日時:5月18日(木)
場所: なんばパークスシネマ スクリーン7
登壇者:永瀬正敏・岩田剛典・河瀨直美監督
18歳の時、初めて8ミリカメラを手にしてから約30年。今や、世界中で高い評価を受ける河瀨直美監督が、生まれ故郷である奈良県を舞台に、『イングリッシュ・ペイシェント』(1997)で米アカデミー賞助演女優賞をはじめ、世界三大映画祭すべてで女優賞を獲得したフランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、そして、『あん』(2015)、『光』(2017)と河瀨監督作品2作に連続主演、日本が世界に誇る国際派俳優 永瀬正敏をダブル主―演に迎えた映画『Vision』が6月8日(金)に全国公開となる。5/18(金)に、永瀬正敏、岩田剛典、河瀨直美監督が、本作のPRのため大阪のなんばパークスシネマにて、舞台挨拶を行った。
この日、映画『Vision』のPRのため大阪を訪れた、永瀬正敏、岩田剛典と河瀨監督。朝から精力的に取材やTV番組の生出演などをこなした3名は、最後の大仕事、大阪なんばパークスでの舞台挨拶に登場した。観客の大歓声に迎えられ、永瀬正敏、岩田剛典、河瀨監督がステージ上に登場。
はじめに、吉野の山を守る山守として猟犬コウと静かに暮らす智(トモ)役の永瀬正敏が「こんにちは、愛犬コウと暮らしていました智です」と笑顔で語り、山に迷い込んだ謎の青年の鈴(リン)役の岩田剛典が「皆さん、こんにちは」とあいさつすると、キャー!!と黄色い歓声が会場に響き渡り、続けて「大阪のみなさん、お久しぶりです。皆さんに今日観て頂けることにワクワクしております」と語り、そして、今作で劇映画10本目となる河瀨直美監督は、「沢山の若い方がいらっしゃる上映会というのは、私が久しぶりでございます。まずこの映画『Vision』は、ジュリエット・ビノシュさんをお迎えし、日仏共同製作ということで、国際的にこの方々がスクリーンデビューする作品です。吉野の森の深さ、もう1つの主人公である森。その存在をマイナスイオンを浴びるように感じて頂ければなと思います」と語ると、MCからグリーンの艶やかでセクシーな衣装を指摘された河瀨監督は「実はろうけつ染めという古代染めなんですよ」と紹介した。
また昨日は東京で、本日は大阪の皆さんに映画を観て頂くことになった気持ちを聞かれた永瀬は「そうですね…なんと言ったらいいんでしょうか」と悩みつつも「今日はね正面を見ると皆さんの座っている座席がグリーンなので、ちょっと違った意味でもドキドキしています。河瀨監督は世界的に河瀨グリーンと言われている緑の色がね、特色でもありますので、こっちもグリーン、こっちもグリーンというのが、僕もそこに座って観たいです。館内全体がVisionと言う感じですね」というと、河瀨監督は「私たちのために今日は館内をグリーンにしてくれたんですよね」と突っ込み、永瀬も同調していた。関西出身でもある河瀨監督は「昨日の夜のうちに東京から帰ってきていて、帰ってきたとたんに、深呼吸をしたくなるような、やっぱり関西は自分の場所みたいな感じがしますね。『萌の朱雀』、『殯の森』と森をテーマにした作品から約10年でこの『Vision』に行きついているんですけど、導かれるようにしてもう一度ここに帰ってきたような、積み重ねてはきているんですけども、何か回帰してまた新しい扉を開くという感じがしていて、特に今回は撮影した吉野と言うところは、先日吉野離宮というものが発見されたニュースもありましたけど、本当に何かに導かれているんじゃないかなと。ちょっと魔女的な要素も良くあると…」と語っていると、すかさず永瀬が「いや、もう魔女ですからね。河瀨監督の撮影のやり方はほぼ順撮りといって、シーン1から最後まで撮影していくんですけど、それで真ん中くらいに今日は雨が降るというシーンがあるとすると、そんなにうまくスケジュールって行かないものなんですよ。でもそのシーンになると雨が降るんですよ!これはね、本当に魔女です」と突っ込む一幕も。すると監督も「決めたいときは気合を入れるとね」と言うと、永瀬は「映画の神様に愛されている人ですね」と笑顔で語っていた。
その監督の魔女ぶりを聞かれた岩田は「河瀨組に参加したのは今回が初めてで、通常本番行きますよ、という形で撮影が進んでいくのですが、河瀨組はその土地、場所に住んで、パッと目が覚めて起きたらカメラが待ち構えていてもう撮影が始まっているんですよね。そういうかたちで撮影が進んでいったので、ドキュメンタリーのような感じで、その人の生活を切り取っている生感がすごく映像に入っていて、観て頂くとすごく感じて頂けるんじゃないかなと思いますね」と語ると、続けて監督が「あと今までと違うというのは、英語で演技してますよね、ジュリエット・ビノシュさんと」と言い、岩田は「ひやひやでしたけどね。シーンの中でもちろん台詞はあるんですけど、結構こう差し込みの台詞とかがあったりして、アドリブの英語に対して、日本語変換してさらにそれを英語で返さないといけないという、めちゃくちゃ難易度の高い芝居を求められるかたちだったので、本当に沈黙の時間がありましたね」と苦労を語った。その様子を見た監督は「でもそれによって国際的な感覚の中での表現というのは、いまはまだ河瀨組ならではの事ばかりが表に出て言っていますけど、国際的な場であるということは、日本映画だけに寄らない、私たちの現場は本当に色んな言語が飛び交っていますよね」と永瀬に振ると「3カ国、4カ国と本当にインターナショナルな現場でしたね」と永瀬は撮影現場の様子を披露していた。
ジュリエット・ビノシュとの共演はどうだったかという監督からの質問に対し、永瀬は「ジュリエットさん、僕の場合はずっと役のジャンヌさんと思って接していたんですけど、やっぱり深いですよね。理解度が深くてきちんと自己主張する。監督がOKと出したのにも関わらず、もう1回やらせてほしいというシーンが結構ありましたね。でも海外の現場では自己主張ってすごく沢山あります。スタッフの方からくることもあるし、演者側から問いかけることもあって、そういうセッションの中で作っていくことが多いので、改めて思い出しましたね」と語り、岩田は「誰もが知る大女優さんとご一緒できて、嬉しかったです。でも初対面の時は緊張して、どういうふうに接していけばいいんだろうと思っていたんですけど、ものすごく気さくな方で、明るくてピュアでチャーミングで、1回笑いのツボに入ると抜けないこととかもあって、すごく愛おしい方でした。」と披露し、監督も「私からしたら、大女優というよりも大阪もおばちゃん。食いしん坊だし、チャーミングだし。飴ちゃんあげようか、と言うくらいに、みんなを育んでいる感じしませんでした?」と2人に聞くと、同意しつつも、岩田は「大阪のおばちゃんっていうのは監督以外は言えないと思いますよ」と突っ込んでいた。
永瀬演じる智と生活を共にしていた猟犬コウの話になり、永瀬は「コウはタレント犬ではなくてね、吉野の森に本当に住んでいる猟犬で、犬を使った猟を本当にやっている賢い犬なんですけど。コウとずっと台風の日とか一緒にいましたね。男の子ですね、可愛いんです」と語り、永瀬は「コウと鈴が似ているんですよね。顔が似ているというか、犬顔ということではなく、どんどん魂が共鳴しているというか映画観て頂くとわかるんですけどね」と嬉しそうコウとのエピソードを語っていた。
するとここで突然のサプライズゲスト登場!!「マジか!!!」と永瀬が驚いた先には、コウの姿が!!!「コウ、コウ!!」と嬉しそうにする永瀬。永瀬にしっぽを振りまくる犬のコウ。興奮気味の犬のコウに「久しぶり」と声を掛ける岩田。どうやってコウとコミュニケーションを取っていたのか聞かれた永瀬は「ヤバイちょっと泣きそうだけど、映画観てもらったらわかるんですけど、僕はコウに吉野の山について教えてもらったんですよ」と久しぶりの再会に感極まった様子で、岩田も「元気そうで、本当にほっとした」とコウにコメントし、笑顔がこぼれる幸せな雰囲気に包まれた、イベントは終了した。