母のいる場所 作品情報
ははのいるばしょ
フリーライターでシングルマザーの久野泉(紺野美沙子)は、この7年間、脳血栓で右半身不随になった母・道子(馬渕晴子)の在宅介護と子育て、そして仕事に追われている。20歳で家を出て、18年ぶりに実家に帰ってきた泉と、70歳まで仕事人間だった独断的で頑固な父・賢一郎(小林桂樹)とは、母の介護をめぐって終始喧嘩が絶えなかった。三人きょうだいの末っ子である泉は、幼児期の体験がトラウマとなり、「母に認めてもらいたい、見つめてほしい」という願望が、人一倍強い女性でもあった。能の「仕舞い」を舞う母に愛を求めてすがった4歳の泉を、母は冷たく振りほどいた。10歳の泉に不条理を説き、「あなたに結婚は向かないわよ!」と言った母。仕事人間で、家庭は妻に任せて、家事も育児も一切してこなかった夫に、妻としての役割を押し付けられた道子は、短歌を詠んだり「仕舞い」を舞うことで、必死に自分を生きようとしていたのだった。しかし、幼い泉は、母の苦しみを知る由もなかった。また、泉の小学生の息子・遼(片岡涼)はチック症になり、作文に「僕にはお母さんがいない」と書く。高校に入ると遼(細山田隆人)は、すぐに不登校になった。泉は取材先でユニークな有料老人ホームの施設長・悠子(野川由美子)に出会い、「介護はプロに任せてあなたは仕事をなさい」と言われ、母の入所を選択する。「NOを言わない」のがそこのホームの方針で、痴呆の人を、「お分かりにならない方」と呼び、酒もタバコも恋愛も自由。入居者もスタッフも、“ともにいきいき輝いて”暮らしている。やがて、そこでの暮らしで母は笑顔を取り戻し、ホームはかけがえのない「母の居場所」となる。一方、賢一郎は道子の介護を通して、結婚以来、妻と初めて向きあい、いつしか家事を取り仕切るまでに成長してゆく。そして、ホームの仲間にも支えられながら、妻との対等な人間関係を築き上げるようになろうとしていた。自分の生き方が定まらなかった遼もまた、ホームの若い男性ヘルパーとの出会いによって、母と同じ作家の道を歩み始める。そして泉は、母が若い頃に詠んだ短歌を目にして、初めて母の心の内を知るのだった。
「母のいる場所」の解説
老いと介護をテーマに、老後の夫婦のあり方と親子関係を見つめたヒューマン・ドラマ。原作者の実体験に基づき、槙坪夛鶴子監督が、女性ならではの視点に立って作り上げた。親と子、介護する側とされる側が、「ともに輝いて生きる」ことが出来る環境とは何か。介護とはどういうことか、人間にふさわしい最後の居場所はどこなのか。豊かな人間性を育み、支え合う高齢社会の実現への方法を模索する家族ドラマ。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 2004年5月8日 |
---|---|
キャスト |
監督:槙坪夛鶴子
原作:久田恵 出演:紺野美沙子 小林桂樹 馬渕晴子 片岡涼 細山田隆人 野川由美子 岡野進一郎 菅原あき 高田敏江 小笠原町子 |
配給 | パオ=母のいる場所製作委員会 |
制作国 | 日本(2003) |
上映時間 | 116分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-10-17
今朝のNHKラジオ深夜便私仕舞いの極意は本篇原作者・久田恵,多くの経験を経ていま,ちょっと寂しいぐらいが丁度いいと,幸福感いっぱいとは人間関係で距離感を置いた立ち位置で宿り木みたいなシニア食堂の構想と共に其の極意を語る。人生変遷記