地の涯に生きるもの 作品情報
ちのはてにいきるもの
オホーツク海は秋になると荒れ始める。九月に入ると、まず昆布採りの漁師たちが知床半島から去っていく。次に、漁期を終えた鱒漁師たちが引揚げる。十月の末になると、最後に残った鮭漁の人たちも帰ってしまう。その原始の世界の中に、たった一人残っている人物がいた。留守番さん--というのがこの老人村田彦市に与えられた名前だった。人々の去ったあとの番小屋の中には、漁網が残されるが、それが飢えた鼠を呼んだ。その網を鼠から守るために猫が必要とされ、猫に飯をくわせろために人間が必要なのである。言葉では言えない孤独は、彦市に過ぎ去った人々を回想させる。--彦市はオホーツク海に直面するウトロ港に近いオシンコシン岬の番屋で生まれた。三十のとき、小さくて古くはあったが一艘の船を買って独立した。飯たきの娘おかつと、他の若者と決対のあげく、強奪する形で結婚した。おかつは、次々と三人の子供を生んだ。しかし、長男の与作は流氷にさらわれて死に、二男の弥吉は戦争で倒れた。おかつも、急性肺炎で死んだ。彦市は東京の工場で働いていた三男の謙三を呼びよせて船を与えた。その船で漁に出て行った謙三は、嵐に会ってそのまま帰ってこなかった。彦市は謙三の死を信じることができなかった。エトロフ島の見える番小屋の留守番さんを志願したのも、謙三の帰りを待つためでもあった。ある夏、都会の娘がこの地の涯を訪れた。謙三という恋人が死んだ場所を一度見たかったという。--彦市にとっては、こうした思い出と猫だけが無聊を慰めるものであった。猫たちはそれを知ってか、彦市に甘えた。だが、その猫さえもが大鷲にさらわれることもあった。彦市は老いた身に鉄砲をかまえて後を追った。たくましかった若き日のように。
「地の涯に生きるもの」の解説
戸川幸夫の『オホーツク老人』の映画化で、知床半島に猫だけを相手に一冬をすごす男の物語。三枝睦明と久松静児が脚色し、「新・女大学」のコンビ久松静児が監督し、遠藤精一が撮影した。パースペクタ立体音響。昭和35年度芸術祭参加作品。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:久松静児
原作:戸川幸夫 出演:森繁久彌 草笛光子 山崎努 船戸順 司葉子 織田政雄 永井柳太郎 太田博之 浜村純 由利徹 中村是好 加藤春哉 大村千吉 長谷川まり子 河内まり子 織田政雄 西村晃 永井柳太郎 高見淑子 富田仲次郎 稲葉義男 沢村いき雄 中山豊 左卜全 |
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配給 | 東宝 |
制作国 | 日本(1960) |
上映時間 | 125分 |
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