市川実日子「お亡くなりになったものに触れるのがダメ」映画『羊の木』立ちくらみするほど苦労したシーンを激白

市川実日子「お亡くなりになったものに触れるのがダメ」映画『羊の木』立ちくらみするほど苦労したシーンを激白1
市川実日子「お亡くなりになったものに触れるのがダメ」映画『羊の木』立ちくらみするほど苦労したシーンを激白2

 漫画家・山上たつひこといがらしみきおがタッグを組み、2014年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した傑作コミックを、吉田大八監督が映画化した『羊の木』がロングラン上映中。3月23日には東京の渋谷シネパレスでロングラン御礼トークイベントが行われ、元殺人犯の栗本清美を演じた市川実日子と主人公・月末の同級生 須藤勇雄役の松尾諭、監督の吉田大八が登壇しました。

 吉田大八監督の進行で、キャストを呼んで行うトークショーは今回が4回目。まずは監督が登壇し、いつものように市川実日子さん、松尾諭さんを呼び込もうとするが、それを待たずに出てきてしまう松尾さん。「実は僕も一緒に見てたんですよ。気づいてました?」と松尾さんが言うと観客からは驚きの声が。「公開から2ヶ月ほど経ちますがこうして見てもらえてありがたいです」という監督が2人に感想を尋ねると、「今日が3回目の観賞なんですけど、やっぱり面白かったです。改めて結構笑えるところがあるなと。僕がボソッと話してからドラムを叩き始めるシーンとか」と松尾さん。「あそこ面白いですよね」と市川さんも共感すると、監督は「こないだ新宿でティーチインをやったんだけど、その部分に関して“何であんなことをしたんだ!”というお客さんからの指摘がありました」と明かす。「現場でこういう風に言ってくださいと指示があって面食らったシーンでした。そもそもドラムの練習でいっぱいいっぱいだったので…」と振り返る松尾さんはドラム初心者だったそうで、「撮影は一日だけでしたが、ドラムの練習は7日間しました。せっかく練習したので、音楽スタジオの会員証を作りましたよ!」と明かすと観客からは驚きとともに、笑いが漏れた。
 サスペンスフルなシーンもある本作に関し、「市川さんは恐い映画は苦手なんでしょ?」と監督。「試写の時は(怖がってしまって周りの方に)ご迷惑をおかけしました」と謝る市川さん。動物の死骸に触れるシーンを回想し「お亡くなりになったものに触れるのがダメなんですよ」と明かし、「その撮影の夜、ホテルの部屋でクラっとしてしまって。全然大丈夫だったんでんすけど」と驚きの告白が飛び出した。「やっぱり一つの役に魂を込める女優さんと伺ってるんで。本当に素晴らしかったですよね?」と松尾さんが観客に同意を求めると、客席からは拍手が起こり、市川さんは赤面。

 市川さんが注目したポイントは、今作で初共演した水澤紳吾さん。水澤さんと交友のある松尾さんから裏話も飛び出す中、「(終盤のシーンで)水澤さんの目がとても大きくなるんですよね。それまでは目が細いのに、すごく見開いてて、光もちゃんと入ってて」とその表現力に驚いたという市川さん。「あれは僕からは何も指示していないです。俳優が監督にも共演者にもあえて何も言わずに、その場のカメラの前で何か出したくなる瞬間というのはやっぱりあるんですかね」と答える監督。一方で市川さんが気になっていたのは、松尾さんの起用理由だという。「どうして錦戸さんの同級生役に松尾さんなんですか?(同級生に)見えます?」と観客に問いかける市川さん。「出てたやろ、同級生感」と反論する松尾さん。客席からも笑いと頷きが。
 松尾さんが7日間練習して挑んだというバンド演奏シーンに話が及ぶと、「僕も(木村)文乃ちゃんも楽器初めてなんですよ。でも、錦戸くんはギターもドラムも出来るんですよ。だから、演奏シーンではちょっと余裕のある感じになってる」と松尾さん。そのシーンについて市川さんは「ベースがそういう役割なのか、すごく2人のことを見ているなと思っていました」と、感想を述べた。松尾さんのドラムに関して監督も、「音楽のスタッフも、あの練習量でこれだけ叩けるのは相当センスがあると褒めてたんですよ」と太鼓判。
 市川さんの演じた元殺人犯・栗本に関しては、「栗本と(松田龍平演じる)宮腰は人間じゃないんです、って監督に言われたのを覚えてます」と話した市川さん。「市川さんや松田さんじゃなかったらダメだったと思ったし、2人に本当に助けてもらったなと思います」と振り返る監督。市川さんは、「栗本の場合は“こうだからこうする”というのを考えちゃうとできないんですよ。途中から、動物なんだなと思って。初めての人には警戒する、観察する、みたいな」と役柄への独特のアプローチについて語りました。そして、元殺人犯6人のうちで、その部屋が映るのが、市川さん演じる栗本だけだったという話になり、監督は、「僕は映画の中で部屋を作るのがすごく苦手なんですよ。自分でシナリオを作っていても、部屋っていうものになじみと関心があまりないんだと思う。でも、栗本が部屋で一人でいるシーンを作りたかったから、あの部屋を見つけて、そこに市川さん演じる栗本がハマってくれてよかったなと。この部屋にちゃんと栗本が住んでるように見えているとホッとしたことを思い出しました」と意外なエピソードを披露。
 また、テイク数が多いことで知られる吉田組の現場に関し、「一回でOKだったのは何回くらいでしたかね?1回でOKになると、ほんとに?って。俳優同士で自慢話になる感じでした。もちろん、いい意味で、ですよ」と市川さん。松尾さんは「監督の演出はすごく丁寧だし、何がやりたいのかが分かるし、ちゃんとしたものを作ろうという姿勢が伝わってくるので僕はすごく楽しかったですよ!」と話した。

 イベント終盤、市川さんの提案で急遽客席とのQ&Aを実施。「栗本は何を信じて、何を疑っていたんでしょうか?」という質問には「羊の木の絵が描いてある缶を見て、死んだ生き物を埋めたら、また会えるんだっていうことを信じてたり・・・この人はすごくいろんなことを信じてると思います。警戒はするんだけど、疑っていないというか」と答えた市川さん。『シン・ゴジラ』でも共演した市川さんと松尾さんの気心知れた仲むつまじい軽快なやり取りに、客席は最後まで大盛り上がり。終始アットホームなイベントとなりました。

(C)2018『羊の木』製作委員会 (C)山上たつひこ いがらしみきお/講談社

最終更新日
2018-03-27 11:20:00
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