映画『はるヲうるひと』山田孝之 インビュー

映画『はるヲうるひと』山田孝之 インビュー
提供:シネマクエスト

いまや大人気の俳優・佐藤二朗が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演され、その後再演された同名舞台を、自身の監督、脚本、出演で映画化した本作。売春産業で成り立っている架空の島を舞台に、行き場のない思いを抱えた人たちが生き抜こうともがく様子を描いた壮絶なストーリーだ。舞台で佐藤監督が演じた役柄に抜擢され、この「ギャグがまったくないシリアスなドラマ」で渾身の演技を見せた主演の山田孝之さんに話をうかがった。
……………………………………………

この映画に出演されたきっかけは?

■山田孝之:2017年だったと思います。『50回目のファースト・キス』でハワイへロケに行ったとき、一緒だった(佐藤)二朗さんに話をいただきました。

役作りで何か注文を受けましたか?

■山田:事前に言われたのは、「金髪にしてほしい」ということだけ。舞台での二朗さんの写真を見て、色を参考にしました。台本を読んで、自分自身で得太という役にアプローチして作り込みました。現場で、特に「こうして、ああして」というのはなかった記憶です。

現場での“映画監督”佐藤二朗はいかがでしたか?

■山田:(撮影は)2年前なので覚えていない部分もあるんですが――。こんなシリアスな題材で、かつ強烈なキャラクターをご自身でも演じるわけですから超主観的にならなきゃいけないのに、同時に監督でもあるから客観的でもいないといけない。監督しながら出演もするなんて、とんでもないことをやってるんだな、この人は、と。ボクはやらないですよ(笑)。監督やプロデューサーをするときは芝居はしない。よくできるなあ二朗さん、と思いましたね。すごく器用で真面目で、優しい先輩!

撮影したのは愛知県知多半島だそうですね。

■山田:クランクイン前日入りしたんですが、得太になってそこにいたから感じたのかも知れないけれど、その日から気持ちがどん底に落ち込みました。合間にほかの仕事も……と思っていたけれど、そんな気持ちにはなれないほど。撮影で使わせていただいた場所は旅館だった建物で、そこを置屋に仕立てて。気のいいご主人が近くでラーメン屋を営んでたので、何度か食べに行きました。

地元の美味しいものも食べましたか?

■山田:得太はきっと上等なものは食べていないし、いつもジャンクなものばかりに違いないと思って、美味しいものは食べに行かないようにしました。安い焼酎を飲んだり。

撮影中の雰囲気はいかがでしたか?

■山田:ワイワイするような雰囲気の作品ではないですからね。なんだか粛々と、みんなで悲惨な絶望を映像に収めていくという感じでした。ボク自身はと言えば、ただ追い込まれて孤独だったという記憶。お気に入りのシーンは、と訊かれれば「ないです」。嫌な過去でしかない(笑)。

得太というキャラクターに共感する部分はありますか?

■山田:ボクは彼よりも、もっと器用に生きられると思うから……。誰しも孤独を感じるわけだから、そこは理解できますよ。ただ、生きてきた環境が違い過ぎるから共感するってほどではないですかね。台本を読んだときに涙が出たのは、得太が可哀そうだと思ったんでしょう。二朗さんが得太というキャラを生み出した瞬間から彼はずっと孤独だったわけだから、ひとりくらい理解してあげる人が必要かなと思って、オファーを受けたところもあるんです。そう、得太に寄り添ってあげようという気持ちかな。

最後にメッセージをお願いします。

■山田:ボクが一瞬だけ、得太に寄り添うことはできたと思うんですが、まだまだ彼は孤独なので、少しでもそういう人が増えたらいいなと思います。得太だけじゃなく、ほかの登場人物もみんな知ってあげてください。

【取材・文】川井英司

■ヘアメイク 灯 (Rooster)
■スタイリング 五月桃 (Rooster)

最終更新日
2021-05-25 11:00:19
提供
シネマクエスト(引用元

広告を非表示にするには