雨あがる 作品情報
あめあがる
亨保時代。武芸の達人でありながら、人の好さが災いして仕官がかなわない武士・三沢伊兵衛とその妻・たよ。旅の途中のふたりは、長い大雨で河を渡ることが出来ず、ある宿場町に足止めされていた。ふたりが投宿する安宿には、同じように雨が上がるのを鬱々として待つ貧しい人々がいた。そんな彼らの心を和ませようと、伊兵衛は禁じられている賭試合で儲けた金で、酒や食べ物を彼らに振る舞う。翌日、長かった雨もようやくあがり、気分転換に表へ出かけた伊兵衛は若侍同士の果たし合いに遭遇する。危険を顧みず仲裁に入る伊兵衛。そんな彼の行いに感心した藩の城主・永井和泉守重明は、伊兵衛に剣術指南番の話を持ちかけた。ところが、頭の固い城の家老たちは猛反対。ひとまず御前試合で判断を下すことになるが、そこで伊兵衛は、自ら相手をすると申し出た重明を池に落とすという大失態をしてしまう。それから数日後、伊兵衛の元にやってきた家老は、賭試合を理由に彼の仕官の話を断った。だが、たよは夫が何のために賭試合をしたかも分からずに判断を下した彼らを木偶の坊と非難し、仕官の話を辞退するのだった。そして、再び旅に出る伊兵衛とたよ。ところがその後方には、ふたりを追って馬を駆る重明の姿があった…。
「雨あがる」の解説
人を押しのけてまで出世することが出来ない心優しい武士と、そんな夫を理解し支える妻の心暖まる絆を描いた時代劇。監督は、98年に亡くなった黒澤明監督の助監督として活躍し、本作でデビューを飾った小泉堯史。脚本は、山本周五郎による短編を基にした「まあだだよ」の黒澤明の遺稿。撮影には「まあだだよ」の上田正治があたり、また撮影協力として「まあだだよ」の斎藤孝雄が参加している。主演は、「まあだだよ」の寺尾聰と「生きたい」の宮崎美子。99年の第56回ヴェネチア国際映画祭緑の獅子賞を受賞。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 2000年1月22日 |
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キャスト |
監督:小泉堯史
野上照代
原作:山本周五郎 出演:寺尾聰 宮崎美子 三船史郎 吉岡秀隆 原田美枝子 仲代達矢 檀ふみ 井川比佐志 松村達雄 加藤隆之 山口馬木也 若松俊秀 森塚敏 長沢政義 下川辰平 奥村公延 大寶智子 鈴木美恵 保沢道子 頭師孝雄 杉崎昭彦 都家歌六 伊藤哲哉 小熊恭子 伊藤紘 児玉謙次 垂水直人 野口雅弘 森山祐子 麻生奈美 |
配給 | 東宝=アスミック・エース エンタテインメント |
制作国 | 日本(2000) |
上映時間 | 91分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、4件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
この映画が初めて劇場で公開された時、晩年の黒澤明監督の作品に違和感を持つ者として、黒澤明の残した脚本を、黒澤組の助監督が映像化する話には、最初、あまり興味と魅力を感じなかったものだ。
どうせ直球一辺倒で、正座して観なければならないような映画だろうと思ったからです。
しかし、観終わった時、それは予想に反し、心地よい方へと見事に裏切られましたね。
この映画は、「赤ひげ」など黒澤明が好んだ山本周五郎の原作だ。
江戸時代、剣の達人・三沢伊兵衛(寺尾聰)は不器用なために浪人暮らしを余儀なくされていた。
妻たよ(宮崎美子)と旅をする途中、大雨で足止めされた土地で領主(三船史郎)と出会い、仕官の話が持ち上がるが——-。
この映画を観て、夫婦は互いに信頼し合おうとか、他人を押しのけて出世するのはよそうとか、そんな薄っぺらなヒューマニズムを読み取ることも可能だとは思う。
しかしながら、この映画を深読みして観ると、これは何と言ってもウェルメイドのコメディーなんですね。
伊兵衛に試合を挑んだ威張り屋の領主が、転んで垣根の向こうに消えた直後、水しぶきの音が聞こえるという処理の仕方。 物静かなたよが、いつもの丁寧な口調で客人に暴言を吐く間合い。 真面目な演技をすればするほど、おかしみが生じる。特に、力みかえった三船史郎の演技には、素人の演技ながら何度も吹き出させられた。 無論、黒澤の名で足を運ぶ観客への目配せも怠りない。 冒頭の突き刺さるように降る豪雨。安宿で繰り広げられる歌と踊りのセッション。 そして、侍の首から噴き出す血など、ほとんど「椿三十郎」のパロディーかと思うほどのサービスぶりなのだ。 しかし、飄々とした演出で笑わせる小泉堯史監督のセンスは、明らかに黒澤明のものとは異なっていると思う。 大巨匠の縮小再生産の映画ではないかと思い込んでいた偏見を、大いに反省しましたね。 その上で、小泉堯史監督という新しい才能の登場を、心から喜びたい心境になりましたね。