ホロコーストを生き延びた16歳の少女クララと、42歳の医師アルドの二人が、年齢差を超えて心をかよわせ人生をふたたび取り戻す感動作『この世界に残されて』が、いよいよ12月18日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開となる。
ナチス・ドイツによって約56万人ものユダヤ人が殺害されたと言われるハンガリー。終戦後の1948年、ホロコーストによって家族を喪った16歳のクララは、ある日寡黙な医師アルドに出会う。彼もまた、ユダヤ人収容所から生還した一人だった。クララは父を慕うようにアルドを頼り、アルドはクララの新たな保護者となることで人生を取り戻す。だが、ソ連の弾圧により世の中が不穏な空気に包まれると、世間は二人に対しスキャンダラスな誤解を抱き、二人の運命は再び時代に翻弄されていく――。傷ついた者たちが痛みを分かち合うことで生きる希望を見出す姿を、叙情的に節度をもって描いた静かな名作が誕生した。
このたび12月18日からの公開を前に、16歳のクララと42歳のアルドが、年齢差を超えて「ソウルメイト」と呼ぶべき互いの存在を認識し、擬似父娘のような愛情が芽生える瞬間の本編映像が解禁となった。
映画は、寡黙な婦人科医アルドのもとに、大叔母に付き添われてクララが診察を受けに現れるシーンに始まる。診察からしばらく経ったある日、一人で病院を訪れたクララは、仕事を終えたアルドに「送ってあげる」と言うと、そのままアルドの家に上がり込んでしまうのだが、今回解禁となるのは、アルドのアパートの一室でのシーン。質素なアパートで一人暮らしをするアルドの家に上がり込んだクララは、アルドに自分と同じような心の欠落を感じとり、「残された私たちのほうが不幸よ」と本音をもらすが、アルドの言動にいちいち反抗的な態度をとり、一緒に暮らす大叔母の愚痴ばかり。厳しくたしなめたアルドの姿に、今は亡き父親のおもかげを見出したクララは思わず抱きついてしまう…。そして、彼女を送り届けたアルドに、別れ際「もう一度…抱きしめてもらえますか?」と頼むクララ。帰宅後、クララは今は亡き両親あてに手紙を綴り、アルドがどんな人物かを語る。クララを送り届け、顔を洗うアルドの腕には、ユダヤ人強制収容所にいたことを示す数字がーーというシーンになっている。
少女クララを演じたのは、これが映画初主演となるアビゲール・セーケ。クララの悲しみや怒り、諦念をリアルに表現し、「アルドの心の翳りに寄り添い続ける彼女の演技は感動的」(バラエティ誌)「心に傷を負った思春期の少女を演じるセーケが素晴らしい」(ハリウッド・レポーター誌)と高く評される名演を披露した。ハンガリーを代表する名優カーロイ・ハイデュクが、クララを支え無償の愛を注ぐアルドに扮し、ふとした仕草やまなざしに思いやりを感じさせる繊細な演技で、ハンガリーアカデミー賞およびハンガリー映画批評家賞で最優秀男優賞を受賞した。これまでおもに短編映画を手がけ高い評価を受けてきたバルナバ―シュ・トートが監督を務め、ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作『心と体と』のモーニカ・メーチとエルヌー・メシュテルハーズィが製作を手がけ、孤独な男女の心の結びつきを丁寧に描く名作をふたたび世に送り出した。
『この世界に残されて』本編映像
https://youtu.be/eaML_njEb3c