P.N.「鎌倉の隠居」さんからの投稿
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2026-05-23
ある意味、アート系作品である。物語そのものには難解さは全くない。柄本佑扮する主人公が、九州にある妻(穂志もえか)の実家へ、自ら代わって足を骨折して難儀している父親の身の回りの世話にしていくという設定。義父役はイッセー尾形。このふたりの配役で、観る前から作品の上質さが担保されている。妻の実家は古くからの写真館である。東京にいる妻と娘とのスマホで交わす日々の報告は何気なく、淡々と日々が重ねられて観客もそれに同席する、という構えで、その中にいくつかの物語が重なり合う。大きな事件は何も起こらない。激烈なアクションとも縁遠い。しかし、VFXがさりげなく効果的に動員されて、あたかも人の内面を可視化するごとくスクリーンに彩りが施される。
監督・脚本の坂西未郁の初長編作品。静謐さのなかに、その意欲と、映画に向かう志とが揺蕩っている。地味ながら、心の奥底に滲み入る佳品である。全国公開は6月12日(金)より。
