ふんどし医者 作品情報

ふんどしいしゃ

およそ百年前、東海道大井川の島田宿に小山慶斎という蘭法医がいた。貧しい人々のための医者だった。美人の妻いくは丁半と勝負ごとが大好きだったため、慶斎はたびたび着物を脱がねばならなかった。最後にはふんどし一本になった慶斎がいくを伴い悠然と歩く姿に、人々は彼を「ふんどし医者」と呼んだものであった。遊び人半五郎が仲間の争いから瀕死の重傷でかつぎ込まれた時、慶斎は“腎臓摘出”という日本最初の大手術をして成功した。こんな片田舎の宿場にこんな名医がいるのは不思議だった。--十五年前、長崎で和蘭医学を収めた慶斎は親友池田明海とともに徳川家御典医の考査のため江戸に登る途中、大井川の川止めに会った。病に苦しむ貧しい人々の姿に接した慶斎は、一将軍より多くの市井の人々のためにつかえる道を選んだ。川止めは解け、明海は江戸に発った。明海を追って来たいくは、慶斎の姿に感動し、二人は結ばれた。御典医となった明海は、たびたび島田に立寄り慶斎を江戸に誘ったが、慶斎の決意は変らなかった。この慶斎の思想に感動した半五郎は弟子入りを志願したが、慶斎はすげなかった。許婚・駿河屋の娘お咲をおいて半五郎は、修業のため長崎にたった。それから八年、維新を経た明治の始め、伊東半五郎は新進気鋭の医師として島田の宿に帰って来た。いくやお咲の驚きと喜びをよそに、慶斎は淋しかった。見るも新しい器具類は取り残された思いを抱かせるばかりだった。折から疫病の疑いを持つ子供を中に、単なる腹痛だという慶斎と、チフスだという半五郎の意見は正面から対立した。三百両の顕微鏡は、いくの体を張った勝負のおかげで手に入った。しかしその助けを待つまでもなく、三十年の経験から生れたカンは敗北した。絶望にひたる間もなく、「隔離」という言葉すら解さぬ人々の怨みから、慶斎の家は打ちこわされた。これを契機に新しい医学を学び直そうとした慶斎を訪れたのは、医大教授となった明海だった。が、招へいを受けたのは半五郎だった。師弟の縁を切るという慶斎の怒りをあとに、半五郎は新妻のお咲と東京に向かった。打ちこわしをした人々も慶斎の前に頭を下げた。家は再び建てられ、慶斎といくの田舎医者の生活も、再びはじまった。

「ふんどし医者」の解説

中野実の原作を、「大穴」の菊島隆三が脚色し、「日本誕生」の稲垣浩が監督したもので、清貧に甘んじながらも庶民のためにつくした一人の医者を主人公にした物語。撮影は「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」山田一夫。パースペクタ立体音響。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督稲垣浩
原作中野実
出演森繁久彌 原節子 山村聡 夏木陽介 江利チエミ 田島義文 谷晃 佐田豊 小杉義男 本間文子 清水元 田村まゆみ 村上冬樹 中谷一郎 石田茂樹 加藤春哉 高原俊雄 堤康久 中北千枝子 向井淳一郎 沢村いき雄 志村喬 松尾文人 西条悦朗 池田生二 熊谷二郎 十朱久雄 横山運平 馬野都留子 宇野晃司 長島正芳 村田嘉久子 鈴木治夫 桜井巨郎 八波むと志
配給 東宝
制作国 日本(1960)
上映時間 115分

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最終更新日:2022-09-27 02:00:02

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