P.N.「鎌倉の隠居」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2026-05-06
タイトルは、初めて聞く語で、かつて大きな社会問題にもなっていた、と劇中で描かれているのだが、それも知らなかった。それも、そのはず、すべからく現役医師である原作者久坂部 羊の完全なフィクション。辞書には「廃用」なる語はあり、医療用語としては「廃用症候群」というものがあるとのこと。本編では、脳梗塞などで麻痺し、リハビリをしても回復が見込まれない、動かない手足のことが「廃用身」と定義されている。
すでにして現今の最大課題のひとつでありながら、なんらの打開策も見出せていない高齢者医療及び介護問題。本作は、それに対する痛烈な社会批判であり、ある種の問題提起である。
ほんの数年前には『プラン75』から高齢者問題についてある種の問題提起があった(早川千絵監督・ハピネットファントムスタジオ配給)。その年齢に近づき、自分にとっても現実味が増すばかりで、他人事として放置できない。近時の報道では老齢者の医療費比率引き上げ間近かとのこと。防衛費拡充どころの話ではない。もっと広く少子高齢化問題についての未来展望のなさは、あまりに深刻。本作の原作も、初出は2003年。20年以上経過していて、先行きに全く方向性すら見えていないことが、より顕現化している。
染谷将太扮する主人公医師漆原の結末での決断が観ていて苦しい。批判は易し、しかしながら「解」はいずこに。もはや、金品財産の有無ではない。確実にやって来ること明白な「死」に対峙して、われわれはどう留保し、決断すればよいのか。本作が突きつける問題は、あまりに大きく、考えれば考えるほど、途方に暮れるばかり。必見の重要作品である。
