平和への願いが込められた戦争をテーマにした映画がこの夏、続々と公開。8月15日に終戦記念日を迎え、終戦から77年が経ち、戦争の記憶を持つ人たちも少なくなってきた日本ですが、ニュースではウクライナ戦禍の状況が絶えず報道され、台湾問題をめぐり日米と中国が対立を深める昨今。この夏は、戦争映画を通じて、日本と世界の平和について考えてみてはいかがでしょうか?
◆『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』 公開中
イギリスのドキュメンタリー監督ルーク・ホランドが、アドルフ・ヒトラーの第三帝国に参加したドイツ人高齢者たちにインタビューを実施したドキュメンタリー。ホロコーストを直接目撃した、生存する最後の世代である彼らは、ナチス政権下に幼少期を過ごし、そのイデオロギーを神話とするナチスの精神を植え付けられて育った。戦後長い間沈黙を守ってきた彼らが語ったのは、ナチスへの加担や、受容してしまったことを悔いる言葉だけでなく、「手は下していない」という自己弁護や、「虐殺を知らなかった」という言い逃れ、果てはヒトラーを支持するという赤裸々な本音まで、驚くべき証言の数々だった。監督は証言者たちに問いかける。戦争における“責任”とは、“罪”とは何なのかを。
◆『島守の塔』 公開中
沖縄戦末期、本土より派遣された2人の内務官僚がいた。戦中最後の沖縄県知事として沖縄に赴任した島田叡(あきら)と、警察部長の荒井退造。多くの住民の犠牲を目の当たりにした島田は「県民の命を守ることこそが自らの使命である」と決意し、一億総玉砕が叫ばれる中「命(ぬち)どぅ宝、生きぬけ!」と叫び、荒井と共に県民の命を守ろうする。第二次世界大戦の末期、長期にわたる日本国内唯一の地上戦があった沖縄を舞台に、軍の命令に従いながらも苦悩し、県民の命を守り抜こうとした戦中最後の沖縄県知事・島田叡と、知事に付き従い職務を全うしようとした警察部長・荒井退造、2人から命の重みを受け継いだ沖縄県民の戦火に翻弄されながらも必死に生きるそれぞれの姿を描く。
◆『長崎の郵便配達人』 公開中
イギリス王室に仕えマーガレット女王との悲恋が世間をにぎわせた、映画『ローマの休日』のモデルに」なったとも言われるピーター・タウンゼント。後に世界を回りジャーナリストとなった彼が日本で出会ったのは、16歳で郵便配達の途中に原爆の被害にあった谷口綾曄(スミテル)さんだった。核廃絶を訴えた谷口さんを取材し、タウンゼント氏は一冊の小説を出版する。作中では、タウンゼント氏の娘が彼の著書を頼りに長崎の街を巡り、谷口さんとタウンゼント氏の想いを紐解いていく。監督は『紫』、『あめつちの日々』などを製作した川瀬美香。
◆『乙女たちの沖縄戦 白梅学徒の記録』 公開中
反戦映画の名作として何度もリメイクされた『ひめゆりの塔』。しかし、沖縄戦争で動員された女学生は彼女たちだけではなかった。沖縄県立第二高等女学校4年生56名の生徒から編成された白梅学徒もその一つだ。たった18日のみ看護教育を受けた彼女たちは野戦病院に配属され、兵士の治療にあたった。当時の状況を実際に白梅学徒として活動した2名の生存者の証言と共に再現する。ドキュメンタリーパートとドラマパートで分けられており、ドキュメンタリーパートの監督は原発事故の悲劇を描いた劇映画『朝日のあたる家』の太田隆文、ドラマパートの監督は『サクラ花-桜花最後の特攻隊-』や『祈り~幻に長崎を想う刻(とき)』など戦争映画を描き続ける松村克哉。
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