1985年、スウェーデンの俳優ヤン・ジョンソンが体験した実話をベースに、実在の刑務所で撮影が行われた『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』。7月29日(金)より全国公開が決定、ティザーポスターが解禁となった。
何をやってもうまくいかない、人生崖っ淵俳優エチエンヌ。彼にやっとめぐってきた大仕事は、塀の中のワケありクセありならず者たちに演技を教えて更生させること!
彼はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を演目と決め、訳あり、癖ありの囚人たちと向き合うこととなる。エチエンヌの情熱は次第に囚人たち、刑務所の管理者たちの心を動かすこととなり、難関だった刑務所の外での公演にこぎつける。彼らの芝居は観客やメディアから予想外の高評価を受け、再演に次ぐ再演を重ね、遂にはあの大劇場、パリ・オデオン座から最終公演のオファーが届く!果たして彼らの最終公演は観衆の歓喜の拍手の中で、感動のフィナーレを迎えることができるのだろうか?
バイプレイヤーとして俳優の実績を積む傍ら、フィリップ・リオレ監督との共同脚本作品『マドモワゼル』や『灯台守の恋』などで、繊細な心理描写を巧みに描写する筆致が高い評価を得ているエマニュエル・クールコルの監督第二作。ティエリー・カルポニエとの共同脚本となる本作は、1985年、スウェーデンの俳優ヤン・ジョンソンが体験した実話をベースにしている。撮影されたのも実在する刑務所の協力の元に行われた。
ポスターは主人公が、まさに観衆の「喝采」=「アプローズ」を浴びているイメージがデザインされている。コロナ禍の中でリアル開催の中止を余儀なくされた2020年カンヌで、賞を設定しないカンヌレーベルとする公式作品に認定され、その後もフランス公開が延期されていたが、2021年9月にようやく公開されると、ボックスオフィス初登場第二位のビッグヒットを記録した。主演のカド・メラッドは、コメディアン出身の国民的人気俳優。『コーラス』の脇役を演じて注目され、『マイ・ファミリー/遠い絆』でセザール賞助演男優賞を受賞。2008年7月14日には当時のサルコジ大統領の招きで、コンコルド広場で開かれた軍事パレードの「世界人権宣言」前文を読み上げる栄誉ある役を努めている。
映画にとって重要な囚人役の俳優たちは、コメディフランセーズ在籍の俳優など、フランスではまだ知名度の高くない俳優を積極的に起用している。移民や難民、家族、人種、持病、トラウマなど様々なバックボーンを持つ彼らの多様性は、そのまま現代フランス社会の一つの断面を切り取っている。また囚人たちを娑婆へと連れ出すこととなる塀の外での公演が困難な中、主人公のエチエンヌの情熱だけではその実現は叶わなかった。その山を大きく動かしたのが、2人の女性であったことも、この映画の魅力の一つとなっている。
劇中に出てくるサミュエル・ベゲットの『ゴドーを待ちながら』は言わずと知れた不条理劇のスタンダードで、日本でも多くの演出家が取り組んでいる名作。柄本明親子による『柄本家のゴドー』をはじめ、橋本功、石倉三郎など多くの名演出家・名優たちが名舞台を創り出してきている。