戦後日本文学の最高峰とも称される遠藤周作の「沈黙」(新潮文庫刊)を『タクシードライバー』、『ディパーテッド』のアカデミー賞®監督、マーティン・スコセッシ監督の手によって完全映画化されたことで話題の映画『沈黙-サイレンス-』(原題:Silence)。全米での拡大公開、日本公開を間近に控え、『沈黙-サイレンス-』LAプレミアが、現地時間5日18時にDGA(DIRECTORS GUILD OF AMERICA)にて開催された。
巨匠 マーティン・スコセッシ監督が原作と出会ってから28年、読んだ瞬間に映画化を希望し長年に渡り温め続けてきたという本作。世界最大級、数多くの大作映画を送り出してきた会場となったDGAには、30メートルにわたるレッドカーペットが敷かれ、世界中の期待を一身に集めるキャスト・スタッフ陣に、映画の公開を待ち望む500人を超える人々が待ち構え、米国を始め、世界各国のメディアが多数押し寄せた。
レッドカーペッドにはマーティン・スコセッシ監督をはじめ、棄教したとされる師フェレイラの真実を確かめるために長崎に潜入する主人公ロドリゴを演じたアンドリュー・ガーフィールドが登場。
さらに日本人から、物語の重要な鍵を握るキチジロー役をオーディションで勝ち取りハリウッドデビューを飾った窪塚洋介、ロドリゴに棄教を迫る通辞(通訳)役の浅野忠信、禁教下でも信仰を捨てない敬虔な信者モキチを演じる塚本晋也、そして井上筑後守を演じLA批判家協会賞《助演男優賞》次点となったイッセー尾形らも駆けつけ、ハリウッドのレッドカーペットに豪華キャスト陣が揃った。
本作で日米のキャスト陣が肩を並べて公の場に登場するのは初の機会。28年もの歳月、揺るぐことなく映画化を望み続けたスコセッシ監督を囲んで、日米キャストが顔を揃えたレッドカーペット・イベントは、場内からの盛大で温かな拍手に包まれた。
主演のアンドリュー・ガーフィールドは、「スコセッシ監督と一緒に仕事が出来たことに感謝している。窪塚洋介さん、浅野忠信さん、イッセー尾形さん、塚本晋也さん、皆さんと一緒に仕事が出来て光栄。尊敬の念を深め、強い影響を受けた」とコメントした。窪塚洋介とも2ショットの場面もあり、窪塚が完成した作品に「すごく驚いて、涙が止まらなかったよ」と感想を述べると「映画の中の君は本当に素晴らしかった」とガーフィールドが応じる場面もあった。和服姿で登場した窪塚は「(本編を見て)浅野さんやイッセー尾形さん、塚本さんらが役をまっとうする姿に胸を打たれて、ストーリーとは関係の無いところでも涙を流しました」と、日本人キャストの奮闘を讃えた。「監督が常に見てくれていて、豊かな演技が出来た」という通辞役の浅野忠信は、アンドリューとの共演について「彼は相当役になりきってたから、役と同様あまりコミュニケーションは取らず、厳しく接してくれてとても有り難かった」と振り返った。
「感無量です。作品を観てもう言葉が出なかった」と語るイッセー尾形は、「ガーフィールドとは、全部本番のコミュニケーションだった。(演技をする)彼の心が動いたと思ったら、刺しにいく」ような撮影だったという。海の中で磔にされるという過酷な撮影に挑んだ塚本晋也は、「本当にこの日がくるのが待ち遠しかった」と感慨を述べ、スコセッシ監督の演出で「一番勉強になったのは俳優への配慮と、俳優を自由に演技させる場を整えてくれる」と、映画監督としての現場で学んだことを語った。「尊敬する監督の映画に自分が映っていることか不思議で、まだ信じられない」と、スコセッシ愛をより深くしたようだ。
レッドカーペットには、スコセッシと共に脚本を執筆したジェイ・コックス、名編集者セルマ・スクーンメイカー、プロデューサー陣らも駆けつけ、久しぶりの再会に笑顔が絶えないプレミアとなった。
人の強さ、弱さとは何か? 信じることの意味とは? そして、生きることの意味とは?
人間の普遍的なテーマに深く切り込んだ、マーティン・スコセッシの最高傑作にして本年度アカデミー賞最有力作品。今月にはスコセッシ監督の昨年に続いて再来日も予定されており、日本公開にさらに期待が高まる。