は、本物の父親を探しに、子連れで旅に出ることになる。そして、その旅に、小夜子も同行することになって-------。

グッドモーニング・ベトナム:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

主人公のディスクジョッキーに扮しているのは、ロビン・ウィリアムズ。
「ポパイ」を演じ、「ガープの世界」で、我々映画ファンを唸らせた彼である。

うまい、実にいい味を出す役者だ思う。
優しい笑顔の中に、軍の重圧や、不条理な戦争に対する憎しみが込められ、抜群にうまい役者だ。

友と信じたベトナムの青年が、北側の工作員だったことを知った時の彼の哀しみの表情が忘れられない。
なぜ手を取り合って生きていけないのか。

このロビン・ウィリアムズという稀代の役者を起用して、バリー・レビンソン監督は、心に残る名作を撮ったと思いますね。

グッドモーニング・ベトナム:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-07-13

この映画は、ベトナム戦線の兵士に聞かせるラジオのディスクジョッキーのお話ですね。
とにかく、この映画は面白い、たまらなく面白いですね。

米軍の放送だから、検閲も厳しい。その間を縫って、新米のディスクジョッキーは、まあハチャメチャな語りで、兵士たちの心を捉えてしまう。

急激な人気の高まりで、米軍の首脳部は、彼を首にすることも出来ない。
いっそ危険きわまりない最前線へ放り出せば抹殺できると、彼を取材の名目で送り出すのだが----------。

鉄砲玉のように飛び出すブラックジョーク。米軍の検閲制度を徹底的にからかいながら、それでいて若き兵士たちに注ぐ、愛おしみの眼差しは、実に温かい。

激戦地で死んでいくであろう、幼さの残る兵士たち。
主人公の「グッドモーニング・ベトナム!!」という呼びかけの何と優しいことか。

ブレージングサドル:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

黒人の保安官では、町はますます不穏になり、住民たちは土地を捨てて出ていくだろうというのが、知事のねらいで、住民のいなくなったその土地を鉄道会社に売って、ひと儲けしようというハラなのだ。

だが、そうは問屋がおろさない。
バートは、監獄の常連ジム(ジーン・ワイルダー)と意気投合し、知事が送り込んだ無法者タガート(スリム・ピケンズ)一味に立ち向かうのだった。

そして、住民もいつしか二人を信用し始め、協力するようになり、ドタバタ喜劇の定番のパイ投げをやるかと思えば、ターザンが飛び出したり、踊り子のラインダンスが始まるかと思えば、ヒトラーまで派手に登場したりするのだ。

まるでサーカスのどんちゃん騒ぎのような大合戦が、いわば、この映画の見せ場なのだが、このなり振り構わぬドタバタのようで、そのくせ笑いのツボはちゃんと心得ているスマートさ。

まさに、メル・ブルックス監督の独壇場というところでしたね。

ブレージングサドル:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-07-13

アメリカ人の底抜けの陽気さを一人で背負って立っていたかのような、かつてのメル・ブルックス監督の、この映画「ブレージングサドル」は、理屈もヘチマないドタバタ喜劇の爆笑ウエスタンですね。

とにかく、メル・ブルックスの監督作品には、随所に楽屋落ちの駄洒落が出てくるが、笑いのめして、いけしゃあしゃあと幕を下ろす賑やかさは、むしろ爽快と言ってもいいくらいだ。

自分も楽しむかわりに、他人も楽しませるという自信が、この作品にも満ち溢れているんですね。

舞台は、法も秩序もない西部のある町。
腹黒い知事(メル・ブルックス)は、縛り首寸前の黒人奴隷バート(クリーボン・リトル)を、保安官になれば見逃してやるという条件で、この町に送りこむのだった。

ミズーリ・ブレイク:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

神出鬼没の行動で、ローガン一味を一人ずつ殺したクレイトンが、睡眠中にローガンに首を引き裂かれて殺される場面も、ずいぶん無神経な描き方になっていると思う。

荒野の素朴な生活とか大自然の景観とか、リアリズムに貫かれた描写も見受けられるが、総体的には活気や映画的緊張感の乏しい失敗作というべきだろう。

ミズーリ・ブレイク:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

このように、筋立ては普通の西部劇と大差はないが、アーサー・ペン監督は随所でひねりを効かせた演出を試みている。
結果として、それが成功した箇所もあるが、ローガンの仲間がカナダに潜入して騎馬警官隊の馬を盗むユーモラスなシーンと、ローガンとブラクストンの娘(キャスリーン・ロイド)のラブシーンと、それをクレイトンが双眼鏡で監視する光景をカット・バックで描いたところなどは、ドラマティックな盛り上がりを著しく中断させて、ひねり損ないの印象を与える。

ミズーリ・ブレイク:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2024-07-13

1958年にポール・ニューマン主演の「左ききの拳銃」を手がけ、1970年にダスティン・ホフマン主演の「小さな巨人」を撮ったアーサー・ペン監督の3本目の西部劇で、マーロン・ブランドとジャック・ニコルソンの初共演というので、公開当時、話題になった作品だが、出来栄えは、余りかんばしくない。

とにかく、公開時のキャッチ・コピーが「ついに対決する 2大アカデミー賞スター!! 製作費48億円 巨大な興奮と感動で放つ超娯楽大作!」という割りには、全く期待外れの作品に終わっていると思う。

ところは西部開拓末期のモンタナ。
無法者のトム・ローガン(ジャック・ニコルソン)とその仲間は、まともな生活に入ろうと考えていたが、仲間のひとりを大牧場主ブラクストンに縛り首にされたため、ブラクストンの牧童頭を殺して仕返しをした。

このローガン一味に不快感を募らせたブラクストンは、殺し屋リー・クレイトン(マーロン・ブランド)を雇って、ローガン一味と対決させようとするのだった。

動乱:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

こわれ易く、こわし易い民主主義を守っていくためにも、その必要性がありますし、間近な歴史を抽象化して、北一輝を描いていた「戒厳令」(吉田喜重監督)と同じ弱さがあったように思います。

動乱:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]

彼らの決起の趣旨も、また、その挫折の過程も明らかにはされていません。
そして、宮城の獄中記の内容も、わからないままです。

最後に、「この事件の後、軍部ファッショが確立し、大陸侵攻が本格化した」と解説していますが、仮に、このクーデターが成功し、皇道派が統帥派に代わっても、戦争への途を避ける事が出来たとは、到底、思えません。

森谷司郎監督は、この映画について、「本当の事というのは、永遠の謎だ。ただ僕の考えたのは、社会情勢が現在とソックリだという事だ。当時は貧しくて、今は中途半端に豊かだけれども、政治そのものは少しも変わっていないんだよね」と語っていますが、それだからこそ、この事件を、ドキュメンタリー・タッチで史実に即して、客観的に描く事の今日的な重要な意味があったのだと思います。

動乱:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

そして、上官の汚職と引き換えに彼女を救った宮城は、東京で一見夫婦風の平和な居を構えますが、それは"昭和維新"を目指す宮城が、世を欺くためであり、また、金で買った昔の男たちと同じように薫を抱く事は、彼女を傷つける事になると考え、薫の負い目に乗じたくないという思いやりからでもあったのですが、死を覚悟している男として女を泣かせたくなかったからでもありました。

このような、厳しくも優しい、寡黙の男を演じられる俳優は、高倉健しか考えられない程の適役ですし、その宮城をひたすら愛し、それに耐える女を演じる吉永小百合は、情感に満ち溢れています。

このストイックなまでの愛情が燃え上がり、二人が結ばれたのは決死の行動の前日でした。

この男女は、全くのフィクションですが、脚本が二・二六事件についてもフィクション的な扱いをしている事が、この映画の迫力・迫真性を失わせていると思います。

動乱:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-07-13

「動乱」は、暗い時代のストイックな愛を高倉健、吉永小百合の共演で描いた男女の愛の物語ですね。

この東映映画「動乱」は、製作者が岡田裕介、監督が「八甲田山」「聖職の碑」の森谷司郎で、脚本が「華麗なる一族」「不毛地帯」の山田信夫のオリジナル作品となっています。

現代にもつながる昭和動乱の起点となった、昭和7年の五・一五事件から二・二六事件までの暗い時代を背景に、それに巻き込まれていく男と女の禁欲的な情熱を描いています。

宮城大尉(高倉健)は、脱走し銃殺された貧農の初年兵の姉の薫(吉永小百合)が、娼婦に身を落としている状況の中、鮮満国境で再会します。

キングダム 見えざる敵:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

1996年にサウジアラビアで実際に発生した爆破事件をヒントにしたというものの、映画の設定は、アメリカでの3.11同時多発テロ以降の国際情勢を踏まえた上での展開となっているのは明らかだ。

アメリカなど西側諸国とイスラム世界との対立というデリケートな問題を、エンターテインメントのモチーフにしてしまうところに、アメリカ映画界のしたたかさを感じざるを得ない。

キングダム 見えざる敵:P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
なし
投稿日
2024-07-13

ただ、現地の国家警察に徹底的に監視され、活動を規制されたFBIチームの捜査は一向に進まなかった。
そこで、業を煮やしたフルーリーは、王子に直接訴えるという行動に出るのだ。

当初、対立を繰り返した国家警察のガージー大佐とも次第に共鳴し、テロ組織の深部へと迫っていくのだった--------。

主人公のFBI捜査官、現地警察の大佐、そしてテロ首謀者のいずれの背後にも、家族、特に子供の存在を描き込んだところが、この映画のミソだと思います。

アメリカ映画らしい発想といえばそれまでだが、信仰や立場が違う人々の間に、共通項を示したところに工夫が見られると思います。

最終更新日:2024-10-28 16:00:02

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