世界的再評価が進む鬼才ウルリケ・オッティンガーの〈ベルリン三部作〉公開!

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提供:キネマ旬報

世界的再評価の機運が高まっているドイツの映画作家、ウルリケ・オッティンガーの〈ベルリン三部作〉が、8月より渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。ティザービジュアルが到着した。

ニュー・ジャーマン・シネマの時代から精力的に作品を発表しながら、日本では紹介される機会が少なかったウルリケ・オッティンガー(1942〜)。2020年ベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ(功労賞)を受賞し、2021・2022年にはウィーンやベルリンの映画博物館などヨーロッパを中心に、大規模なレトロスペクティブが開催された。また美術館やギャラリーでは美術作品が展示され、映画作家として、芸術家として、世界的に再評価の機運が高まっている。そうした中、〈ベルリン三部作〉と呼ばれる「アル中女の肖像」(79)「フリーク・オルランド」(81)「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」(84)が日本公開される(「アル中女の肖像」「タブロイド紙が〜」は日本劇場初公開)。
ドイツ在住の作家、多和田葉子はベルリン国際映画祭での功労賞受賞式で「ダンテは『神曲(神聖喜劇)』を、バルザックは『人間喜劇』を書きました。オッティンガーの映画は、「人間と神々の喜劇」と呼べるのではないでしょうか?」と述べた。また映画監督リチャード・リンクレーターは「アル中女の肖像」を最愛の一本に挙げ、「何度も見たい、爽快な映画」と語っている。
ティザービジュアルの写真は「アル中女の肖像」のワンシーン。赤い帽子とコートを纏った主人公を演じているのは、初期オッティンガー作品の併走者であり、80年代西ドイツのファッションや前衛的アートの世界でアイコン的存在だったタベア・ブルーメンシャインだ。彼女は同作で衣装も担当している。キッチュでスタイリッシュな着こなしをはじめ、その佇まいは〈ベルリン三部作〉のユニークかつユーモラスな世界観と現代性を体現しているといっても過言ではない。
その他、〈ベルリン三部作〉のキャストは、マグダレーナ・モンテツマ、イルム・ヘルマン、クルト・ラープ、フォルカー・シュペングラーなど、ヴェルナー・シュレイターやR.W.ファスビンダーといった映画作家と共にニュー・ジャーマン・シネマを支えた面々。
また、「フリーク・オルランド」と「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」には、デルフィーヌ・セイリグが出演する。彼女は近年、フェミニストとしての活動に焦点を当てたドキュメンタリー映画が制作されたり、フランスで評伝が出版されるなど注目を浴びている。
さらに、パンク歌手のニナ・ハーゲン、ゴダールの「アルファビル」(65)に主演したエディ・コンスタンティーヌ、前衛的な芸術運動〈Fluxus〉に参加したウルフ・ヴォステル、戦後ドイツで最も影響力のある芸術家の一人であるマーティン・キッペンバーガー、ドリアン・グレイを演じる伝説的スーパーモデルのヴェルーシュカなど、知る人ぞ知る多彩なキャストも見どころ。
従来の規範を揺るがし、フェミニズム映画やクィア映画の文脈で論じられるなど、その先進性をもって再評価されるオッティンガー作品。分かりやすさをはねつける過激さを持ちながら、観ることの喜びに誘うユーモアと美意識に溢れている。そして、ベルリンの壁に分断された冷戦下の西ドイツの都市を捉えた映像は、歴史的記録としても貴重。知性と感性を刺激する3作を、スクリーンで体験したい。

オッティンガーはエゴイスティックな自然や予測不可能な人間と向き合う人です。彼女のつける演出は控え目で、監督と演者の両者の間には相互に対する大きな信頼と好奇心があります。こうして撮影された膨大な素材は、後に編集室で壮大な作品へと組み上げられるのです。ダンテは『神曲(神聖喜劇)』を、バルザックは『人間喜劇』を書きました。オッティンガーの映画は、「人間と神々の喜劇」と呼べるのではないでしょうか?
多和田葉子(小説家、詩人)ベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ(功労賞)受賞時の祝辞

「アル中女の肖像」国内劇場初公開
Bildnis einer Trinkerin|Ticket of No Return
1979年/西ドイツ/カラー/108分
監督・脚本・撮影・美術・ナレーション:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ペーア・ラーベン 衣装:タベア・ブルーメンシャイン 歌:ニナ・ハーゲン
出演:タベア・ブルーメンシャイン、ルッツェ、マグダレーナ・モンテツマ、ニナ・ハーゲン、クルト・ラープ、フォルカー・シュペングラー、エディ・コンスタンティーヌ、ウルフ・ヴォステル、マーティン・キッペンバーガー
Bildnis einer Trinkerin, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger
飲むために生き、飲みながら生きる、酒飲みの人生。西ドイツのアート、ファッションシーンのアイコン的存在であったタベア・ブルーメンシャインの爆発する魅力。R.W.ファスビンダーが「最も美しいドイツ映画」の一本として選出し、リチャード・リンクレイターが最愛の作品とする。

「フリーク・オルランド」
Freak Orlando
1981年/西ドイツ/カラー/127分
監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ヴェルヘルム・D.ジーベル 衣装:ヨルゲ・ヤラ
出演:マグダレーナ・モンテツマ、デルフィーヌ・セイリグ、ジャッキー・レイナル、アルベルト・ハインス、クラウディオ・パントーヤ、エディ・コンスタンティーヌ、フランカ・マニャーニ
Freak Orlando, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger
ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』を奇抜に翻案し、神話の時代から現代までが5つのエピソードで描かれる「小さな世界劇場」。ユニークな映像感覚の中に、ドイツロマン主義の伝統とブレヒトやアルトーなどの近現代演劇の文脈が息づく。

「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」国内劇場初公開
Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse|Dorian Gray in the Mirror of the Yellow Press
1984年/西ドイツ/カラー/151分
監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ペーア・ラーベン、パトリシア・ユンガー
出演:ヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフ、デルフィーヌ・セイリグ、タベア・ブルーメンシャイン、トーヨー・タナカ、イルム・ヘルマン、マグダレーナ・モンテツマ、バーバラ・ヴァレンティン
Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger
伝説的なスーパーモデル、ヴェルーシュカが主演。デルフィーヌ・セイリグ、タベア・ブルーメンシャインらが特異な存在感を持って脇を固める。オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』や「ドクトル・マブゼ」などのモチーフを含み込み、バロックで、デカダンスで、ダダイスティックな独自の世界観を生み出している。

ウルリケ・オッティンガー Ulrike Ottinger
1942年6月6日、ドイツ南部コンスタンツ生まれ。1962年から1969年の初めまで、パリでアーティストとして活動。コレージュ・ド・フランスでクロード・レヴィ=ストロース、ルイ・アルチュセール、ピエール・ブルデューらの講義を受ける。西ドイツに帰国し、最初の映画作品「Laokoon und Söhne(ラオコーンと息子たち)」(1972-73)を制作。1977年にZDFと共同制作した「Madame X – Eine absolute Herrscherin」は、大きな反響を得た。そして〈ベルリン三部作〉と呼ばれる「アル中女の肖像」(1979)、「フリーク・オルランド」(1981)、「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」(1984)を発表。その後、オッティンガーの関心はアジアに向かい、中国で撮影された長編ドキュメンタリー作品「China. Die Künste – Der Alltag」(1985) 、モンゴルでの「Johanna d’Arc of Mongolia」(1989)や「Taiga」(1991-92)、韓国の都市生活を映し出すドキュメンタリー「Die koreanische Hochzeitstruhe」、そして日本では「北越雪譜」を著した随筆家・鈴木牧之の足跡を辿る「Unter Schnee(雪に埋もれて)」(2011)が新潟県で撮影され、多和田葉子が制作に携わり、出演もしている。その他、「Countdown」(1990)、「Prater」(2007)、12時間に及ぶ大長編ドキュメンタリー「Chamissos Schatten」(2016)を制作。60年代パリでの個人的な記憶と社会的、政治的、文化的な激しい動向を絡めた「Paris Calligrammes」(2019)はベルリン国際映画祭をはじめ世界中の映画祭で上映。2020年にベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ賞(功労賞)を受賞。2021・22年にはウィーンとベルリンの映画博物館や、エカテリンブルク、リスボン、ワルシャワ、グダニスク、パリ、コペンハーゲンなどで大規模なレトロスペクティブやシンポジウムが開催。映画および視覚芸術表現の領域において次代に向けた再評価の機運が高まっている。

配給・宣伝:プンクテ
公式サイト:punkte00.com/ottinger-berlin/
ツイッター:twitter.com/ottingerberlin

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最終更新日
2023-04-19 10:33:18
提供
キネマ旬報(引用元

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