お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹の爆発的な大ベストセラー「火花」に続く、第2作目である小説「劇場」が遂に実写映画化。4月17日(金)に配給:松竹 アニプレックスより公開される。作家・又吉直樹が芥川賞受賞作品となった「火花」より前に書き始めていた、作家の原点とも言える恋愛小説「劇場」。“恋愛がわからないからこそ、書きたかった”と又吉が語る2作目は、劇作家を目指す主人公・永田と、彼に恋をして必死に支えようとする沙希の、生涯忘れることができない恋を描いた恋愛小説。監督を務めるのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)『ナラタージュ』(17)等、時代ごとに新たな恋愛映画のマスターピースを贈り続けてきた行定勲監督。恋愛における幸せと背中合わせのどうしようもない葛藤や矛盾を真っ向から描いており、令和の時代に新たな恋愛映画の傑作の誕生を感じさせる。
主演を務めるのは、興行収入57億円を突破した『キングダム』の大ヒットの記憶も新しい、今最も輝く俳優、山﨑賢人。演劇に身も心も捧げながら、実生活では社会や周囲の人々とうまく協調できない不器用な青年・永田を、撮影前に何度も監督とエチュードを重ね役を作り上げたという山﨑は、これまでに見たことのない表情で挑んでいる。ヒロインを務めるのは、『万引き家族』(18)で世界に認められた若き実力派女優、松岡茉優。葛藤や迷いを抱えながらも、純粋に彼を愛そうとする健気な沙希を、儚くも愛しく演じている。更に『下忍 赤い影』(2019)で主演を務めた寛 一 郎、「全裸監督」(2019)、「映像研には手を出すな!」(2020)など話題作への出演が続く伊藤沙莉、「あなたの番です」(2019)での刑事役で話題となった浅香航大、そして昨年紅白出場も果たした人気バンド「King Gnu」のボーカル井口理ら、多才な顔ぶれが集結している。
そしてこの度、3月25日(水)に完成記念イベントが実施され、主演の山﨑賢人、ヒロインの松岡茉優、共演の寛 一 郎、メガホンをとった行定勲監督、そして原作者の又吉直樹が登壇、コロナウイルス拡散防止の観点から試写は実施せず、ゲストは映画『劇場』のタイトルにかけて、劇場客席にてトークを行った。
完成した映画の感想を聞かれた山﨑は「初めて原作を読ませて頂いたときに絶対永田を演じたいなと思いました。いざ撮影をさせて頂いて、永田の人間としての弱さや愚かさが自分の中で魅力的で共感できますし、映画としての“劇場”がいい作品になったなと思っています」とコメント。松岡は「最初にお話しを頂いて台本を読んだときに、言いたい台詞がたくさんありました。誰かを想ったことがある人には必ず響く作品になっていると思います。ご自身の大事な人やモノと重ね合わせながらこの物語を観てくれたらと思います」と話し、寛 一 郎は「お客さんがいない中での舞台挨拶って慣れないですよね。なんか会見みたい(笑)原作は出演が決まる前から読んでいて、永田と共通する部分は無いはずなのに彼の感情の機微が痛いほど分かるんです」と語った。又吉は「 『劇場』は大切にしている小説でして、映像化されたものを観たときに、すごく原作を大切にしてくださっているのを感じると共に、僕自身が分かっていなかったことが映像を見ることで発見出来たりもしたので、原作を読んでくださった方にも観て頂きたいですし、自信をもってお勧めしたいと思います」とコメント。行定監督は「すごく思い入れのある作品になりました。原作が出版されてすぐに読んで、読み終わったらこの映画のラストシーンが思い浮かんだんです。これは他の人には撮らせたくない!と思ってプロデューサーにすぐ電話したのを思い出します」と自らが原作に惚れ込み、積極的に映画化に関わったことを明かした。
《ここは絶対観て頂きたい!という推しシーン》について聞かれた山﨑は、「ラストは絶対観て欲しいのですが、松岡さんを後ろに乗せて自転車で二人乗りするシーンですかね。すごく頑張ったので(笑)」とコメント。松岡が「私を後ろに乗せながら自転車を漕いで4ページ分ぐらいのセリフがあって、更に長回し一本撮り。しかも噛まないんですよ。信じられない!」とそのシーンの山﨑を絶賛。又吉はそのシーンの松岡にも触れ、「松岡さんはセリフが無いのに態勢だけですごく感情が伝わってくるんですよね。あそこは是非観て頂きたいですね」と原作者からもお墨付きのシーンとなった。
その又吉は「永田と沙希が二人で部屋にいるシーンはどれも好きなんですけど、沙希が壁にもたれてベッドに座ってパンを食べているシーンがヤバいですよね(笑)あの空間と二人の距離と関係性というのが大好きですね」と語り、行定監督は、「あのシーンの撮影の頃になると僕は松岡茉優に指示を出さないって決めていて。最初のうちは指示していたんだけど悉く松岡が違うことやってくるんです。それが面白いわけですよ(笑)どこに座りたいって聞いたら『なるべく離れたところ』って言ってあそこに座ったんです。僕はもうちょっと近くてもいいだろうと思っていたんですけど、これが女性の気持ちなんだなと思いましたね。そこに対する永田の距離感も絶妙です」とそのシーンの松岡の巧みな演技の裏側を明かした。
「生涯忘れられない恋」を描いた恋愛映画というコピーにかけて、《生涯忘れらない〇〇》についての質問に、山﨑は学生のころに自分で釣りをして捕った魚を民宿のおじさんが焼いてくれた味が忘れられないとコメント。松岡は「15、6歳の時にオーディションで読んだ台本で、悲しいことがあって泣きながらうどんを食べるシーンがありまして。泣きながら何か食べると味が変わると思うんですけど、台本を読んでいた時に、その味が浮かんだんですよ!泣いているときに食べるうどんの味はこれだ!って思って、そのシーン絶対やりたいと思ってオーディションに挑んだんですけど落ちてしまったんです。忘れられない台本というかト書きでしたね」と話し、又吉は「1作目の火花を書いたときに、中国でも出版されることになって上海に行ったんです。そしたら色んな報道陣の方が来てくださって、熱心に質問して下さって本の内容を話せたので嬉しかったんですね。そしたら翌日通訳の方が、昨日僕が話したことが新聞に載っていると教えてくれて、『何て書いてあるんですか』と聞いたら『又吉さんの髪の毛はラーメンみたいだった』と(笑)なんでそんなことを書いたんだろっていうのは生涯忘れないですね(笑)」と語り、期せずして食べ物関連で繋がるトークとなった。
ここでサプライズとして行定監督と親交の深いポン・ジュノ監督から『劇場』を鑑賞した感想が記載された手紙が届き、MCによって代読された。
成長と克服に関する物語で、はてしなく長く、終わりの見えないある時期を乗り越えていく物語ですが、青春期の男女の感情の繊細な調律師である行定監督ならではの熟練した、老練な腕前(力量)を再確認させてくれる作品でした。
山﨑賢人さんは不確かな天才から醸し出される不安感、不確かな天才に向けて沸き起こる憐憫、そのすべてを可能にしました。松岡茉優さんは天使の安らぎと、反対に天使からもたらせる息苦しさの両面を見事に表現していたと思います。
二人の俳優の演技が素晴らしく、本当によかったです。この作品はまさに行定監督にしか作り得ない、長くも繊細な愛の物語であるという点で非常に印象深かったです。またこの映画は、クリエイターあるいは芸術家が抱く不安や苦痛、偏狭さや卑怯な一面をリアルに描いており、その否定的な感情を乗り越え、成長に導いていく自己省察と忍耐までも描かれています。それは同じ作り手という立場にとって、一層胸に迫るものでした。
奉俊昊
最後に、イベントの演出として映画のロゴが書かれた垂れ幕と共に、劇中の印象的なシーンの一つでもある桜並木をイメージした桜吹雪を散らせる演出が行われ、山﨑が「この映画は観終わった後、大切な人を思い浮かべる作品になっていると思います。生きていく中で上手くいかないこともたくさんあると思うんですけど、最後にはいい方向に向かっていくんじゃないかと思える作品になっているので、公開まで魅力を伝えていけるように頑張りたいと思いますと挨拶し、イベントは終了した。