甘い生活 作品情報
あまいせいかつ
作家志望の夢を抱いてローマに出た青年マルチェロ・ルビーニ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、今は社交界ゴシップ専門のトップ屋となった。憧れた都は退廃と無気力以外の何ものでもなかった。カトリックもキリストの像をヘリコプターで運ぶなど、華やかな示威をした。豪華なナイトクラブでは、ローマの大富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)にめぐり会った。場末の夜の女の宿でマルチェロと一夜をすごすことも、彼女にとってはほんの気まぐれだった。郊外のわびしい家に帰った時、マルチェロは同棲中の愛人エンマが服毒して苦しんでいるのを見た。しかし悔いる気持も永くは続かなかった。彼はハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を迎えると、野外で狂乱の宵を過し、名所トレーヴィの泉で戯れた。ローマ地方の郊外で奇蹟が起きた。再び聖母出現の日の聖地はテレビ・カメラに包囲され、奇蹟にあやかろうと横たわる病人の上に豪雨が降りそそいだ。日頃マルチェロのため悩みの絶えぬエンマは熱狂して信じた。二人は友人スタイナー(アラン・キュニー)の家を訪れ、調和と安らぎに満ちたその生活を羨んだ。或る夜、豪壮な館のパーティーに出たマルチェロは、虚脱したように歓楽をむさぼる貴族たちの仲間入りをした。スタイナーは死んだ。子供を連れた無理心中だった。平和に見えた一家のこの悲劇の深さはマルチェロの残った夢をすべて消した。その場限りの快楽の他に今の彼は何を望んだろう。やがて海に近い別荘でこの世のものとも思えぬ乱痴気騒ぎの狂宴がくりひろげられた。マルチェロは自ら狂乱の中に没入した。夜明け方、人々は快楽に疲れ果てた体をひきずって海辺に出た。波打ち際に打ち上げられた怪魚は、腐敗し悪臭を放ち、彼らの姿そのものだった。彼方から顔みしりの少女ヴァレリアが何か叫んでいる。その声は波に消されて彼の耳には入らない。真実の生命の清純さに溢れる少女に背を向けて、マルチェロは砂浜を別荘の方へと戻って行った。
「甘い生活」の解説
「崖」のフェデリコ・フェリーニ監督作。退廃したローマ上流社会が描かれている。フェリーニとトゥリオ・ピネリ、エンニオ・フライアーノが共同で書いた原案を、この三人にブルネロ・ロンディが加わった四人が共同脚色した。撮影は「青春群像」のオテロ・マルテリ、音楽は「戦争と平和」のニーノ・ロータが担当。出演するのは「掟(1959)」のマルチェロ・マストロヤンニ、「ローマの旗の下に」のアニタ・エクバーグ、「恋人たち」のアラン・キュニー、「今晩おひま?」のアヌーク・エーメら。製作ジュゼッペ・アマート。一九六〇年カンヌ映画祭でグランプリを受賞した。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ アニタ・エクバーグ アヌーク・エーメ レックス・バーカー イヴォンヌ・フルノー アラン・キュニー マガリ・ノエル ナディア・グレイ ジャック・セルナス アンニバレ・ニンキ Walter Santesso リカルド・ガローネ カルロ・ディ・マッジョ レネ・ロンガリーニ ヴァレリア・チャンゴッティーニ オードリー・マクドナルド ポリドール |
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配給 | イタリフィルム |
制作国 | イタリア(1960) |
上映時間 | 185分 |
(C)1960 RTI
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、5件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-11-30
この映画「甘い生活」は、高度経済成長期のローマの上流社会のデカダンスを、オムニバス形式で壮大に描いたフェデリコ・フェリーニ監督の代表作で、以後の自伝的傾向と、フェリーニ流のエンターテインメント世界の原型とも言えると思う。
次から次へ、色々なシーンが出てきて、フエリーニ監督の面目躍如といったところだ。
特に主演のマルチェロ・マストロヤンニ演じるジャーナリストの個性が光っている。
さらにアニタ・エクバーグの女優が、トレビの泉へ踊りながら入って行くシーンは、素晴らしかった。
キリストの像をヘリコプターで運んでいるシーンが出てきたり、奇妙な顔をした怪魚が打ち上げられたり。
まさに、フェリーニ監督が現代の人間に警告を発している作品だと思う。