井筒監督が絶賛する理由とは?『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』トークイベントリポート

  • 登壇日:2016年7月25日(月)
  • 登壇者:井筒和幸監督、森直人(MC)
  • 場所:ニッショーホール
井筒監督が絶賛する理由とは?『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』トークイベントリポート1
井筒監督が絶賛する理由とは?『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』トークイベントリポート2

提供:シネマクエスト

映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』のトークイベントが7月25日にニッショーホールで開催され、ゲストとして映画監督の井筒和幸氏が出席。ポーランドのアウシュヴィッツを訪れたことがある井筒監督が、その時の様子を含め、同作品を鋭く解説、また、現在の日本の教育についても熱く語った。

この日、MCを務めた映画評論家の森直人氏から、今作を鑑賞しての感想を問われた井筒監督は、まず「この映画を観て、自分も中学3年くらいかな、教師になろうと思ってたことを思い出した。でもこの映画を観たら、こんなヤンチャな奴らがいるクラスで担任なんてなれへんな~って思ったよ。今、フランスが抱えている社会事情や教育の実態が非常に歴然と描かれている。でも、こんな教室に赴任したら、たまらんなぁ~」と、率直な感想を口にした。

続いて森氏から「先ほど楽屋でフランス映画なのに、なんで俺(がゲスト)なの、って言ってましたけど、劇中で描かれるクラスっていわゆる落ちこぼればかりで、『ガキ帝国』以降、監督が描き続けてきた世界に通じますよ」という指摘が入ると、「確かに問題児ばかり描いてきたのは事実ですけどね。島田紳助から始まってね(笑)。いろんな奴らとやってきたけど、実際人間はね、輪になってね、一緒にともに生きていくというのはどういうことか、というのを考えていくのが教育だし、学校であるわけで。僕は今、学生の前で授業することもあるんだけど、若い子たちとどうやって接し、どう育むか、年いけばいくほど考えることになりますね」と井筒監督。

さらに「この作品を観ると、アウシュヴィッツについて、僕もリアルタイムでこういう教室で、こういう先生に、こういう授業を教えてほしかった! もっと若いときに出会いたかった!」と熱弁。その理由として、「劇中の生徒たちもそうだけど、変化のインパクトが違う。若い感受性で受け取ることが大切で、年取ってからでは遅いんだよね。もっと若いときになぜこういうことを知らなかったのか、情けないな、って。この映画では、そういうことを強く感じたなぁ」と熱く観客に語りかけた。

井筒監督は3年ほど前に、ポーランドの首都・ワルシャワの映画祭に招待された際、現地の人の案内で、アウシュヴィッツ強制収容所に行ったことがあるということで、その時のことを聞かれると、「電車で2時間半くらいかかったのか、『アウシュヴィッツ』というのはドイツ語で、ポーランド語では『オシフィエンチム』という場所になるのですが、結構当時のまま残されていてね、こんな狭い3段ベッドに5、6人で寝ていたのか、とか。歩いて回るんだけど、当時みんな貨車で運ばれてきて、駅で降りて、すぐ選別されて、そこからいわゆるガス室まで、そんな遠くなくて、ほんの何十分かの間に行われていたんだ、と……。心に迫って息ができないって、こういうことか……そんなことを感じました」。
ポーランドでは学生が必ず社会科見学のような形で訪れるように決められているようで、若い学生もたくさんいたと語りつつ、「日本の教育でも、こういう先生が来て歴史のすべてをきちんと教えていくのが大切だなと、つくづく思った」と語った。

最後に、これから今作を観る人へ、「返す返す言いますが、僕は若いときに、こういう教室にいたかった! やはり人間というのは、若い時にどんなことであれ、経験する、知る、知力をつける、ということが大事だといつも思うから」と強く語り、トークを締めくくった。

最終更新日
2016-07-28 01:00:01
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シネマクエスト

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