
新藤兼人賞をはじめ数々の映画賞新人賞を席巻した『佐々木、イン、マイマイン』(20)、続く『若き見知らぬ者たち』(24)と、 これまで“現実に抗いながらも何かを掴もうとする若者の青春”を見つめてきた内山拓也監督。彼が故郷の凍てつく冬の新潟を舞台に、居場所とアイデンティティを模索する少年の物語を自伝的作品として描く渾身の一作『しびれ』が、第 26 回東京フィルメックス・コンペティションに選出。11 月 22 日(土)15:20 からのワールドプレミアを直前に控え、2026 年劇場公開決定。
内山拓也監督最新作の舞台は、自身の故郷・新潟。
自分の居場所を探す孤独な少年が、息をのむような大きな愛を知るまでの 20 年間
曇天に覆われ、大きな波がうねる日本海沿いの町に暮らす少年、 大地は、幼少期に暴君のようだった父の影響から言葉を発しない。今は母の亜樹と雑居ビル屋上のプレハブで暮らしているが、水商売で稼ぐ亜樹はほとんど家に帰らず、生活は苦しい。やがて亜樹と共に叔母の家に身を寄せるが、どこにも居場所はなく、ひとりで過ごしては内気になっていった。そんな中、大地は父の行方を求めて生家を訪ねることを決意。これを境に、彼の運命は大きく揺らいでいく。心のよるべなき貧困、誰にも見つからぬように生きる孤独の中のささやかな救い、憎くて愛しい母への複雑な感情。流されるままに生きているようで、歩みを止めない大地。そんな彼がかすかな光を手繰り寄せ、息をのむような大きな愛を知るまでの 20 年間が、徹底した少年の視点で綴られていく。
『しびれ』は、内山監督が『佐々木、イン、マイマイン』よりもずっと前から執筆を続けてきた構想十余年のオリジナル脚本。青年期の大地を演じるのは、北村匠海。どこにも居場所がない孤独な少年期をくぐり抜け、自分のもとを離れた父への静かな怒り、そして女手一つで自分を育てた母に対し、憎しみと愛、相反する感情に揺れる心の内を見事に体現。大地の母・亜樹役には、宮沢りえ。水商売で日銭を稼ぎ、世間的には育児放棄と呼ばれるような生活を送るものの、細部に息子への確かな慈愛が滲む繊細な母親を好演する。そして大地の父・大原役には、永瀬正敏。幼少期の大地が言葉を失うきっかけとなる暴君のような姿から一転、時が経ち、かつての威厳が消え、悲哀に満ちた余生を送る男を円熟味たっぷりに魅せる。
また、少年期の大地を演じるのは、榎本 司(「ちはやふる -めぐり-」)、加藤庵次(『ぼくが生きてる、ふたつの世界』)、穐本陽月(『TOKYO MER~走る緊急救命室~』)の 3 人。言葉を発しない代わりに、それぞれが無垢で力強いまなざしで、心の奥底に渦巻く寂しさや母親への愛情を表現し、物語全体を牽引していく。
この度、フィルメックス用に作られたビジュアルも到着。“しびれ”という手書きのタイトルがダイナミックに配置され、北村匠海演じる大地がまっすぐにこちらを見据える 1 枚。何かを決意したように見えるその表情には、否応無しに期待が煽られます。そして、曇天、大粒の雪、寂れた町の一角―――本作のもうひとつの登場人物とも言うべき凍てつく新潟の土地が切り取られました。
第 26 回東京フィルメックスは 2025 年 11 月 21 日(金)~30 日(日)、有楽町朝日ホール、ヒューマントラストシネマ有楽町で開催。
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『しびれ』
配給:NAKACHIKA PICTURES ©️2025「しびれ」製作委員会
