ドラマ「山田孝之の東京都北区赤羽」(15)で絶妙なコンビネーションを見せ、「山田孝之のカンヌ映画祭」『映画 山田孝之3D』(17)の2本では、自由な映像表現で映画ファンを驚愕させた俳優の山田孝之と監督・山下敦弘。そんな盟友コンビによる待望の劇映画『ハード・コア』が11月23日(金・祝)に全国公開となる。本作は、90年代に漫画雑誌「グランドチャンピオン」で連載され、多くの読者の共感を呼んだ伝説のコミック「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」(作:狩撫麻礼、画:いましろたかし)の待望の映画化。10年前に本書を読んで「男たちの結末に泣いた」という山田と20年近く前に愛読していた山下監督。映画化を夢みていた念願の企画が、ふたりがそれを表現するのに相応しい年齢になったいま、最高の形で具現化されます。30年近く前の男たちの狂おしくも熱いドラマが、生身の人間に命を吹き込まれてスクリーンで蘇る。
10月31日(水)の第31回東京国際映画祭にて、山下敦弘監督と原作者のいましろたかしが登壇するティーチインイベントが実施された。実写映画化した経緯やキャスティングについてなど二人だからこそ語れる本作についての想いや、本作が完成する直前に亡くなってしまった原作者である狩撫麻礼さんへの想いを語った。またフォトセッションでは本作に登場する謎のロボット「ロボオ」も登場し、観客が沸いた。
上映終了後、山下敦弘監督、いましろたかしが登壇すると大きな拍手が沸き起こった。
まず最初に「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」を映画化した経緯を聞かれると、山下は「8年くらい前に山田君と一緒に仕事をした時に山田君も原作がすごく大好きで、意気投合したのがきっかけです。実際に動き出したのは5年前くらい前。結構長い時間をかけてようやく実現しました」と感慨深く語った。いましろは「途中で企画倒れになるのではないかと思いましたね。実写化するのは難しい漫画ですし、前半と後半でかなり印象が違う作品ですから一本の映画にするのは綱渡りかなと思いました。」と実現不可能だと思っていた胸の内を明かした。また、現場で演技指導などするのかと聞かれると山下は「こういうことをやりたいという自分のプランや考えは伝えましたが基本的には、山田君たちが作っていきました。ロボオは撮影当日までスーツが届かなかったので手取り足取りやりながら作っていった」とお互いに信頼しながら作っていった現場を明かした。
その後、観客から二人への質疑応答に移行。観客から〈佐藤健さんをキャスティングした理由〉と聞かれると、山下は「原作のイメージに近かったというのもありますが、山田君と何度か共演をしていて仲が良いのを知っていたので、息が合う兄弟という役柄があっていると思いました」と明かした。また観客からは「新しい佐藤さんが見ることができてとても新鮮でした」と称賛の声が上がった。
また、〈他の作品で山田さんと意見がぶつかるところを見たことがありますが、今回は意見が食い違ったりしましたか〉という質問に、山下は「今回は監督と主演という立場だったので言い合ったりはしましたが、ケンカは特にありませんでした」と答えた。また山田のプロデューサーとしての役割を聞かれると山下は「山田君は原作が好きだったので、あくまで僕のイメージですが、原作を守る立ち位置だった。だからキャスティングなどは気にしていたし、原作に対して映画がどのようになっていくかをチェックする立ち位置でした。音楽や編集も立ち会ってくれました」と語った。続いて、〈原作者である狩撫麻礼さんへの想い〉について聞かれると、いましろは、「狩撫さんとあったのはもう25年前で、今年の初めに亡くなってしまいました。狩撫さんが声をかけてくれなければこの漫画も映画もできていません。狩撫さんは映画が好きだったので、見ることなく亡くなってしまったのがちょっと残念です」と語った。山下は「結局お会いできないままでしたし、完成する直前に亡くなってしまったので、とても残念でした。いまだに自分の中でハード・コアについてまだわからないことが多く、聞きたいことがいっぱいありましたが、聞くことができなかったな」と狩撫への気持ちを語った。
最後に〈漫画作品を実写化するにあたっての一番難しかったこと〉について聞かれると山下は「若い頃に読んでいて、好きだった原作を作品にするのは今回が初めてでした。自分の想い入れが強すぎて、自分と原作との距離感に最初はとても悩みました。」と語った。
最後に、「とにかく一生懸命作りました。山田君含めみんなで頑張って作ったので、一人でも多くの人に見ていただければと思います」と山下が締めくくり、会場は大きな拍手に包まれた。