監督・濱口竜介 × 編集・山崎梓対談 学生時代からタッグを組む2人が製作の裏側語る「監督業は進んでいる時間の最前線にいる感覚」(濱口竜介監督)母校東京藝術大学凱旋『ドライブ・マイ・カー』トークイベント

監督・濱口竜介 × 編集・山崎梓対談 学生時代からタッグを組む2人が製作の裏側語る「監督業は進んでいる時間の最前線にいる感覚」(濱口竜介監督)母校東京藝術大学凱旋『ドライブ・マイ・カー』トークイベント
提供:シネマクエスト

主演に西島秀俊を迎え、村上春樹の短編を映画化した濱口竜介監督最新作『ドライブ・マイ・カー』(8/20(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開)が、第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて日本映画として初となる脚本賞を受賞!また、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞という3つの独立賞も受賞し、4冠受賞という偉業を達成。さらには、北米プレミアとなる第46回トロント国際映画祭への正式出品も決定するなど、日本公開を前に世界から大きな注目を集めている。そんな話題の渦中の本作は、東京藝術大学大学院映像研究科と横浜市文化観光局が連携・協力する文化芸術創造都市づくりの地域貢献事業への取り組みの一環として、同校2期監督領域修了生の濱口竜介監督と、『ドライブ・マイ・カー』の編集を務め同校編集領域修了生山崎梓を招き8月7日(土)にトークイベントが開催された。

カンヌからの帰国後初となる対面でのイベントに濱口監督は「去年はコロナでカンヌ国際映画祭が中止だったため、二年ぶりの開催で、現場の人数は少なかったですが、熱気は例年以上でした」と映画祭の感想を述べた。

今回のイベントでは編集担当の山崎梓との対談形式という事で、編集という観点で本作の製作について会話が弾む。2020年11月から撮影が開始された『ドライブ・マイ・カー』は未編集の素材が50時間を超え、プレビューだけでも一週間はかかったそう。それに対して監督は「現場でOKや、NGというものはほとんど出さず、すべて終わった後に使うシーン、そうでないシーンを決めるというスタイルをとっています。理由としては自分の目が必ずしも信用できないからです。現場で良いと思ったものが、改めて観るとやはり違っていたり、逆に現場でNGと思ったものが良かったりするので、編集の山崎さん含め複数のスタッフとプレビューを観るのはとても重要な作業なんです」と自身の製作のスタイルを解説。この手法は映画監督としては珍しい手法だが、丁寧な描写が特徴的な濱口監督作品の作風の所以が明らかとなった。編集の山崎梓も「珍しい手法ですがこれが監督の特徴でもあります。映画監督とはそれぞれの色がありますので、一緒に作業をしてやりやすいのが一番重要だと思います」と発言。山﨑梓は濱口監督が在学中に制作した作品『THE DEPTHS』(2010年)で初めてタッグを組み、その後しばらく時間があき『寝ても覚めても』(2018)で再度タッグを組んだ。

濱口監督は自身でも編集作業はできるが、他の人に編集を任せることについて「自分の評価は自分ではできないので、複数の人間、つまりたくさんのフィルターを通した方が、映画はいいものになると思っています。監督と同じく編集者にも色々な特徴がある人がいますが、山崎さんは監督の意図をしっかり聞いてくれるスタイルだったので、私の求めている編集者だったんです」と山崎梓と仕事に誇らしげな表情を浮かべた。山崎梓本人も「編集者として膨大な素材を選定していく作業をしていくわけですが、いま何の作業をしているのか、なにを目指して編集をすればいいのかという意図がはっきりしていないのが一番苦しいので、監督にはその点についてしっかり聞くようにしています」と2人のコンビネーションの良さを語った。

今回のイベントでは学生から、濱口監督に質問も飛んだ。複数のカメラを使うことについて問われると監督は「まず複数のカメラを使う意味は、役者の負担を減らすことと、単純に時間の節約になるためです。本作の場合だと、車の走行シーンはリテイクがかかるとバックでスタート地点に戻るのではなく、ぐるっと遠回りをしてスタート地点に戻る必要があるため、それだけでかなりの時間ロスになってしまうので、できるだけカットは多い方が良い。そして役者の演技とはその場でやってみないとどのような仕上がりになるか分からないので、同じく複数アングルがあった方が良いんです。だからこそ現場ではOK、NGはその場で判断することはあまりしないんです」と映像制作の学生ならではの質問に、製作上のコツを教えてくれた。さらに、シンプルに監督としての原動力は何かという問いには「単純に楽しいからです。それと人生は繰り返しの毎日を送ることが多いかもしれませんが、監督業とはそうではないんですね。常に色々なことが起こって生きている実感があります。進んでいる時間の最前線にいる感覚が、僕にとっては映画だったんです」と監督が監督であり続ける根源を語ってくれた。そんな濱口監督が山崎梓と製作した最新作『ドライブ・マイ・カー』が今月20日(金)に公開を控え、非常に注目の一本となっている。

最終更新日
2021-08-09 09:00:39
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シネマクエスト(引用元

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