終戦70年―。山田洋次監督が作家・井上ひさしさんに捧げて、長崎を舞台に描いた山田監督初のファンタジー作品、映画『母と暮せば』が12月12日(土)に公開初日を迎え、豪華出演者及び監督による舞台挨拶が行われた。
お一人ずつ、ご挨拶と初日を迎えてのお気持ちをお伺いできればと思います。
■山田洋次監督:この映画の準備がはじまった時からいつか封切が来ると心待ちにしていた日が、今日来ました。観賞後の皆さんの前に立つということは法廷で判決を待つ被告みたいなものです(笑)。朝早くからお越しいただきましてありがとうございます。
■吉永小百合:皆さん大変な思いをしてチケットを手に入れて、この舞台挨拶にいらっしゃったことと思います。(会場笑い)山田丸という大きな船でスタッフ・キャストが一丸となって創り上げた作品が長崎を出港して東京に到着しました。ドキドキしています。楽しんでいただけましたでしょうか。
―会場拍手―
■二宮和也:本日は朝早くからお越しいただきりがとうございます。初日を迎えられて嬉しい気持ちでいっぱいですが、公開に向けて綺麗な恰好をさせていただき、やってきた宣伝活動が終わってしまうと思うと少し寂しい気持ちもあります。これからは皆さんの力で映画を広めていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
■黒木華:おはようございます。こんなにたくさんの方々と初日を迎えられて幸せです。この作品では行ったことの無かった長崎に行かせていただいたり、たくさんの経験をさせていただき嬉しかったです。よろしくお願いします。
■浅野忠信:今日はお越しいただきまして本当にありがとうございます。完成した映画を観たとき自分でもずっと泣いていました。壇上からお客さんを見ても感動した様子が伝わってきて嬉しいです。何度でも観て下さい。
ご自身で一番好きなシーンや一番心に残っているセリフがございましたらお伺いできればと思います。
■吉永:浩二(二宮)が「町子(黒木)には幸せになって欲しい。僕だけじゃなくてそれが原爆で死んだみんなの願いなんだ」といった後に「ようゆうてくれたね」と言うところが好きですね。
■二宮:劇中で歌を歌うシーンがいくつかあるんですけど、監督に「やさしくしてみようか」とか「もう少しのびやかにやってみようか」と指示をいただいて何度もやったことが心に残っています。
■山田監督:彼が歌ってくれるからそれだけで涙が出ましたね。
■黒木:浩二さんとのシーンはもちろんなのですが、黒田さん(浅野)が出てきて、町子の未来を変えてくれんだなと思わせるところが好きです。
■浅野:劇中のシチュエーションと同じで緊張していましたね。
特に苦労されたところなどございますか?
■山田監督:苦労したところはたくさんあるのですが、浩二が指揮をするシーンをどのような映像表現にしようか特に苦心しました。
戦争の時代のお話ですが、戦争を知らない世代として演じてみて難しかったことなどありますか?
■二宮:「知らない」ということにつきると思います。その時代のお芝居をさせてもらったり、勉強をしてはいるけど「知らない」と言わなければならない、分からないと言わければいけないのには勇気がいりました。
■山田監督:当時の子どもたちは朝から晩までお腹が空いていた、そんななかで食べるおにぎりというのがどういうものかは説明してもなかなかわからないでしょう。
■黒木:卵かけごはんのシーンで監督から当時卵がどれだけ大事だったかもふまえてご指導いただきました。
■吉永:苦労したところといえば、浩二が亡霊なので触れてはいけないことでした。
■二宮:できれば消えたくなかったんです(笑)。生きている時のシーンでは触れ合えたので、「生きているな」と感じました。
さて、本日は初日ということで、山田監督と座長・吉永さんへ「お疲れさまでした」の花束をお渡しいただきましょう。
―花束贈呈―
実は今日はもうひとつあるんです。『母と暮せば』は、昨年の12月に製作発表をし、4月末から約3か月にわたる撮影、そして撮影後は様々なプロモーション稼働が続いてきました。中でも主演の吉永小百合さんは、連日の取材やテレビの収録稼働など、誰よりもこなし、座長として引っ張ってきてくださいました。そこで本日は、キャスト・スタッフ全員より、感謝の気持ちを込めたお手紙がございます。「息子」の二宮さんにお読みいただきましょう。
※手紙内容
吉永小百合様
今日、『母と暮せば』の公開初日をついに迎えることができました。
ちょうど去年の今頃この映画の製作発表会見があり、それから一年間、
小百合さんのそばで、我々は本当に楽しくて充実した日々を過ごさせていただきました。
撮影中の小百合さんはシーンも多くて出ずっぱりで、
自分のことだけでも大変なはずなのに、誰よりも気遣いの人でした。
スタッフ・キャストの一人一人を名前でちゃんと呼び、
いつも山田監督の体調を気にされ、取材の方がいらっしゃると
丁寧に挨拶をして声をかける。
ご自身が「座長」として作品を背負っているんだという覚悟と潔さは
現場を明るく和やかにして、関わる人全員が過ごしやすい空気を作ってくださいました。
撮影が終わってからも、坂本龍一さんとの音楽レコーディンングや仕上げにも立ち会われたりと、
いつも作品のことを考えて盛り上げて下さり、
本当にありがとうございました。
小百合さんと一緒の船に乗って、本当に幸せな時間を過ごしました。
そして、先頭を走り続ける小百合さんは、とってもカッコよかったです。
その姿をいつも想いながら、ひとりひとりが今よりもっと頼れる存在になって、
小百合さんとまた一緒に素晴らしい作品を作りたい。それが今日からの我々の目標です。
この映画に関わった出演者、スタッフを代表して。
二宮和也
吉永さんいかがでしょうか。
■吉永:感激しております。皆さんのおかげでやり通せたと思います。胸がいっぱいです。
■二宮:吉永さんに色々と気づかっていただいたことで、僕も含め現場が元気になったと思います。
本日公開を迎えて吉永さん今一度いかがでしょうか。
■吉永:映画が公開となることで皆さんとお別れしなければならないのは寂しいです。また皆さんとお芝居をしたりご飯を食べたりしたいです。山田監督よろしくお願いします。
本日吉永さんがお召しになっているお着物の帯は、劇中で使用されたものとお伺いいたしました。
■吉永:そうなんです。平和の象徴ハトがデザインされていて劇中で使っていたものを
衣装部さんがプレゼントしてくださったんです。
最後に一言ずつ山田監督、吉永小百合さんにお願いしたいと思います。
■山田監督:朝早くから駆けつけてくださりまして、ありがとうございます。改めて御礼申し上げます。
■吉永:皆様の温かい拍手に包まれて幸せです。作品をご覧いただいた後は皆さんで色々とお話いただければと思います。欲張りなことではありますが、2度3度と足を運んでいただけたら良いなと思っております。よろしくお願いします。