からたち日記 作品情報
からたちにっき
つるはものごころついたとき、長野県塩尻に近い村の地主の家で子守をしていた。彼女が知ったのは、ひもじいは辛いもの、人間とは恐ろしいもの、ただそれだけだった。ある日、叔父の勘太につれられ、諏訪の芸者屋に売られていった。途中、母という人に会わせてくれた。母はつるを生んだのち山間の貧農へ嫁したのだ。芸者屋・竹の家で因業な主人せつや先輩芸者たちにこきつかわれた。竹実姐さんが無理なお座敷づとめで腹膜をこじらせて死んだとき、かるた姐さんはせつの仕打ちをののしり、店をやめた。やがてつるは半玉になった。せつが彼女を呼んでいった。今夜、一人前になるんだよ。相手は土地の興行師ロンパリである。つるは驚かなかった。運命に捨身で従おうと思った。翌日、つるはみじめだった。いつか半玉の天満里と一緒に登った城趾の大木にしがみつき、大声をあげて泣いた。ロンパリが彼女を身うけし、三号にした。毎日、ぼんやり暮した。戦争が激しくなり、つるは軍需工場につとめた。女工たちは彼女に冷たかった。その鼻をあかそうと、人気のある青年将校本山に近づいた。それが、いつか恋していた。生れて初めての恋。だが、本山は戦地に発った。つるはさえぎるロンパリをふりきり、駅へ走ったが、遅かった。ロンパリをしくじってはこの土地にいられない。つるは弟の忠夫をつれ、千葉のかるた姐さんをたずねた。戦災、敗戦、生活苦が待っていた。ヤミの石鹸売りをして暮した。たのみの弟が栄養失調から腸結核になった。彼は姉に苦労させたくないと自殺してしまう。つるは昔せわになった一力の女将を頼って、また諏訪へ行った。本山は市会議員になっていた。妻があったが、つるにはそれでもよかった。が、彼の妹民子の頼みで、つるはすべてをあきらめ、天満里のいる町へいった。酒におぼれる日が続いた。真昼間から酔って暴れたとき、百姓の東作から思い切りなぐられた。それがつるを目覚めさせた。一日一日を人間らしく生きよう。本山が力になりたいとたずねてきた。つるは自分一人で生きていけるといった。本山と峠で別れた帰途、つるは東作が麦ふみをしているのを見た。彼女ははだしになって麦ふみを始めた。
「からたち日記」の解説
信州の貧農の家に生れた一人の女性の一生を描いたもの。増田小夜の原作を「才女気質」の新藤兼人が脚色、「蟻の街のマリア」の五所平之助が監督した。撮影は「人間の条件 第1・2部」の宮島義勇。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:五所平之助
原作:増田小夜 出演:高千穂ひづる 水原真智子 泉京子 紫千代 南風洋子 田代百合子 村田知栄子 浦辺粂子 田村高廣 東野英治郎 磯野秋雄 関千恵子 不破たか子 織田政雄 飯田蝶子 殿山泰司 清村耕次 柴田昭雄 島倉千代子 伊藤雄之助 吉川満子 永田靖 小林十九二 菅井きん |
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配給 | 松竹 |
制作国 | 日本(1959) |
上映時間 | 119分 |
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