直木賞作家・佐木隆三氏の小説「身分帳」を原案とした西川美和監督最新作『すばらしき世界』が 2021 年2月 11 日(木・祝)全国公開に決定、そして米アカデミー賞前哨戦となる「第45 回トロント国際映画祭」へ正式出品作品として招待、ワールドプレミア上映が決定いたしました。同映画祭への西川監督作の出品は、本作で3作品連続となります。
西川美和監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約 35 年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ本作。主演に、国内外でその演技力を高く評価され続ける名優・役所広司。人生の大半を刑務所で過ごし、社会から“置いてけぼり”を食らいながらも、まっすぐ過ぎるその性格と、そのどこか憎めない魅力で周囲の人々とつながっていく三上正夫役を情感豊かに演じた。そのほか、共演に仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが名を連ね、名実ともに豪華なキャスト陣が西川監督のもとに集結。人間の本質をあぶり出す作品で高評価を得てきた西川監督が、学生時代から憧れ続けた役所広司。役所も「いつか西川監督とご一緒したいと思っていた」と語り、相思相愛の二人が世に送り出すのは、どのような 『すばらしき世界』なのか?
カナダで毎年9月に開催される「トロント国際映画祭」は、北米最大の国際映画祭であり、過去に『スポットライト 世紀のスクープ』『ラ・ラ・ランド』『グリーンブック』などが、最高賞にあたる<観客賞>を受賞。観客賞受賞作が、米アカデミー賞を始めとする主要映画賞の有力候補となることから、その年の賞レースを占うアカデミー賞前哨戦とも言われる。全世界の映画会社が自信作を送りこみ、ハリウッドセレブも多数参加、世界中が最も注目する映画祭として位置づけられている。
今年は、新型コロナウイルス感染拡大影響により世界中の映画祭が規模縮小を余儀なくされ、トロント国際映画祭も長編映画50本、短編映画プログラム5本と例年の 1/4 程度に絞られる中、本作は非常に狭き門を見事突破した。そして多くの注目を集める映画祭での本作の正式出品は、非
常に意義深いと言える。
過去作における西川監督の海外での評価としては、『ゆれる』で第 59 回カンヌ国際映画祭監督週間に出
品、当時韓国で公開された折には、アートシネマの中で突出した記録となる 6 スクリーン 15 日間で 30 万人動員というスマッシュヒットを記録 。『ディア・ドクター』、『夢売るふたり』では「自らオリジナル脚本を手掛け、様々なジャンルの映画に挑戦している監督」として定評を得ており、『永い言い訳』は「喪失とそれを癒すための過程を丁寧に描いた作品」として高く賞賛され、アジア各国に加えフランス、ポルトガルでも公開された。トロント国際映画祭への出品は、本作で 3 作品連続の快挙となる。
本作『すばらしき世界』は、英題“Under The Open Sky”としてワールドプレミア上映を予定。劇中で主人公・三上が生きる世界を印象付けるあるセリフから引用し、今回の英題を決定した。「トロント国際映画祭」の開催期間は9月10日~19日。受賞結果は、映画祭最終日にあたる9月19日(現地時間)に発表される。全世界から絶賛を受け国内外からの支持も厚い役所広司と、トロントに所縁のある西川監督が満を持したタッグで手掛ける本作。世界中から熱視線が注がれる中で、どのような反応が寄せられるのか期待が高まる。
<コメント>
▼西川美和(監督・脚本)
トロント国際映画祭には格別な思い出があります。『夢売るふたり』(2012)の上映中、ラスト20分のところで観客の目の前でフィルムが燃えたのです。映画は突然中断し、私は映写技師のところに駆け込み、スタッフは大慌てでしたが、応急処置で上映が再開されるまでの30分間、地元の映画ファンのほとんどが席を立たずに辛抱強く待っていてくれており、最後は同じ旅を終えた仲間のような拍手で迎えてもらいました。北米最大の映画祭であると同時に、市民や映画ファンと距離の近い、大好きな映画祭です。コロナの影響でたくさんの映画が人に観てもらう場を失う中で、『すばらしき世界』の招待を決断して頂いたことに、心から感謝しています。今作も、“燃えるような”上映になりますように!
▼役所広司(主演・三上正夫)
(第 50 回カンヌ国際映画祭でパルムドール(作品賞)を受賞した)『うなぎ』で初めてカンヌ国際映画祭に参加しました。その時、海外の観客と一緒に観て「こんなにも、笑ってくれるんだ!」って驚きましたが、この『すばらしき世界』にも、『うなぎ』と共通するような、ユーモアや笑えるところがあります。まっすぐ過ぎて不器用な三上と本作を、是非楽しんで頂けたらと思っています。
(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会