恐怖分子 作品情報
きょうふぶんし
台北。夜明けの街で、銃声に続きパトカーのサイレンの音が響く。アマチュア・カメラマンのシャオチャン(リウ・ミン)は、恋人のシャオウェン(ホアン・チアチン)を置いて外に飛び出す。不良たちのアジトの古アパートが、警察の手入れを受けたのだ。クー警部(クー・パオミン)率いる警察隊に包囲されたビルの裏から、混血の不良少女、シューアン(ワン・アン)が飛び降りる。足を痛めながらも現場から逃げる彼女の姿を、シャオチャンはカメラに収める。同じ頃、スランプに苦しむ小説家のイーフェン(コラ・ミャオ)は、医師の夫リーチュン(リー・リーチョン)を送り出す。仕事だけが生きがいのリーチュンは、病院で課長のポストを狙って画策中。イーフェンは昔の勤め先を訪ね、元恋人のシェン(チン・シーチェ)と旧交を温め合う。一方、シューアンは収容された先の病院から母親に連れ出され、家に閉じ込められている。苛立つ彼女はいたずら電話を始めた。電話帳で見つけた適当な相手に、脅し文句を並べ立てるシューアン。彼女を撮影したシャオチャンは、これがもとでシャオウェンと喧嘩して、空き部屋になっていた例の古アパートに引っ越す。イーフェンはシェンとよりを戻し、一夜を共にするが、スランプは続く。その矢先、偶然にもシューアンのいたずら電話にイーフェンは出てしまう。リーチュンに話があると脅迫をほのめかす謎の女に不安を抱いたイーフェンは、シェンを呼び出し、相手が指定した場所へ。そこはあの古アパートで、出てきたシャオチャンを見て、イーフェンは立ち去り、そのまま家に帰らなかった。行方不明の妻を心配したリーチュンは、友人だったクー警部に相談する。イーフェンは数日で戻ったが、別居話を切り出す。良き夫と自負していたリーチュンは困惑し悲しむが、彼女を止められない。一方、シューアンは家から抜け出て、ナンパした男とホテルへ。ところが相手の財布を盗んだ現場を見つかって、はずみで男を刺して逃げる。逃げ場と踏んだアジトを訪れた彼女は、シャオチャンに会う。風邪をひいていたシューアンをシャオチャンは看病し、彼女からいたずら電話の一件を聞く。一夜を共にした後、シューアンは不良仲間と立ち去った。シャオチャンは裕福な実家に戻り、兵役通知を受取り、シャオウェンとよりを戻す。しばらくして、イーフェンの苦心の新作が文学賞を受賞、彼女は一躍時の人に。内容は、ある怪電話をきっかけに破綻するすれ違い夫婦のドラマだった。テレビで彼女を見たシャオチャンは、リーチュンに連絡を取り、彼に“真相”を話す。リーチュンはイーフェンに会い、“真相”を話し、彼女を連れ戻そうとするが拒否される。課長のポストも手に入らず、絶望するリーチュン。リーチュンはクーを訪ね、二人で酒をくみ交わす。「課長になった」と嬉しそうに語るリーチュン。夜明け。クーは高いびき、起き上がったリーチュンの目に涙が伝うーーリーチュンの主任が路上で射殺される。目を覚したクーは拳銃とリーチュンが消えたのに気づく。リーチュンはイーフェンとシェンのもとへ赴き、シェンを撃ち、イーフェンに威嚇の一弾を浴びせる。そして、シューアンを見つけ、ホテルの一室で対峙する。身構える二人。その時駆けつけたクーがドアを蹴破るーー銃声が響く。クーが目を覚ます。彼は浴室で、頭を拳銃で撃ち抜いて自殺したリーチュンを見つける。同じ頃、目覚めたイーフェンは吐き気に襲われる。
「恐怖分子」の解説
台湾の首都・台北を舞台に、偶然に交錯し合う3組の男女の姿を通して、図らずも他人を傷つけながら生きる、都会人の殺伐たる生きざまを描いた一編。犯罪、いたずら電話、夫婦の不和、不倫といった都会ならではの事象を、鋭敏なタッチで切り取る、緻密な映像と繊細な音響処理が見どころ。監督は本作で“台湾ニューウェーヴ”の頂点に立った、「エドワード・ヤンの恋愛時代」(94)のエドワード・ヤンの監督第4作。製作はリン・ドンフェイ。脚本はヤンと、台湾を代表する若手小説家で、“台湾ニューウェーヴ”の諸作に参加したシャオ・イエ、当時は映画批評家で、のちに監督に転身した「宝島/トレジャー・アイランド」のチェン・クォフー(演出顧問も兼任)の共同。音楽はウォン・シャオリャンで、主題歌を台湾の人気歌手で、当時ヤンの夫人でもあったツァイ・チンが歌っている。出演はヒロインの「望郷/ボートピープル」「夜明けのスローボート」などのコラ・ミャオに加え、「暗戀桃花源」のリー・リーチュン、チン・シーチェ、クー・パオミンら台湾の実力派俳優らが脇を固める。86年台湾金馬奨グランプリはじめ、各国の映画祭で絶賛された。日本では1996年公開後、19年ぶりの2015年にデジタルリマスター版が公開された。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1996年4月26日 |
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キャスト |
監督:エドワード・ヤン
出演:リー・リーチュン コラ・ミャオ チン・スーチェ クー・パオミン ワン・アン リウ・ミン 黄嘉晴 |
配給 | Far East Entertainment Company=ビターズ・エンド=ZEMBUN |
制作国 | 台湾 香港(1986) |
上映時間 | 109分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-04-03
ジグソーパズルの様な連鎖で起こるmystery映画は渋谷イメージフォーラムで観たエドワード・ヤン監督作品,続いて「クーリンチェ少年殺人事件」を深夜放映で視たが,独特の乾いた陽気なタッチで学園恋愛ドラマ風な日常が淡々と紡がれるんだ…