蒲田行進曲 作品情報

かまたこうしんきょく

ここは、時代劇のメッカ、京都撮影所。今、折りしも「新撰組」の撮影がたけなわである。さっそうと土方歳三に扮して登場したのは、その名も高い“銀ちゃん”こと倉岡銀四郎である。役者としての華もあり、人情家でもあるのだが、感情の落差が激しいのが玉にキズ。こんな銀ちゃんに憧れているのが大部屋俳優のヤス。ヤスの目から見れば銀ちゃんは決して悪人ではない、人一倍、仕事、人生に自分なりの美学を持っているだけだ。ある日、ヤスのアパートに銀ちゃんが、女優の小夏を連れて来た。彼女は銀ちゃんの子供を身ごもっていて、スキャンダルになると困るのでヤスと一緒になり、ヤスの子供として育ててくれと言うのだ。ヤスは承諾した。やがて、小夏が妊娠中毒症で入院するが、ヤスは毎日看病に通った。その間、ヤスは、撮影所で金になる危険な役をすすんで引き受けた。小夏が退院して、ヤスのアパートに戻ってみると、新品の家具と電化製品がズラリと揃っていた。だが、それとひきかえにヤスのケガが目立つようになった。それまで銀ちゃん、銀ちゃんと自主性のないヤスを腹立たしく思っていた小夏の心が、しだいに動き始めた。そして、小夏はヤスと結婚する決意をし、ヤスの郷里への挨拶もすませ、式を挙げて新居にマンションも買った。そんなある日、銀ちゃんが二人の前に現われた。小夏と別れたのも朋子という若い女に夢中になったためだが、彼女とも別れ、しかも仕事に行きづまっていて、かなり落ち込んでいるのだ。そんな銀ちゃんをヤスは「“階段落ち”をやりますから」と励ました。“階段落ち”とは、「新撰組」のクライマックスで、斬られた役者が数十メートルもの階段をころげ落ち、主役に花をもたす危険な撮影なのだ。ヤスは大部屋役者の心意気を見せて、なんとか銀ちゃんを励まそうと必死だった。“階段落ち”撮影決行の日が近づいてきた。ヤスの心に徐々に不安が広がるとともに、その表情には鬼気さえ感じるようになった。心の内を察して、小夏は精一杯つくすのだが、今のヤスには通じない。撮影の日、銀ちゃんは、いきすぎたヤスの態度に怒り、久しぶりに殴りつけた。その一発でヤスは我に帰った。撮影所の門の前で、心配で駆けつけた小夏が倒れた。“階段落ち”はヤスの一世一代の演技で終った。小夏がベッドの上で意識を取り戻したとき、傷だらけのヤスの腕の中に、女の子の赤ん坊が抱かれていた。

「蒲田行進曲」の解説

撮影所を舞台に、スターと大部屋俳優の奇妙な友情、そしてこの二人の間で揺れ動く女優の姿を描く。第86回直木賞を受賞したつかこうへいの同名小説の映画化、脚本もつか自身が執筆、監督は「道頓堀川」の深作欣二、撮影は北坂清がそれぞれ担当。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1982年10月9日
キャスト 監督深作欣二
原作つかこうへい
出演松坂慶子 風間杜夫 平田満 高見知佳 原田大二郎 蟹江敬三 岡本麗 汐路章 榎木兵衛 高野嗣郎 石丸謙二郎 萩原流行 酒井敏也 清水昭博 佐藤晟也 清川虹子
配給 松竹
制作国 日本(1982)
上映時間 109分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、6件の投稿があります。

P.N.「水口栄一」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2022-10-19

蒲田行進曲をあらためて観て、とても感動した。私は40代の頃からある芸能プロダクションに所属している。東映京都撮影所は何度も通った所だ。俳優会館もよく知っている。それだけにこの映画はあまりにも親近感があった。銀四郎もヤスも小夏も私のすぐそばにいるような気がした。深作欣二監督はこの映画を報われることなき情念のドラマと言われているが、これは何よりも生きるパワーを与えてくれると私は思った。ラストシーンで私はまた涙ぐんだ。ヤスと小夏が愛しくてたまらない。また銀四郎も大好きになった。私にとって一生忘れることができない映画だ。今も時々、蒲田行進曲を茶の間で聴いている。また映画が鮮やかに甦る。素晴らしい作品だ。

最終更新日:2024-08-01 02:00:06

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