第149回直木賞受賞作 桜木紫乃原作『ホテルローヤル』が実写映画化・2020年冬に公開されることが決定した。原作は2013年に第149回直木賞を受賞し、累計発行部数85万部(電子書籍を含む)を超える桜木紫乃の代表作。発売元の集英社で「ここ5年で発売した中で最も売れた」単行本・電子書籍としても知られ、今なお性別を超えて多くの読者を獲得している。北海道の湿原に立つラブホテルを舞台に、現在から過去へ時間軸を遡り、ホテルの盛衰とそこを訪れる人々の生と性を、切なくも瑞々しいタッチで描いた七編からなる連作小説。映画では、原作の持つ静謐な魅力をそのままに、閉塞感のある日常を離れ、ホテルローヤルの扉をひらく男と女、問題を抱える経営者家族・従業員のそれぞれの人生模様をホテルの経営者家族の一人娘・雅代を主軸として繊細に綴られる。
メガホンをとるのは、『百円の恋』(14)で日本アカデミー賞をはじめ国内外の各映画賞を総なめにし、その後も『きばいやんせ!私』(19)などで一本芯の通った女性像を描いてきた武正晴監督。『嘘八百』(18)、『銃』(18)、『嘘八百 京町ロワイヤル』(20)、Netflix「全裸監督」の総監督と精力的に作品を手がける日本映画屈指の才能が、いよいよ直木賞原作の映画化に挑む。脚本は、現在放送中のNHK連続テレビ小説「エール」を手掛ける清水友佳子。人間の抱える欲望や優しさ、悲哀を丁寧に救い上げる珠玉の人間ドラマが、いよいよ2020年冬公開となる。なお、主要キャストは後日発表される予定となっている。
【監督:武 正晴】
コメント
桜木紫乃さんの名作を映画化できるとお話しをいただき5年。ようやく映画が完成でき、ホッとしている。原作を読んで「ホテルローヤル」というホテルそのものを主人公にできないかと妄想した。どうしても釧路で撮らなくてはと考えた。釧路という土地が我々撮影隊に力を与えてくれた。桜木さんが我々のシナリオに自由を与えてくれた。この原作に惚れ込んだ素晴らしいキャストとスタッフが集結して挑んでくれた。僕の敬愛する啄木が、さいはてと呼んだ土地での仕事を僕は一生忘れないだろう。釧路、札幌、北海道の土地のおかげで、唯一無二の映画が創れたと自画自賛している。
【原作:桜木紫乃】
コメント
あの日あの場所にいたかもしれない人を、小説というかたちで裸にしたと傲慢にも信じていたので、
映像化のお話をいただいたときは「遠慮なく好きに作ってくださいね」などと言っていた。
しかし新たな姿で目の前に現れた「ホテルローヤル」は、あの日あの場所にいたかもしれない
経営者やホテルに集う「家族」の物語となっていた。
正直に言うと映画という表現に書き手の内面を素っ裸にされたような気持ちになった。
脱がせたつもりが脱がされていた――エンドロールで泣いてしまうという失態。悔しかった。