傷付いて北に帰れなくなった一羽の白鳥と、その白鳥に自分を投影するかのように見守り、世話をし続けるひとりの‟おじさん”の交流を、美しくも厳しい富山の大自然の中、およそ 4 年に渡って追い続けた記録。「語り」をつとめるのは本作が映画ナレーション初となる女優の天海祐希。主題歌「スワンソング」を歌うのは、石崎ひゅーい。2019 年 5 月に富山のチューリップテレビで放送され【アメリカ国際フィルム・ビデオ祭】ゴールドカメラ、【ニューヨークフェスティバル】ファイナリスト等を受賞したテレビ版に、2年以上の追加取材の映像を加えて映画化。新作ドキュメンタリー映画『私は白鳥』は、[富山]ほとり座で先行公開後、[東京]ユーロスペース他にて順次全国で劇場公開。
<天海祐希コメント>
澤江さんの目の輝きの明るさ、この人はなんて愛情深い人なんだろう。
「富山に白鳥が飛来して、毎年会える、こんな奇跡はない」と言った澤江さん。コロナで社会が大きく変わり、これまで当たり前だったことも、実は奇跡みたいなことだったと気が付きました。だからこそ、澤江さんの純粋無垢な想いの美しさに心が打たれ、思わず泣いてしまいました。世の中がどう変わっても、自分が生きるために必要なこと、何が大切か、何をしたいのか、そのことにブレない澤江さん。複雑な毎日を送る人々にとって、そのシンプルさは憧れを覚えるかもしれません。祖父母のルーツでもあり、私自身、小学生の頃、毎年夏休みを過ごした富山。新鮮な海や山の幸、静けさがさみしくて怖かったことも、雨や風のにおいも、あそこで経験したことは今でも宝物です。澤江さんの富山弁も懐かしかったです。そうそう、今も富山に住む親戚のおばちゃんが私によく言ってくれていました。「気ぃ付けて帰られ~(気を付けて帰ってね)」、と。
富山の美しい景色と、白鳥への想いの詰まった澤江さんの毎日が、私の心を温めてくれて、頑張って生きようと思えました。澤江さん、ひとりもんはさみしいことじゃないですよ。こんなに追いかけられるものがあるなんてすごいことですよ!
<監督コメント>
富山市に飛来する白鳥の数を数えるのが趣味で、「自分は白鳥」だというちょっと不思議な澤江さんと傷ついた白鳥との約4年間は“まさか”と“奇跡”の連続でした。日々の記録から見えてきたのは、白鳥の力強い生命力と小さな命も尊ぶ澤江さんの優しさ、そして、厳しい競争の中で、時には孤独を感じながらも、小さな喜びと幸せをみつけ、独りたくましく生きる白鳥と澤江さんの姿でした。新型コロナで大きく社会が変容し、誰もが不安や生き辛さを抱えています。自殺者も増えています。“生きるって、たいへん”そんな時代だからこそ、何気ない日常の中にある“小さな幸せ”を見出し、白鳥のように、澤江さんのように、運命を受け入れ、今ある命を楽しんでほしいと思います。
(C)2021映画『私は白鳥』製作委員会