悪あがきだよヨーソロー!劇場版の後のムサニは?劇場版「SHIROBAKO」舞台挨拶

悪あがきだよヨーソロー!劇場版の後のムサニは?劇場版「SHIROBAKO」舞台挨拶

2月29日より全国各劇場で上映され、現在は公開時よりグレードアップした内容で再上映中の『劇場版「SHIROBAKO」』。そんな本作のトークショー「悪あがきだよヨーソロー!」が、10月3日(土曜)、東京・立川シネマシティで開催された。

 トークショーには、監督・水島努さん、宮森あおい役・木村珠莉さん、番組プロデューサー・永谷敬之さんが登壇。最初の挨拶で木村さんは「7ヶ月の時を経て、みなさんとこうしてお話できる機会をいただけたことが、本当に幸せなことだと思います」と一言。水島監督は「作品が完成したときは、すぐに舞台挨拶ができると思ってエンディングに舞台挨拶のシーンを入れたんですけど、まさか7ヶ月も経ってしまうとは思いませんでした。ただ、今はこういった機会をいただけて感無量です」と挨拶し、イベントがスタート。
トークショー永谷さんの司会進行で進み、まず「本作をファンのみなさんにお届けできた今の心境は?」と聞かれた水島監督は、「2月29日の公開はタイミング的によくないと、色々な方に言われました。でもあと一ヶ月遅れていたらいつ公開できていたかわかりませんでしたし、再上映版として長いスパンで上映していただき、こうして舞台挨拶もできたので、逆にあのタイミングで公開できたことはよかったと、今は前向きに考えています」とコメント。木村さんは「キャストたちはみんな、『SHIROBAKO』という作品を愛していて、劇場の本編を見たあとに、舞台挨拶でファンのみなさんと『あそこよかったよね』って、語りあいたいと思っていました。でも世界的な状況によって、それができないってわかった後のもどかしい感じが、タイマス事変後のムサニの状況と重なって見えてしまって……。スタッフのみなさんも辛かったと思いますし、私たちも気軽に『見に来てね』とは言えない状況で、どうしたらいいのか悩んだこともありました……。なので今日という日を迎えられたことは、とても嬉しいです」と、ようやくファンの前に立てた喜びを語ってくれた。そんな二人のコメントを受け、永谷さんも「正直、僕らも初めてのことだったので、どうしていいかわかりませんでした。でも本作はアニメ業界を描いた作品なので、このタイミングで上映するのもある種の運命というか、めぐり合わせなのかなと思いました」と、公開時の思いを話してくれた。

 そしてトークは本編の内容に移り、「劇場版でやりたかったこと」について。水島監督は「やりたかったことは(劇中作の)空中強襲揚陸艦SIVAと同じですね。現実には思うようにいかないことってたくさんあって、そういうことが続くと、『もういいかな』と諦めてしまうことがあると思うんです。それでも『うまく行かないことがあってもやり続けるんだ』という、人生と言ったら大げさかもしれませんが、仕事をするときの心構えをSIVAの中に全部込めています」と作品に込めた思いを話してくれた。

 続いて「今回ムサニの様子ががらりと変わっていますが、どういう意図でこの状況にさせたのでしょうか?」との質問が。これに対し水島監督は「アニメ業界のあるあるなんですが、絶好調のときって、その後すとーんと落ちてしまうことが多いんです。具体的なことは伏せますが(笑)、タイマス事変みたいなことはわりとあって、そこから這い上がれる人と這い上がれない人がいます。若いときにブイブイ言わせてた人が、そんな嫌なことをきっかけにそのまま沈んだままになっていたりして……。そういった業界のあるあるに向き合って描いていこうと思ったんです」と、制作意図について話してくれた。その後、永谷さんはタイマス事変について、「アニメ業界は信用で進んでいく部分があり、例えば水島監督と『SHIROBAKO』という企画をいっしょにやりましょうと、お願いした初期段階には契約書がないことが多いんです。その後作品の企画書を作って、各出資者の稟議を通って初めて制作にGOが出るんです」と、実際のアニメ制作の流れを踏まえながら説明。
さらに「今回は丸川が相手を信用しすぎたと言っていましたが、アニメ業界的にはよくある進め方で、現実ではプロデューサーがそういうことをしっかりとクリアしていって、平穏に進んでいくことがほとんどです。なのでシナリオ会議で脚本を読んだとき、『モデルケースのある話ではないよな?』とは思いました(笑)」とコメント。しかし水島監督がすかさず「いや(モデルが)ありますよ?」と突っ込むと、会場は大きな笑いに包まれていた。

そしてトーク内容は演技の話に移り、「TVシリーズから成長した宮森を、どのように演じようと思いましたか?」という質問が。木村さんは「私の中で宮森はあまり『成長していく主人公』という感じではなく、最初からできちゃう子で、メンタルの部分もミムジー&ロロのおかげで、一人でどうにかしちゃう……そんな宮森の超人的なところを感じながら、TVシリーズは演じていました。今回の劇場版はそんな宮森の超人的な部分でみんなを巻き込んでいき、SIVAを成功させたいと自ら動いていたので、そこがTVシリーズとの大きな違いだと思いました」とコメント。すると水島監督は「木村さんの仰るとおりで、今回は巻き込まれる宮森ではなく、自分の意思で巻き込んでいくというのがひとつのテーマでした」と、劇場版の宮森のイメージを木村さんが汲み取ってくれていたことを喜んでいた。また木村さんは今後の宮森について「今度はナベP案件ではなく、自分のやりたいことをやって、自ら嵐を巻き起こしていく姿を見てみたいです」と話すと、次にムサニが何を作るのかという話題に。その中で、宮森たちが自主制作した『神仏混淆 七福陣』が挙がるが、木村さんはかつて水島監督から「七福陣は売れない」と言われたというエピソードを披露。監督はそう言ったことを覚えていなかったものの、七福陣にまつわる話として「自分たちが学生時代に作ったものが、拙くて見たくないと思ったときが、プロのスタートラインだと思います」と話し、永谷さんも「これをやりたい!と言ったときに、客観的に見ても面白いものかどうかが大事で、思入れだけでやりたいとか、ずっと好きだったからと盲目的な発想で進むと事故になることが多いんです。なので宮森がなにか企画を出したときは、宮井などの客観的な立場の反応が大事だと思っています」と、企画を出す際の心構えについて教えてくれた。

 最後の質問は「劇場版の後のムサニは、どうなっていくと思いますか?」というもの。これについて木村さんは「ムサニの若い人たちが、大きな傷から立ち直るという経験をしたのは大きかったと思います。もしまた今度大きなトラブルが起きたとしても、自分たちの力でなんとかできると思います」とコメント。水島監督は「げ~ぺ~う~が放り出した企画を、ムサニが受けて、クオリティもそこそこにしっかりと完成させたという話は、業界に確実に広まっていると思います。でもすぐには良くならないですし、過去のことで色々と言う人はまだいると思いますが、協力してくれる人は前より増えて、ここから好転すると思います」と、ムサニの明るい未来を語ってくれた。

最後は三人が改めてファンに向けて挨拶し、永谷さんは「本当は2月29日、3月1日にキャストのみなさんが舞台挨拶に登壇する予定でした。今日は各所のご協力もあり、こういった形でトークショーをさせていただきましたが、他の登壇予定だったキャストも話したいことがまだたくさんあると思います。なので今日が終わりではなくて、これからも『劇場版SHIROBAKO』で何かしらの機会を設けていければと思っておりますので、その際はぜひ劇場に足を運んで頂ければと思います」と挨拶。水島監督は「今パッケージ版の作業をしておりまして、まだ終わった感じがしない作品です。実は納品がまだなんですよね……あとちょっと伸ばせません?」と、作中の木下監督のようなやりとりで会場の笑いを取りつつ、「制作が『無理っす』と言う、最後の最後まで粘っていきたいと思いますので、よろしくお願いします」とパッケージ版への意気込みを語ってくれた。そして最後に木村さんが、「『劇場版「SHIROBAKO」』を最初見たとき、すごい小ネタがたくさんあって、『あのシーンなんだろう?』となったんです。実は(元ムサニの制作進行だった)落合さんが出ていたりするので、そういった細かい部分をパッケージ版で見ていただければと思います。また、いつか当初登壇予定だったキャストのお話をみんなに届けられる機会があればと思っています。これからもファンのみなさんが『SHIROBAKO』を好きでいてくれる限り、イベントはまたできると思っておりますので、今後とも再上映版やパッケージ版をみんなに広めていただけたら嬉しいです」とファンに挨拶。最後は宮森たちの決めセリフ「どんどんドーナツ、ドーンといこう!」を、大声は出さず控えめに会場のみんなと誓い合い、業界話満載のトークショーは終了した。

最終更新日
2020-10-09 17:30:00
提供
映画の時間編集部

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