午後の遺言状 作品情報
ごごのゆいごんじょう
夏の蓼科高原に、女優・森本蓉子(杉村春子)が避暑にやって来た。彼女を迎えるのは30年もの間、その別荘を管理している農婦の豊子(乙羽信子)だ。言葉は乱暴だがきちんと仕事をこなす豊子に、庭師の六兵衛が死んだことを知らされた蓉子は、六兵衛が棺桶に乗せたのと同じ石を川原から拾って棚に飾る。豊子には22歳の娘・あけみ(瀬尾智美)がいた。子供のいない未亡人の蓉子は、あけみを自分の子供のように可愛がっている。翌日、別荘に古い友人の牛国夫妻がやって来る。しかし、夫人の登美江(朝霧鏡子)は認知症にかかっており、様子がおかしい。過去と現実が混濁している登美江を元に戻したい一心で、夫の藤八郎(観世栄夫)は蓉子に会わせたのだが、一瞬チェーホフの『かもめ』の一節を蓉子と空で言えたかと思うと、元の状態にすぐに戻ってしまう。と、そこへピストルを持った脱獄囚が別荘に押し入って来た。恐怖におののく蓉子たち。だが、男がひるんだ隙に警戒中の警官が難を救った。そして、蓉子たちはこの逮捕劇に協力したとのことで、警察から感謝状と金一封を受け取る。ご機嫌の蓉子たちは、その足で近くのホテルで祝杯を上げた。翌日、牛国夫妻は故郷へ行くと言って別荘を後にする。やっと落ち着ける蓉子だったが、近く嫁入りするあけみは実は豊子と蓉子の夫・三郎(津川雅彦)との子供だったという豊子の爆弾発言に、またもや心中を掻き乱されることになる。動揺した蓉子は不倫だと言って豊子をなじるが、翌朝になって容子は、豊子と夫との仲を許し、あけみは自分の娘も同然だと言って豊子を驚かせる。そして、結婚式を前にこの地方の風習である足入れの儀式が執り行われた。生と性をうたうその儀式に次第に酔いしれていく蓉子は、早く帰郷して舞台に立ちたいと思うようになった。ところが、そこへ一人の女性ルポライター・矢沢(倍賞美津子)が、牛国夫妻の訃報を持って現れた。驚いた蓉子は豊子を伴い、矢沢に牛国夫妻が辿った道を案内してもらう。二人が入水自殺を図った浜辺で、蓉子は残された人生を充実したものにすると、手を合わせる。別荘に戻った蓉子は舞台用の写真の撮影を済ませると、東京へ帰っていく。豊子は蓉子が死んだ時に棺桶の釘を打つために、以前拾ってきた石を預かるが、いつまでも死なないで強く生きて欲しいという願いを込めて、それを川原に捨ててしまうのだった。
「午後の遺言状」の解説
別荘に避暑にやって来た大女優が出会う出来事の数々を通して、生きる意味を問うドラマ。監督・脚色は「墨東綺譚 (1992)」の新藤兼人。撮影は「墨東綺譚 (1992)」の三宅義行。主演は杉村春子と、1994年12月22日に逝去した乙羽信子。芸術文化振興基金助成作品。1995年度キネマ旬報ベストテン第1位ほか、監督賞(新藤)、脚本賞(新藤)、主演女優賞(杉村)、助演女優賞(乙羽)の4部門を受賞した。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1995年6月3日 |
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キャスト |
監督:新藤兼人
原作:新藤兼人 出演:杉村春子 乙羽信子 朝霧鏡子 観世栄夫 瀬尾智美 津川雅彦 倍賞美津子 永島敏行 松重豊 木場勝己 上田耕一 加地健太郎 内野聖陽 馬場当 遠藤守哉 三木敏彦 三浦純子 高村祐毅 神野陽介 大場泰正 田中光紀 大原康裕 菊池誠 石井麗子 岡本正巳 岡本早生 峰松佑貴 田中芳子 麿赤児 鶴山欣也 大駱駝艦 |
配給 | ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画 |
制作国 | 日本(1995) |
上映時間 | 112分 |
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