「彼女のいない部屋」マチュー・アマルリック × 濱口⻯介対談が決定。黒沢清、三宅唱らがコメント

「彼女のいない部屋」マチュー・アマルリック × 濱口⻯介対談が決定。黒沢清、三宅唱らがコメント
提供:キネマ旬報

名優でもあるマチュー・アマルリック監督の最高傑作との呼び声が高い “家出した女性の物語”「彼女のいない部屋」が、8月26日(金)よりBunkamura ル・シネマほかで全国順次公開。8月27日(土)夜の回上映後にアマルリック監督と濱口⻯介監督がオンライン対談することが決定し、作品への著名人コメントが到着した。

「2年前、カンヌで濱口監督に会った時はまだ彼の映画を観られていなかったんだけど、その後パリの映画館で濱口監督のいくつかの映画を観て、とりわけ『ドライブ・マイ・カー』が本当に大好き(大文字のLOVE)だった!『彼女のいない部屋』と『ドライブ・マイ・カー』を観た観客のなかには、一種の秘密の共鳴を感じる人がいるのではないかと思っている」とアマルリックは語る。尊敬し合うアマルリックと濱口⻯介の両監督、どんな話が飛び出すか注目だ。

黒沢清監督、三宅唱監督、俳優の永瀬正敏や霧島れいか、サウンドデザイナーの森永泰弘ら各界著名人のコメントは以下(順不同・敬称略)。
ひとりの女性がふと家を出て車で走り出す。あれよあれよと言う間に、生と死と、過去と未来とをめぐる無限の物語が構築されていく。驚くべき映画の冒険!
--黒沢清(映画監督)
先行する、追いかける、音と映像の融合と、切なすぎる感情が見事にマッチしている稀有な作品。
新しい映画表現の、まだ見ぬ未来への希望を感じた。
--永瀬正敏(俳優)
一体これほどまでに、ぼくたちの耳を刺激する映画がかつて存在しただろうか?
強烈なモンタージュが、映画の時空間を無尽に伸縮させて、多元的な視聴覚の層をこの映画は惜しむことなく創造し盛り込んでいるといっても過言ではないだろう。
--森永泰弘(サウンドデザイナー)
同人物とは思えない程、喜怒哀楽のありとあらゆる感情と精神を見事に表現しきる女優ヴィッキー・クリープスの名演に心を打たれました。物語のキーとなるFの音を是非お聴き逃しなく!
--河村尚子(ピアニスト)
ヴィッキー・クリープスは雪のように繊細に見える。幼さを残した声、美しく細やかな表情と滑らかな指の動きは、景色を操ることも光を奪うこともできてしまいそう。
その唯一無二な佇まいに魅了され、私は彼女が大好きです。
--霧島れいか(女優)
彼女が街中でふと足を止める。まるで時間も止まるようだ。いや、時間はまっすぐに流れて二度と戻らないものか。となると、この映画は彼女とともに、なんとかその流れに抗おうとしているのかもしれない。流れに逆らう彼女の顔がかすかに震える。その震えから目が離せない。そして、彼女が再び流れに身を委ねるときに袖を通すある服が、とても似合っていて、いい。
--三宅唱(映画監督)
自分がいなくなることで、いなくなった人を生き返らせる。彼女にしか見えない頭の中の景色、実としての景色。過去と未来。その境があまりに曖昧なので、私はひたすらに感じ、考える。彼女の悲しみが体に移ってくる。
二度と会えない彼らにまた会いたい。見終わってすぐなのに、何度も見たくなってしまう映画です。
--高山なおみ(料理家・文筆家)
すべてが終わった時、冒頭のセリフが鮮明によみがえり、激しく心が震えた。
この重さ、この覚悟を私は受け止めることができるのだろうか。
--金子稚子(終活ジャーナリスト、ライフ・ターミナル・ネットワーク代表)
交わらない二つの時間が鏡のように進んでゆく
反復し合う日常に、現在を見失う
「待つ」ことに終わりの来ない苦しみとは、
こういうものなのかもしれない、と想像し胸が締めつけられる
けれど声は、交わらないはずの時空間を越えていく力を持っている、
と教えてくれた映画でもあった
声が届くとき、どちらの現在にも、穏やかな時間が流れていた
--小森はるか(映像作家)
人間は「物語」で出来ているんだと思った。ある体験が主人公から過去も未来も奪ったとしても、慣れ親しんだ音や手の感触から「物語」を紡ぎ始めることができる。時々間違ったとしても力強い「物語」に人間は、なる。
--松井周(劇作家・演出家・小説家)
物語を組み立て直す--それは過去を破り捨てることではなく、おぼろな「あの日」に耳を澄ますこと。その場所へと続く道は、あまりに孤独で果てしない。確かに「あの日」に触れているのだと、気付くまで。
--佐藤慧(認定NPO法人Dialogue for People代表/フォトジャーナリスト/「ファインダー越しの3.11」著者)
何も言えないし、何も言いたくない。
この物語の真相と感慨は、心の内で抱きしめていたい。
オープンシェアの時代に逆行する、密やかで驚くべき秀作。
--SYO(物書き)
これは能のような映画だ。能は「思い出」の芸能だ。思い出とは、思い出すことではない。身に残った“思い”が溢れ“出て”しまうことをいう。そして、溢れ出た思い出も「わたし」の一部なのである。
--安田登(能楽師・下掛宝生流)
喪失・断絶をいざ経験すると、自分自身わけもわからず部屋をぐるぐる回っていた事がある。
走り始めた車は本当に進んでいるのか?ピアノの旋律が記憶と記録を縫い合わせ、記憶の色彩が現実を染めて記録の中へ溶けていく。
記録と記憶の隙間に存在する果てのない断絶という谷底を光の絵筆で描き、争う事のできない運命との距離を測り直す。
滞留し沈澱していく行き場のない思いを、視線の旋律へ映画は変えて走り出す。
--甫木元空(映画監督・ミュージシャン)
何も聞かずにクラリスの望みに応える人たちがいる。マチュー・アマルリック監督もまた、ないはずのカフェオレボウルを何とか探し出してくるように、この映画を作った。クラリスが望むなら、物語だって形にする。これ以上ないほどの美しい光と音で。
--杉田協士(映画監督)

© 2021 - LES FILMS DU POISSON - GAUMONT - ARTE FRANCE CINEMA - LUPA FILM
配給:ムヴィオラ
︎ カンヌ・プレミア選出。マチュー・アマルリック監督最新作「彼女のいない部屋」
︎ マチュー・アマルリック監督「彼女のいない部屋」、ミステリアスな予告編が公開

最終更新日
2022-08-16 18:26:15
提供
キネマ旬報(引用元

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