おとうと(1960) 作品情報

おとうと

げんと碧郎は三つちがいの姉弟である。父親は作家で、母親は二度目であり、その上手足のきかない病で殆ど寝たきりだった。経済状態も思わしくなく、家庭は暗かった。碧郎が警察へあげられた。友だちと二、三人で本屋で万引したのが知れたのだ。しばらくたったある日、げんは鳥打帽の男に呼びとめられた。男は警察の者だと名のり、碧郎や家のことを聞いた。男は毎日のようにつけ始めた。そんなげんを碧郎は「親がちょっと名の知られた作家でよ、弟が不良で、お母さんが継母で、自分は美人でもなくて、偏屈でこちんとしている娘だとくりゃ、たらされる資格は十分じゃないか」というのだった。転校してからも碧郎の不良ぶりははげしかった。乗馬にこりだし、土手からふみはずして馬の足を折ってしまった。碧郎はその夜童貞をどこかへ捨てた。二年たった。十七になった碧郎に思わぬ不幸が訪れた。結核にやられたのである。湘南の療養所へ転地し、げんが附きそった。死が近づいてくるのを知った碧郎は、げんに高島田を結うよう頼んだ。「姉さんはもう少し優しい顔する方がいいな」といいながらも、げんの高島田を見て碧郎はうれしそうだった。父が見舞いに来た時は、治ってから二人で行く釣の話に夢中だし、足をひきずってきた母には、今までになく優しかった。夜の十二時に一緒にお茶を飲もうと約束して寝たげんは、夜中に手と手をつないだリボンがかすかに引かれるのを感じて目を覚ました。医者が来た。父や母も飛んできた。「姉さんいるかい」それが碧郎の最後の言葉だった。風のある晴れた寒い夜だった。

「おとうと(1960)」の解説

幸田文の原作を、「キクとイサム」の水木洋子が脚色し、「ぼんち」の市川崑が監督した、若い姉弟の物語。撮影は「切られ与三郎」の宮川一夫。この作品では時代の雰囲気を出すために彩度を落としコントラストを残す現像方法「銀残し」が生み出された。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督市川崑
原作幸田文
出演岸恵子 川口浩 田中絹代 森雅之 仲谷昇 浜村純 岸田今日子 土方孝哉 夏木章 伊丹十三 佐々木正時 星ひかる 飛田喜佐夫 伊東光一 江波杏子 穂高のり子 森矢雄二 横山明 森一夫 篠崎一豊
配給 大映
制作国 日本(1960)
上映時間 97分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2021-03-25

山田洋次監督版リメイク映画〈おとうと〉は本篇の市川崑監督に捧げられる。凝った映像の名篇,監督・市川崑ワールドももう一度観て見たい

最終更新日:2024-11-20 02:00:03

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