八百万石に挑む男 作品情報
はっぴゃくまんごくにいどむおとこ
東海道は金谷の宿場。賭場で負け続けの若者が懐中から短刀を出した。用人棒の赤川大膳の眼が光ったのも道理、紀州家に伝わる家宝の品である。大膳は仲間の藤井左京とその出所を追求するが、若者はさらにお墨付を出して将軍吉宗の落胤だといった。本人の真疑はさておき、短刀とお墨付は本物と睨んだ左京は、美濃の国常楽院の伯父天忠の許へ若者を伴った。話はこの若者宝沢が紀州の永寿寺にいた昔に遡る。当時十三歳の宝沢は幼い頃、祖母から短刀と手紙を見せられた記憶がある。それを聞いた友の柳沢は、本堂の須弥壇の中でその品を見たと告げた。深夜、宝沢はそれを盗み出したが手燭が床に落ち、本堂は焼け落ちた……。常楽院の大忠は宝沢、すなわちこの若者に天一坊の尊号を与えた。折も折、天忠の友で元は九条関白家にその人ありといわれた山内伊賀之亮が訪ねて来た。天一坊と対座した伊賀之亮は、彼が贋物なら天下の徳川相手に乗るか反るかの大勝負を挑むべきだといい放った。天一坊の腹は決った。伊賀之亮はただちに土地の豪農豪商に働きかけて軍資金を集め、天一坊を儀式に慣れさせると同時に、案山子同然の大阪奉行、京都所司代らを相手に御落胤を名乗り出て、天下の耳目を驚かそうという巧妙な作戦を立てた。大阪に発つ前夜、天一坊は強欲な商人武州屋が夜伽に差し出した娘ぬいに、一夜の情をかけた。伊賀之亮の計画は見事に当り、天一坊の美々しい行列は大阪、京都を経て、江戸は八ツ山に入った。すでにわが事成れりと喜ぶ天忠らにひきかえ、伊賀之亮は真の勝負はこれからだと思う。というのも、知恵袋といわれる老中松平伊豆守と名奉行大岡越前守の実力を知っているからであった。果して伊豆守は、その真疑に拘らず天下騒動の基因ともなりかねない天一坊を、贋物として処断する腹なのだ。伊豆守の役宅で越前守と会った伊賀之亮は二人の心底を見抜き、すでに敗れたことを知った。その夜、天一坊の宿舎に幼馴染の柳沢が訪ねて来たが、事の露見を恐れて左京が斬り伏せた。苦しい息の下から柳沢は、天一坊こそ本当の落胤だと告げた。しかし、このとき江戸周辺は、越前守の采配によって蟻一匹這い出す隙もなく固められているのだった。伊賀之亮は最後のはなむけとして、天一坊に乾坤一擲の智恵を授けた。天一坊はわが子を宿して尋ねて来たぬいを冷たく振り切り、死の親子対面に向うのだった。
「八百万石に挑む男」の解説
「南の風と波」の橋本忍の脚本を「「粘土のお面」より かあちゃん」の中川信夫が監督した天一坊をめぐる異色ドラマ。撮影は「はやぶさ大名」の三木滋人。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:中川信夫
出演:市川右太衛門 中村賀津雄 桜町弘子 河原崎長一郎 水島道太郎 仲谷昇 徳大寺伸 松浦築枝 明石潮 伊東亮英 有馬宏治 尾形伸之介 丘郁夫 中村錦司 浪花五郎 中村時之介 国一太郎 長田健二 香月涼二 関根永二郎 山崎二郎 藤田安雄 御橋公 坂本武 柳永二郎 山村聡 河原崎長十郎 |
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配給 | 東映 |
制作国 | 日本(1961) |
上映時間 | 95分 |
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